第3話 本当に悪いやつは誰だ

「わ、わたし、いや、私じゃなかった。私のそっくりのなんとかさん、刃物持ってるんですけど」


なんの、舞台よ?コレ。

なんで私の絵まで準備してあるの?


「シームルグが、ソラリクス様と大聖女カラドリウス様を殺そうとした時のことを記録したと言われている。」


ガルーダが私の横にやってきて同じように絵を見て説明する。

ガルーダからは最初ほど危険視はされてないみたい。

わたしがガタガタ震えているからかもしれないけど。


「言われているっていうか、事実だろう。当時、目の前で起きたことを切り取ったように描けると言われた大画伯であるアルコノスコ様が、みんなに忘れないようにと一晩で描いたと言われている」


フェニックスが「けっ」と、まるで犯人はお前だという目でこっちを見て話す。


「一晩??このでっかい絵を?」


台本にケチをつけるつもりはないけど思わず反論してしまう。

そう私に言われたフェニックスは、再びチリチリと体の一部を燃やし始め、ひっ!とわたしは口をつぐんだ。


だけど!でもよ!

それはどうやったって無理じゃないかしら?

部屋一杯に天井の右と左に描かれた絵は長さだけでも20メートルはあると思われる大作だ。

それを二枚、一晩で??絶対に無理がありすぎるわ。

どうしてそれを疑問と思わないの?



「今から500年前の話だ。かつてこの地には7人の神に匹敵するスキルを持つものがいた。その中心におられる金髪の髪をしているお方が、この国を治めていたのがソラリクス。我らが太陽神と崇めるお方だ。そして、君にそっくりなのは、シームルグ。その太陽神と真逆の月光神といわれいつも敵対していたという。」

「神??わたしが?」


ないない!!

どう見たって神々しくないでしょうよ。

どうせ描くから、もっと神っぽい人を配役にしたらいいのに。

貧乏神っていうなら、そうかもねって思うけど。



「残りの5人のうち、水色の髪をしているのはわたしの先祖だ。大地帝と呼ばれ、ソラリクス様の可愛がる神獣を使役し、この地を守っていた。ガルーダは代々受け継ぐものが名乗る名前だ。」


ガルーダの指さす方見ると確かに水色の髪をした人の足元に、白い虎が寝そべっている。

すごいペットだけど、動物使いみたいなものかしら?

というか、この舞台の設定説明が唐突に始まったのだけど、なんか手がこみすぎてないかしら?


「同じように赤色の髪はフェニックスの先祖だ。フェニックスも彼の家を継ぐものがフェニックスを名乗る」

「そうなのね。彼の先祖は何をした人なの?」


せっかく舞台説明を始めたのだから、一応聞いてみようか。フェニックスはかなりキレてるし。


「フェニックスの先祖は地を守る大空帝だ。この500年前は、ソラリクス様の加護もありこの地を守るものたちにはとてつもない力を与えたと言われている」


ほえーーっ

なんか、太陽神すごいわね。

わたしのそっくりさんもすごいのかしら?


「あのわたしのそっくりさんは?」

「彼女は月光神。太陽神とは敵対する存在だ。だから何も与えない。吸い取るだけだ」

フェニックスは苦々しげに答える。

「吸い取る??」

嫌な空気が流れる。

どうしようかしら、他の人たちのことを聞いて、話をそらそうかしら??

「そう、最初は癒し、守護、回復の神と思われていたのですよ。ただ、それは誤りだった」

ガルーダも頷いている。

「誤り??」

吸い取るって言ってたわよね。

力を吸い取るみたいな...真逆だったのかしら?

「ソラリクス様の隣に、銀髪の女性がいるでしょう」


真っ白な肌、髪、目は透き通る水

穢れを知らない白ーーー


あれっ??

そんなイメージが頭をよぎる。

イメージよ。イメージ!!

