第一話
──私、
肩辺りまで伸ばした少し茶掛かった黒髪も、髪と同じ色の瞳も、銀色の細いフレームの眼鏡も、なにもかもが普通。小さい頃から変わらない──強いて最近自分の中で変わったことを挙げるとするなら、ちょっとだけお洒落を意識してコンタクトに変えようかどうか悩んでいることくらいか。
友だちからは「素材はいいのに地味で勿体ない」や「恋でもすればさすがに変わるでしょ」などと色々言われ放題だけど、特に好きな人がいる訳でもないし、現状にそこそこ満足しているというか、正直あまり気にしていなかった。
今後も特に変わりないまま時間が過ぎ、受験生になって目標にしている高校に行くために勉強に打ち込み、そのまま中学校生活を終えるのだろう……と、漠然と考えていた。
* * *
「──
時は九月──夏休みも終わり、二学期が始まって間もない頃。
僅かにざわつく教室内、教壇に立ち少し高めの優しげな声で自己紹介した男子生徒にクラスの皆が注目する。
薄く開かれた瞼から覗く星のような青い瞳と、まるでそれを隠すように前髪が伸ばされた黒い髪が特徴的な、星野 一彦と名乗った男子生徒──ああ、綺麗な人だな。その顔を初めて見た時、私はそんな感想を抱いていた。
「あー、星野は親の仕事の都合で八月にこっちに引っ越してきたそうだ。二年生の二学期っていう難しい時期での転入だけど、だからこそ皆には仲良くしてやって欲しい。
それで星野の席は……えーと、天河の隣だから……あそこだ、窓側の最後尾」
担任の先生に名前を呼ばれ、はっと我に返る──どうやら、星野くんの席は私の隣らしい。
そういえば、二学期が始まった時からなぜか空席がひとつ用意されていたっけ。このためだったのか、と合点がいったように呟く。
「さっきも言ったけど、俺は星野 一彦。よろしく」
「あっ、うん……私は天河 香織。こちらこそよろしくね、星野くん」
クラスの皆の視線を引き連れたまま隣の席の椅子を引き、微笑みながら改めて自己紹介をしてくる星野くん。すぅはぁと一呼吸置き、私は努めて平静に自己紹介を返す。
──先ほど彼に目を奪われていたのは、この時期の転入生が珍しいのと、星のような青い瞳が気になったからであり、決してその綺麗な顔に見惚れていた訳ではない。
「分からないことがあったら、なんでも聞いてね」「ありがとう、頼りにするよ」と会話を続けつつ、自らに言い聞かせるように心中で呟く。
これが、彼──星野 一彦くんとの出会いだった。
……後々、私の様子を観察していた友だちに「もしかして一目惚れ?」などと
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