告白

「告白したのは俺なんだけど」

彼はそう前置きしてから、少し困ったように笑った。

「でも、その前から、両思いだったと思う」

二人が近くなったのは、席替えのあと。

席が隣になり、放課後の帰り道が同じだと分かってからだったと彼は言う。

「一緒に帰る?」

最初にそう言ったのは、彼女の方だった。

理由はいつも曖昧で、

「方向同じだし」とか、「今日は暇だから」とか、

どれも断る理由がないものばかりだった。

彼女は、距離を縮めるのが上手だった。

大胆なことはしない。

でも、自然と隣にいた。

彼がイヤホンを片方だけ耳に入れて音楽を聴いていると、

「それ、なに聴いてるの?」と、覗き込むように近づいてくる。

「ちょっとだけ、貸して」

そう言って、何のためらいもなく同じイヤホンを使う。

肩が触れる距離。

吐息がかかるくらいの近さ。

(……普通、そこまで来るか?)

彼は内心、完全に動揺していた。

でも、それを悟られないように、平然を装う。

「こういうの好きなんだ」

彼女は曲を聴きながら言った。

「なんか、落ち着く」

その言葉が、自分だけに向けられたもののように思えて、

胸の奥がざわついた。

(ああ、これ……絶対、俺のこと好きだろ)

彼女はこう思っていた。

「取られないようにしないと」

その気持ちから、彼女はいつの間にか、より自然に彼の隣にいるようになった。

帰る時間を合わせ、

話題を切らさず、

“彼の横”を、自分の居場所にしていった。

彼はそれを見て、確信を深めていく。

(やっぱり、好きだよな)

でも、言葉にするのは怖かった。

この曖昧な関係が、壊れそうで。

雨の日だった。

突然の夕立で、二人は同じ屋根の下に逃げ込んだ。

バス停の小さな屋根。

距離を取るには、少し狭すぎる。

「……傘、一本しかない」

彼女が言うと、彼はすぐに察した。

駅に着いたとき、彼は足を止めた。

「……あのさ」

声が、思ったよりも震えた。

彼女はそれを聞いた瞬間、安心した。

(あ、やっとだ)

「好きです」

彼は一度、息を吸ってから言った。

「付き合ってください」

彼女は少しだけ目を見開いて、すぐに笑った。

彼は一瞬呆然としてから、苦笑した。


彼女は言う。

「私も告白しようと思ってた」

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