第22話 松平​広忠の葛藤


​1547年(天文16年)8月


今川という巨大な圧力と、織田家(柴田勝家の火力と経済力)がもたらす未知の恐怖。


三河 岡崎城主・松平広忠(21歳)は歴史の濁流の中で足掻き、悲壮な決断を迫られていた。


「宰相(雪斎)殿。嫡男・竹千代(後の徳川家康)を救いたいという親心は無論持っておりまする。だが1日で尾張を統一した織田。。。いや柴田勝家の火力!三河5千の兵力で打ち勝てるとは到底思えませぬ…」


雪斎「拙僧が後詰めとして遠江より5千を三河の東端に入れた。織田の間者スパイらしき者にも敢えて見せておる。必要とあらば駿河から、追加で1万超の軍勢も直ぐに出せる。」


広忠「そんなに!…確かに今をおいて竹千代を救いだす事は叶わぬか…」


広忠・心の声『何れにせよ、今川の軍事力と織田の火力の板挟みか……』


どうしてこうなったのか?


史実通りこの年(1547年)

広忠は今川への忠節を示すため、嫡男・竹千代(4歳)を人質として駿河へ送った。


しかし、その護送を請け負った田原城の戸田康光が裏切り、竹千代を織田家へと(横取りさせ)売り飛ばしたのである。


*****

その後、裏切りに激怒した今川義元は、戸田康光と一族郎党ともに攻め滅ぼした。

*****


松平広忠の心の声をキャッチした柴田勝家


『広忠の立場では、やむを得ないか…先鋒として出陣してくる。三河兵には多生の情けはかけてやるが、重臣の酒井や石川親子等は射殺する。メインは太原雪斎!キャノン砲の餌食えじきにしてやろう。』


アイリス『勝家くん。尾張丸(南蛮船)を遠江沖で待機させておけば?敗戦して逃走する今川は、雪斎が曳馬城(後の浜松城)で軍勢を吸収するでしょ。そこにキャノン砲の雨を降らせる。』


『なるほど、曳馬城なら海岸線から5km以内か…黒衣の宰相・太原雪斎を失った今川義元がどう動くか?向こうから仕掛けてきたこの戦、最低でも遠江は織田で貰うとしよう(ニヤリ)』


『竹千代くんにも見せるべきね。4歳児の彼には残酷だけど、織田に逆らったらどうなるか?いま刷り込んでおけば、将来的に無駄な血を流さずに済むわよ。』


『竹千代か…』


──柴田勝家・回想録──


​那古野城の勝家の前に、1人の幼子が引き出された。


「離せ! 儂は三河の嫡男ぞ!」


4歳とは思えぬ意志の強さを宿した瞳。これが後の徳川家康、竹千代であった。


​勝家はその瞳を覗き込む。


「…ほう。この幼子の中に、どれほどの忍耐が眠っているのか」

『どうだアイリス?』


​『勝家くん、間違い無い。彼こそが史実で260年の泰平を築く男よ。でも今の世界線では、彼の忍耐は不要ね。私たちの歴史改変速度が勝っているわ。』


​勝家は竹千代の頭を撫で信長に告げた。


「殿、この竹千代。柴田家で預かり織田の『新しきことわり』を教育しても宜しゅうございますか?」


​「カカカw権六の好きにせよ。三河の種が、尾張でどう化けるか楽しみだ。」

​──回想録終了──



尾張・国境付近。

太原雪斎が放った三河先遣隊5千は、開戦と共に総崩れ…忽然と姿を消した。


勝家は足軽兵士には見向きもせず、後の世に禍根を残さぬ様、指揮官の殺傷・すなわち当主広忠以外の松平家重臣のみを狙撃させたのである。


大久保忠俊(大久保一族の長老)・本多俊正(本多正信の父)・鳥居忠吉(鳥居元忠の父)・本多忠豊&本多忠高親子(本多忠勝の祖父と父親)・石川康正&石川数正親子・酒井忠次等々…


後々、家康を支える武将や一族の重鎮達を排除した…


アイリス『本多正信と鳥居元忠はまだ8歳、流石に戦場には居ないわね。本多平八郎忠勝は今、母親のお腹の中にいるから大丈夫。父親を失った今、3人とも勝家くんが養育してね。』


主な指揮官である重臣達を失い、動揺する三河の軍勢。


そこへ勝家は止めを刺す!

「今だな、実戦でのを行う!容赦するな!撃て!!」


勝家は試験配備した(試作型滑腔砲)の精密射撃により、数里先から岡崎城を正確に砲撃!完璧に破壊した。


城を壊滅された松平軍は、何で城が燃えているのか?それすら理解できぬまま潰走したのである。


ただただ震えている竹千代…


​「……見たか竹千代。これが織田家の『力』だ。尾張に攻め入ろうとした者は全てこうなる。お主の父上、広忠公のみ射殺しなかった。有り難く思うのだな…」


震えながらも竹千代は勝家に質問する。


​「し、柴田様…あの火を噴く筒があれば、この世から争いは無くなるのですか?」


四歳の幼子とは思えぬ鋭い問いに、勝家は静かに首を振った。


​「力は争いを止めるが、命を救うとは限らぬ。竹千代、真に恐れるべきは目に見えぬ敵…『古きことわり』なのだ。」



その頃、松平軍の後方で督戦していた太原雪斎。


「これは…(大汗)どうにもならん退け!全軍退却!遠江へ退くのだ!」


朝比奈「何と言うことだ噂以上ではないか!しかもあの砲撃あれは何だ?キャノン砲とやらとは違うのか?(冷や汗)」


太原​雪斎は敗走し、三河の重臣らは露と消えた。


勝家は震える竹千代の肩を抱き、燃える岡崎城を見据える。


それは三河の終焉であり、勝家が描く「織田主導の泰平」への、あまりに過酷で合理的な第一歩であった。

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