第23話 覇王の狙撃〜掛かれ柴田の原点


1547年(天文16年)8月


尾張乱入の先鋒、三河軍総崩れ。壊滅し焼け落ちる岡崎城を尻目に、太原​雪斎率いる今川勢5千は敗走し、遠江国境を固める駿河兵士1万と合流した。


雪斎「大人数を徴兵可能な稲刈り前で良かった…このまま1万5千で三河との国境を固める。本陣は曳馬城とする。朝比奈、御主は5千を率い一旦本陣に戻り兵を休ませるのだ。」


「本陣へは宰相殿が御戻りくだ。。。」


「儂は駿河兵1万と共に残り太守様に早馬を出す。後詰め兵として5千ばかり要請する!」


朝比奈「宰相殿、それは成りませぬ。ここ遠江はそれがしの故郷。地の利は我等にあり!国境の守りはお任せ下さい。」


「ええい!これは総大将の命令である。三河に入った5千の兵は織田の火力を見てしまった…

一旦、曳馬城に退いて精神的安寧を与えねば最前線で使いものにならぬ!良いから行くのだ朝比奈!」


「……宰相殿……貴方様は絶対に死んではなりませぬ。それこそ今川家が終わってしまいます…1万でも無理となれば直ぐに曳馬城へお退き下さい…約束せねば儂も退きませぬ!!」


「…朝比奈…あい分かった!どうにもならぬ戦況となれば直ぐに退く……さあ行け。」


飯尾定宗

「朝比奈殿、ここは儂が残りましょう。儂とて遠江の人間、もし撤退する局面になれば、ここらの地理を隅々まで熟知しておる儂がおれば、生き残る確率が上がります。宰相殿!これだけは譲れませぬ!」


「……御主達は……分かった好きにせよ(苦笑)」


朝比奈「飯尾殿。くれぐれも宰相殿のこと頼んだぞ!では御免!」


勝家とアイリスの予想が外れ、太原雪斎まさかの最前線で指揮を取る事になった。


アイリス『勝家くん、宰相様まさかの居残り。曳馬城へのキャノン砲、艦砲射撃どうする?軍用トランシーバで船とは連絡付くわよね。』


『ああ、尾張丸1号~10号の10隻全てに最新のマンパック型(背負い式)軍用トランシーバーを搭載している。アイリスに教わって作った武器以外の軍用品で、もっとも凄い物だな。』


『大出力だからねぇ~通信範囲およそ10km以上。障害物の無い海上なら30km以上も可能なのよ。』


『あれで戦が根底から変わった…さて朝比奈に井伊直盛か…遠江の統治に使える有能な人物は悪戯いたずらに殺めたくない。今回の目標は松平家の重臣達とだ!』


『曳馬城への攻撃は中止命令だしちゃえば!但しそのまま待機させて、おかしな動きがあれば攻撃再開もあり得るが、ベストな選択じゃない?』


『そうだな。ここはアイリスの意見に従おう。さてと宰相殿を殺るか!一騎討ちを所望したいが儂の相手にはならぬ。であれば眉間を撃ち抜く他あるまい。』


織田家・柴田勝家軍5千は国境を越え遠江に侵入。浜名湖の西岸、本坂関所を壊滅させ布陣する。


太原雪斎の今川軍1万は宇利山川の東岸、現在の三ヶ日付近に陣を敷く。


『雪斎の本陣まで3,700メートル柴田銃では無理だが、キャノン砲なら楽勝だ……しかし敵とは言え、あれだけの名将…砲撃で命を奪うのは違う気がする…』


『えっ?!どうしたの勝家くん?予定では曳馬城ごと艦砲射撃で爆破だったわよね?何を今さら?』


『肉片となった雪斎より遺体が残っていた方が、今川義元の精神的ダメージが大きいかなと?』


『そういうことね。良かったわ!今さら綺麗事を言い出すのかと心配したじゃないw戦は勝つしかない。その為に今の最高の手を打つでしょ?何メートル?』


『確実に眉間を撃ち抜くなら450メートル以内だな。』


『そこまで近付くのは無理ね。宇利山川の東岸付近は平地よ。周辺に遮蔽物は無いわ。』


『先鋒が3千、次鋒2千、残り5千が雪斎の本隊。となれば先鋒と次鋒に、キャノン砲の艦砲射撃と滑空砲を10発ほど打ち込む。』


『陣形の崩壊狙いね』


『前の5千がいなくなれば、俺が騎馬狙撃部隊を率いて本陣に突っ込む。勿論400メートル付近まで接近したら突撃は停止。雪斎を狙撃する。』


『無線(軍用トランシーバー)役に立つでしょ?エヘン』


『…通信を用いれば瞬時に作戦変更が可能になる。未来の軍隊とは凄いんだな。しかも無線は復興や内政にも使える。10~20km移動せずに済む。』


『そうよ、褒めていいのよ勝家くん。遠慮しないで私をもっと褒めなさい(笑)』


『……では作戦に移るぞ』


『いけず(意地悪)ね…』



柴田軍と対峙して様子を見ていた今川の先鋒3千の頭上から、キャノン砲の艦砲射撃と滑空砲が降り注いでキターーー!



「悪魔だーー悪魔が降ってくる」


「逃げるぞ!俺はまだ死にたくねえ」


「助けてくれ~足が…足が千切れた…痛てえよぉ…」



雪斎を守るため最初の10発は耐えていた5千だが、勝家が無慈悲な指示を出す。


「崩れるまで100発でも200発でもぶちこめ!」


鍛練されている駿河兵だが半数以上が死傷すると、蜘蛛の子を散らすように逃走していった。


「頃合いだ!敵本陣400メートル付近まで掛かれ!!」


艦砲射撃後の煙の中を、自ら先頭に立ち勇猛果敢に突き進む柴田勝家と騎馬軍団!


後に(掛かれ柴田)と呼ばれる事となる。


「全体止まれ!!」


素早く照準を合わせる勝家


『さらばだ黒衣の宰相殿。遠江は俺が貰い受ける!』


ターーーン!!


「ガッ!!!」どさっ…


「はっ!?宰相殿!?雪斎さまーーー!!!」

すぐ隣にいた飯尾定宗は驚愕し、表情は絶望に変わる…



「良し…全軍!引き上げだ!」


雪斎の死を確認した勝家は、信長の本隊6千が到着する予定の、本坂関所跡地・柴田軍本陣へと戻った。



史実では1555年・享年59歳。

やまいにてこの世を去るのだが、8年も早く訪れた雪斎の死によって、今川家の没落は加速する事となる。


史実を逸脱する重要人物の最後…だがそれは今川家だけでは無かった…


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