第28話 末森城軍議、沈みゆく松平と今川


​1547年 12月25日


雪の舞う末森城の奥の間では、織田家の屋台骨を支える6人の男たちが、火鉢を囲み静かに、だが熱く火花を散らしていた。


​織田三郎信長(13歳)

「勝家、よく戻った。遠江の要・高天神を無血で落とした手際、亡き父上も草葉の陰で舌を巻いておられよう。」


​柴田権六勝家(22歳)

「恐縮に存じます殿。しかし、遠江全土の統治には課題が山積しております。」


​上座に信長。その傍らに元帥・勝家。


そして脇を固めるのは、庶兄・織田信広、叔父の猛将・織田信光、老練なる信長の教育係・平手政秀。若手有望株・佐久間信盛(20歳)


​織田信光(守山城主)

「勝家殿、三河の松平広忠が泣きを入れてきている。岡崎を焼かれ、東西から挟まれた今、奴には今川を捨てる覚悟ができているようだ。」


​織田信広(安祥城主)

「三河の国人衆も、勝家殿の『蒸気戦艦』の威圧に戦意を喪失している。今や三河は熟しきった柿のようなもの。あとは誰がいつ収穫するかだな。」


​信長が勝家の目を見つめる。

「勝家。貴様は三河をどう見る。広忠の臣従を認めるか? それとも三河武士の魂ごと根切りにするか?」


​勝家は一呼吸置き平手政秀の顔を見る。政秀は無言で頷いた。

「殿。松平広忠は生かして臣従させましょう。但し条件は厳しく致します。」


信長「申してみよ。」


「先ずは所領ですが、東三河の渥美あつみ郡のみ(現在の豊橋市・田原市の渥美半島)とします。」


信広「渥美のみとな…それで臣従するのか?」


勝家「渥美のみとは申せ、豊川流域の豊かな耕作地。現在3万石余りですが、少し手を加えれば直ぐに8万石にはなります故に。」


信光「なるほど、滅亡するよりはマシとは言え……そこまで削るか……」


信長「…勝家。先の三河攻めでは随分と、松平家の重臣を狙い撃ちしたと聞いたが?この渥美郡のみの為であったか?」


「はい。うるさい三河武士の典型である宿老・重臣がここまで減れば、松平広忠の考えに異を唱える者もいなくなる。渥美郡のみでも了承するかと。」


平手政秀

「その家が抱えていた家臣達も路頭に迷っているでしょうな。松平の兵も目減りしていると聞きます。3万石あればギリギリ飯は食える…広忠も飲まざる得ないでしょうな…」


「渥美半島に押し止めていれば、周り全てが織田となる。今川・武田双方と接触できぬか!良いだろう勝家。年明けで良い、その線で話を纏めてくれ。」


「はっ!必ずや!」


「で?そちが養育している竹千代(徳川家康)はどうする?」


「それも条件の1つです。竹千代はそれがしの那古野城にて引き続き預かります。織田の教育を施し、属国としての魂を植え付けます。」


信広「広忠が断れば?」


「その場で手切れとなり、その渥美半島に高天神から船で艦砲射撃の後、3千が上陸。境川も5千で越えさせます。他に西三河から5千で攻めこめば、竹千代を1人残し松平は滅亡ですな。」


信光「完璧な鬼の手だな(汗)」


平手「戦艦の艦砲射撃…恐ろしいですな(汗)」


「ふんwまだあるんだろ?勝家」


「はっ!最後にその渥美郡に織田の『測量奉行』と『税務官』の介入を認めさせる。これで渥美の経済そのものを、織田が完全に監視・掌握できます。」


​平手「……まさに名案。実権(経済と竹千代)を織田が完全に握る。これで名ばかりの東三河領主となります。」


​信長はニヤリと笑った。


「カカカカカw! よかろう。広忠には『降伏』ではなく『織田への合流』という形を取らせ顔を立ててやれ。

そこでだ…今川義元はどうする? 奴は駿河へ引きこもり沈黙を続けている。」


​勝家「義元は太原雪斎を失い、思考の半分を奪われたも同然。年明け早々、蒸気戦艦『尾張丸』を駿府の眼前に停泊させます。」


「駿府の眼前とな!カカカw!」


「はい。尾張丸キャノン砲の轟音一つで、奴は和睦の使者を寄越すでしょう。こなければ徹底的に駿府の今川館と周辺を灰にします。』


信光『かっーーー駿河まで一気に行くのか。して今川との和睦条件は?」


「駿府周辺3万石の安堵のみ。今川・北条の境界付近の蒲原城を織田で押さえる。これで東の憂いは消滅します。」


平手・佐久間

「「「なっ!!!(汗)」」」


信広「あの大国・今川を僅か3万石に押し込めるのか…(汗)」



​信長は立ち上がり、勝家の肩を叩いた。

「決まりだ! 三河を名ばかりの臣従扱い、遠江は既に飲み込んでいる。そして今川の本拠地駿河は、3万石しか与えず従属。

不服なら三河も駿河も灰にする(ニヤリ)来年は、織田が天下の入り口に立つ年になるぞ!!」


​平手政秀

「……しかし殿。それには1点、大きな懸念が。」


​信長「申してみよ、爺。」


平手「甲斐の『武田信玄』にございます。あやつは信秀様の死を機に、必ずやその牙を南へ……勝家殿の守る遠江、もしくは蒲原城へと向けて参りましょう。」


​勝家はニヤリと、獲物を狙う猛禽のような笑みを浮かべた。

「…平手殿、案ずる事はありませぬ。武田の騎馬隊がどれほど強かろうと、織田軍の『移動式 滑空砲と自走迫撃砲』で万事休すです。」


佐久間「ですが元帥閣下。甲斐の騎馬隊は4波5波~と防御に穴を開けるまで、波状攻撃を仕掛けてくるとの噂にて…」


「佐久間よ!アイリス式コンクリートを忘れたか?既に高天神城はそれで要塞化した。蒲原も手に入れ次第工事する。

あれを1mの高さで三重に設置。我等はその後ろから射撃するだけだ。」


​信長は勝家の肩を叩きながら笑った。

「カカカカカw!! 良い、実によいぞ権六!!今川も武田も攻めてくれば終焉だ!織田の太陽を天下に昇らせるぞ!!」


う~ん…遠江の内政の相談どこいった?三河と駿河まで取る積もりなのか?


1548年、大きく歴史が動きそうです。


───


自走 臼砲きゅうほうはどうなった?

自走には成功しましたが車体が余りにも重く、移動に時間が掛かるため、織田家は野戦において小型軽量の自走迫撃砲を採用しました。


臼砲は城に据え付け、強力な高角砲として使用する予定。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る