第18話 お市の方と土田御前
1547年(天文16年)5月
──8歳の姫と鋼の武将──
勝家が廊下を歩いていると、パタパタと小さな足音が響いた。
「ごんろく! ごんろくだ!」
勝家の太ももに抱きついてきたのは、8歳になるお市姫だった。
1539年・信勝の双子の妹として生まれた彼女は、すでに「絶世の美女」の片鱗を見せるほど愛らしく、その瞳は宝石のように澄んでいる。
勝家は表情を和らげ2メートルの巨体を屈めて、お市をひょいと抱き上げた。
「お市様、今日も元気に暴れておいでですな。」
「ごんろくの鉄砲、お市も撃ちたい! お市も戦いに行きたい!」
その光景を、遠くから見ていた信秀と信長がニヤリと笑う。
「権六にお市は懐いているなw……どうですか父上。お市が成人した暁には、権六に嫁がせ柴田家を織田の一門衆に迎えるというのは?」
信秀もまた勝家の背負う(未来)を確信し、深く頷いた。
「うむ。権六の様な武力と知略を兼ね備えた者を、織田の一門に迎えるのは願ってもない事だ。
双子は
「はい、織田家の最強守護神になるかと。そればかりか権六は、髭を剃れば中々の男前。父上、うかうかしていては他の女人に取られますぞw」
「それは困るな(笑)柴田家の大切な跡取り・嫡男だ。父親の柴田義勝には儂から丁寧に縁談の話を持っていこう。」
「はっ!何とぞ良しなに。」
「織田の一門衆となるからには了承を取り付けた後に、義勝にも3,000石ほど加増してやろう。
こういうのは順序を間違えてはいかん。先に加増ありきだと、武家の誇りや自尊心を傷つけてしまうでな…」
「はっ!万事父上にお任せ致しまする。何より権六に対するお市の笑顔、周りを明るく照らしておりますw」
「フハハハハハ!三国一の婿殿じゃのう(笑)」
勝家の腕の中でお市は幸せそうに笑い、勝家の首に細い腕を回す。
その小さな温もりが冷徹な軍師である勝家の胸を、一瞬だけ熱く焦がした。
「大きくなったら市も戦場に出て、ごんろくを助けてあげるからね。」
信長は、勝家の腕の中で無邪気に笑うお市を見つめ、低く笑った。
「市よ、戦など血生臭いだけだ。それより、その髭でも毟って遊んでいるがよいw権六、しばらく相手をしてやってくれw」
「ははっ。お市様は織田家の宝。この勝家、命に代えてもお守りいたします。」
「おお、それは有難いのお~権六、いま
「はっ!それは勿論で。。。へっ?一生?面倒を。。。」
『勝家くん……これだから色恋沙汰に無関心な
織田家の姫を娶れるのよ!スーパー逆玉の輿!「
「うっうう、そ、そ、某で宜しくお願いければ。。。?(大汗)」
信長「???お願いければ??何か蹴るのかww」
信秀「はぁ~権六……武門・知力・外交・経済、全てをこなせる御主でも、女人のことには頭が回らぬか……明日にでも御主の父・義勝と話をするので先触れを出しておく。」
「もうそこまで進んでおるのですか(汗)…何卒宜しくお願い致しマッスル…」
信秀「マッスル???」
信長「父上、たま~に出る権六語ですw気にしたら負けですぞw」
「ごんろく! ごんろく、おんぶ!」
勝家の背中に無邪気に飛び乗るお市!
この少女が成長した時、彼女は織田家と柴田勝家を結ぶ最強の絆となるのである。
織田家の武力・経済力・技術革新の光が強まるほど、織田家の【闇】も深く濃くなっていた…
【天文8年(1539年)・織田家大粛清】から3日後、土田御前の姿は那古野城から消えていた…
織田信秀は自らの正室である土田御前に対し、身を切るような非情な沙汰を下した。
次男・信勝を担ごうとした林一派と結託。その罪は重く、本来であれば謀反人共々(死罪)である。
だが勝家による必死の説得により信秀も折れ、何とか助命されたのだが、僅かな化粧料と共に城外の離れへ永久軟禁となった。
「そちは信勝を神輿に担ぎ、この家の『未来』を歪めようとした。命だけは助けてやるが、この城にそちの居場所は無い!」
次期織田家の権力を信長に一元化するため、正室への情すら切り捨てた信秀。
産んだばかりの信勝とお市とも引き離され、彼女の名は歴史の表舞台から完全に消し去られたのである。
「土田御前様……某が為すべき事は、織田の家督を継ぐ嫡男信長様を生涯守護すること!織田家の進む道は、それ以外にございませぬ。」
勝家の最後の言葉に深く項垂れた土田御前。絶望を胸に静かに暮らし、史実通り1594年ひっそりと生涯を終えた。。。
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