きょうりょくしゃ。
能力を失った歩夢は、
焦りと屈辱に苛まれる。
しかし、復讐の糸口を求めて
過去に自分が分析した人物のファイルを
漁り始めた。
真犯人である"執行人"が、
過去に分析した人物の関係者かもしれないと考えたからだ。
真っ先に掘り起こしたのは、
小説投稿サイトで死に追いやった
作家のファイルだった。
読み返すと、以前は気に留めなかった情報が目についた。
この作家は家族がいないこと、そして親の愛に強く飢えていたこと。
歩夢は根拠は無いが
「もしかして、この作家は児童養護施設出身ではないか?」と直感的に捉えた。
能力もなく、声も聞こえない。
本当に無能だな…。
そう思いながら
歩夢は、他に手がかりはないかと、
自分のプロファイリング
内容を全て読み漁る。
その中で、一人の人物のファイルに、「?」マークが記されているのを見つけた。
記憶を思い返すと、これを
記した「?」人物は、
歩夢が能力を使い始めたばかりの頃だった。
まだ能力を使いこなせずにいた時、
唯一、雑音がなく、とても
澄みきった声の持ち主だった。
その人物は、世間的には知的障害と
診断されていたが、歩夢は、彼を
しかし、言語を発することができず、
ひたすらに絵を描くだけだったので、
当時の歩夢は興味を持たなかったのだ。
だが、今は違う。
もし[超感覚過敏]の人物を操ることが
できれば、能力を失った今の歩夢でも、
真犯人を見つけられるかもしれない。
歩夢は、その人物に会いに行くことを決意した。
彼の名は吉田守、年齢は42歳。
ヘルパーがフルネームで呼んでいたのを
偶然に聞き、耳に残っていた名前だ。
分析から、歩夢の家から
半径2キロ圏内に住んでいる
可能性が高いと推測された。
歩夢はファイルを元に
吉田守の家を探す。
思ったほど時間は、かからずに
見つける事が出来た。
吉田守の家に着くと、歩夢は
インターフォンを鳴らした。
二階建ての大きな家。
おそらく裕福なのだろう。
一人暮らしで近所付き合いはないらしい。
ファイルには
「多重人格の可能性あり」
というメモも添えられていた。
歩夢はファイルを読みながら、どうすれば守に協力を得られるか悩んでいた。
すると、中年の男性が小走りで歩いてきた。
歩夢が話しかけるが、返事はない。
ただ、満面の笑顔でこちらを
見つめている。
吉田守は、無言のまま歩夢を
家の中へと招き入れた。
家の中で、歩夢は驚愕した。
壁一面に、棚の上に、歩夢自身の姿を描いた絵が大量に飾られていたのだ。
すると、先ほどまで笑顔だった吉田守の
雰囲気が一変した。
空気が重く、冷たいものに変わる。
そこに現れたのは、
佐賀剛 -その名前を聞き、歩夢はかつて自分が分析した同僚の名を浮かべたが、
目の前にいる人物は全く彼とは違った。
重々しく、どこかの大学教授のような優雅な語り口で、ソファへと静かに腰を下ろした。
佐賀剛は、吉田守について、
歩夢に語り始めた。
守は児童養護施設出身で、
この家の持ち主に引き取られた。
しかし、この家の持ち主が、
守に望むのは跡取りとしての
品格と知識だけだった。
それを叩き込まれた守の心は
壊れかけた。
その時、守は"歩夢の音"が見え、
自分と同じ[仲間]がいると気づいたという。
佐賀剛は、守は歩夢と同じく分析をしていた
彼の場合は〈直感をそのまま絵に描く〉
能力であると説明した。
そして、その絵は、相手の心情を見事に
描き切っていた。
それを佐賀剛が読み取ると話す。
歩夢は、佐賀剛に守の両親について尋ねた。
佐賀剛は、人を小馬鹿にしたように
鼻でフッと笑う。
そして優雅に微笑みながら語りだす。
「君が追いかけている執行人に殺害されたよ。」
そして、歩夢の顔を眺め眼を細めると
人差し指と親指を弾いて鳴らす。
「君の妹もそいつに殺られたのだろう」
「いいだろう。」
「守には手伝わせるよ。」
佐賀剛の一言で、歩夢の復讐に、
もう一人の能力者という、
協力者を得る事が出来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます