第31話 覇王・柴田勝家と今川義元


1548年 1月上旬


​【駿府・今川館】


​轟音に震え上がり顔を蒼白にした今川義元は、ついに震える手で和睦の筆を執った。


織田家から出された条件は、勝家が末森城で宣言した通り……では無く、増えていた……


「駿府周辺3万石以外の全領土放棄、および織田家への服属!そして駿河国内すべての城を廃城とする。今川館は織田行政府の役所として使用する故、今川宗家は志太郡今川にある、旧今川居館跡地へ移られよ。」


***

駿河国志太郡今川=現在の静岡県島田市で、今川氏のルーツでもある。

***


「柴田殿…移られよと申されても、今川居館跡地には何一つ残って無いのだが…」


「新居は織田で建てまする。その間、同じ敷地内の慶寿院を住居としなされ。住職に話は付いておる。」


今川家一同

「「「。。。。。。。」」」


寿桂尼

「慶寿院なら何度か訪れてますが、この館は御覧の通り大所帯。荷物など入りきらぬかと思います。」


「御母堂様を相手に言いにくい事であるが、この際ハッキリ言わせて貰いましょう。艦砲射撃で館が消滅すれば荷物の心配も無用となりますな!」


「それは無体な仕打ちと言うもの。降伏した相手に心ない横暴な振る舞い…織田行政府の役所として使用もできなくなります…」


「その通りです。だが我ら織田軍は降伏など求めておりませぬ!戦で白黒付け駿府を地上から消したいのが本音!」


「なんと!野蛮な…」


「御母堂様。野蛮も何も戦とはそう言うものにて。さすれば織田が、今川館の新居を志太郡へ建てる手間も予算も要らなくなる!そして今川家をに追い込めます。」


今川義元

「……待たれよ柴田殿。母上も荷物の件はもう諦めなされ……儂の首で良ければ信長公に持っていくがよい。但し今川家存続の事、何卒・な・に・と・ぞ!良しなに!!!」


深々と頭を下げる義元。

勝家と寿桂尼のやり取りを見て、この席に不在の信長が約束を違えぬ様、自らの切腹を条件に念押しをしている。


柴田勝家

「その様なこと……神に誓って御座いませぬ。戦の最前線に立った経験の無い御母堂へ、戦場のことわりを説いたまで。


この柴田勝家!必ずや今川家存続を見守ります故、どうか太守殿も早まらぬよう切にお願い致します。」


東海の大大名である息子がを願い、敵将へ頭を下げるのを目の当たりにした寿桂尼。


彼女なりに腹を括った。


「柴田殿……人質として私が尾張へ参りましょう……これでも義元を産んだ母親です。十分人質としての責務を果たせるかと存じます……」


「もちろん尼御台と呼ばれる御母堂様であれば、人質としての価値は申し分無し……しかしわが主、織田信長公は義元殿の嫡男龍王丸(後の氏真うじざね)に尾張にて最高の教育を施すと仰せです。」


「最高の教育と言う人質ですか……では尚のこと私も連れていってもらいます。龍王丸は元服前の子供じゃ、せめて成人するまでは私が付き添います。信長公にそうお伝え願いたい……」


そして姿勢を改めると、勝家に向かい頭を下げる寿桂尼。


アイリス『プライドのかたまり、公家のお嬢様育ち寿桂尼さんが頭を下げるなんて、人質は何人居ても良いわよ勝家くん。ここは了承してあげて。』


『見てたのかよ……ラジャーだ』

「良かろう。御母堂様の覚悟の程、きっと我があるじにも伝わります。共に尾張へ参りましょう。」


東海道の覇者であった今川家。圧力をかけていた三河から叩き出され、遠江を武力によって奪われ、今また駿河への艦砲射撃により屈服させられ、に追い込まれた。


一夜にして織田の「忠犬」へと成り下がった瞬間であった。



□◆□◆□



​【柴田勝家の野望】


駿河遠征を無事に終え​た勝家は、次なる標的・三河の松平広忠との会談に向かうため、戦艦尾張丸1号の艦橋に立っていた。


勝家の視線の先にあるのは、東海地方だけではない。


『信長様が成人されるまでに、この日ノ本の海を完全に掌握する。この海路が織田の黄金の道となる様にな。』


アイリス『今川家の敗北で、松平家と竹千代くん(家康)の運命がどう変わるのかしらね?

歴史改変されて松平広忠は、史実とどれだけ同じようになるか?だわね…』


『寿命を指しているのか?』


『人の生き死にに関して、史実より早くなる傾向が出てるでしょ。私の受け持つ管轄じゃないから真の理由は分からないけど……まあこれ以上は神世界のトップシークレット……ごめんね。』


『良いさ…先に寿命を聞くと面白く無いし、俺のやることは変わらない。』



勝家が三河へ向かっている頃


【甲斐・躑躅ヶ崎館つつじがさきやかた


​今川義元、織田家に敗れ臣従!の報は、山を越え甲斐の虎・武田大膳大夫晴信(後の武田信玄)の耳にも届いていた。


​武田晴信

「先日の地響きは、雷では無かったと言うことだな……遠江で連日訓練をしているという、織田の『雷火』か?」


​山本勘助

「御屋形様。間者の報告によれば、柴田勝家が指揮する軍勢は最早、我らの知る『兵』ではございませぬ。コンクリートなる石壁を築き、一里以上先から敵を粉砕する異形の軍。今川義元も敗れ去ったのでしょう。」


​晴信の鋭い眼光が、地図の上の「遠江」と「駿河」に注がれる。


​晴信「今川が屈した以上、次は我が甲斐か……面白い。織田の覇王、柴田権六。その『雷火』、我が騎馬隊を止めることができるか試してくれようぞ。」


ついに「甲斐の虎」武田信玄が、その牙を剥こうとしています……!!

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