わたしはごくっと息を呑む。


「彼女はソラリスクの愛する女性で大聖女カラドリウス。

500年経った今でも、癒しと回復の力を民のために使い亡くなっていったと言われる民に愛される方です。

ですが、ソラリクス様の元々の恋人は同じ神のシームルグだった。ですが、ソラリクス様がカラドリウス様に惹かれてしまい、人の子が愛する存在を取ったとシームルグは怒ったのです。」


憮然とした顔をしたガルーダを見て、思わずわたしは唖然としてしまう。


恋人だったのよね?

そりゃ横から掻っ攫われて、大聖女に乗り換えられたら、神だって怒るでしょうよ。

なんで、シームルグっていうわたしのそっくりさんが悪者扱いなのかしら?


「なんだ?お前やっぱりシームルグじゃないのか?何不満そうな顔をしてるんだ!」

フェニックスが、わたしに怒りのドスをきかせる。

わたしは慌てて、手を振って否定する。

「う、ううん。違うわよ。神の怒りってきっと大きいんでしょうね。被害はなかったのかしらって心配になっただけよ」


ここでシームルグの肩を持ったら生きては帰れない気がしてくる。思わず二人に引っ張られてわたしも演技がかったように、二人の会話に合わせていく。

あれ?でも、これ舞台かドッキリなんだよね?

なんか、迫真すぎてリアルに感じてくるんだけど。

でも荒唐無稽ってきっとこういうことを言うんだわ


「よく聞いてくれました。飛鳥殿!!」

ガルーダは満足そうに頷きながら、キッと絵に描かれたシームルグを睨みつける。

「シームルグは、大聖女カラドリウス様の聖女としての力を吸い取ったのですよ。彼女は神ですからね。回復や癒しの力を吸い取ることは可能だった。何も能力がなければ、再びソラリクス様が自分になびくとでも思ったのでしょう。ですが、我らが太陽神はそんな浅はかな方ではありません」


ガルーダは恍惚とした顔で描かれたソラリクスを見つめる。


いやいや、浅はかだから恋人いるのに別の女に手を出したんでしょうがーー


そう突っ込みたい気持ちをグッと抑えてなるほど、そうなのねと納得したように頷いた。


「で、私はそのとんでもない神様の役の人とそっくり似らしいんだけど、全く縁もゆかりもないんです。あの、このお芝居はいつまで続くのでしょうか?誤ってここに落ちたことは認めますが、もし、不法侵入が許されないようでしたら警察を呼んでいただけたら、わたしもこの辺りに父の家とつながる穴があることを調べてもらえるかと思うのですが...」


ガルーダとフェニックスは眉を顰めて顔を見合わせる。

そう言われても、どういわれても、これ以上お芝居の稽古か、素人ドッキリの撮影に付き合う必要性を感じない。


「何をわからないことを言っている?」

フェニックスは眉を硬く寄せて、ピクピクと動かした。

「まさか...シームルグは、かつて自分が死んでも再び復活してやると言って処刑されたそうですから...生まれ変わりといことはないでしょうね」

「何を言ってるの?その人のことは分からないけど神だったんでしょう?わたしがもしシームルグっていう神で、生まれ変わるなら、もう少しいい家に生まれ変わるわ。借金とかゴミ屋敷とか蒸発とかしない両親に育ててもらうわよ」


わたしは、少し聞く耳をもったこの二人に、これまでのわたしの人生と経過を説明する。

「異世界人か?」

「人の子だと言ってますし、神々しさは全くないですね」

二人は唸ってどうするかと言っている。

「ここは、舞台でもなければ、そのドッキリ??とかという台本のあるような話でもなく本当にある世界ですよ。こちらにいらっしゃい」


ガルーダやフェニックス、その他の兵たちが連れ立ってわたしと歩く。

ガルーダがドアを開けて外に出たその世界はーーー



「何これ!何!!」

空に飛び交う人、獣、見たことのない大きな鳥

地面を走る見たことのない獣、日本ではない建物、そして振り向くとーー


「ここは??城?」


街から少し暖かい風が吹き上がる。

それだけ自分たちは高い位置にいるのだ。

少し浮いた天空の城ーーそれは舞台装置なんていう大きさではない。


「う、浮いてるわよ!城が!私たちのいる場所浮いてるわ!」


絶対、人のいる世界ではない。日本でもない。

それが自分のいる場所だった


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