第17話 聖徳寺会見の咆哮、蝮を呑む異形の覇王


織田信長と斎藤道三が初会談したと言われる聖徳寺の会見。


史実では1553年に行われたとされるが、それ自体が江戸時代の創作との説もある。


1548年既に、道三の娘・帰蝶(濃姫)と信長は婚姻関係を結び、尾張と美濃の和睦の証となっている。


濃姫はバツイチだったとか?


まあその辺の真義は歴史学者に委ねて、歴史創作の物書きは想像力豊かにw好きな解釈を加えて書くのみです。



​1547年(天文16年)春


美濃と尾張の国境、聖徳寺。

斎藤道三は、寺へと続く街道の民家に潜み信長の行列を(覗き見て)いた。


道三の狙いは娘を嫁がせるに値する男か、あるいは噂通りのかを見極めることにあったのだが………


その瞳は信長本人よりも、彼を護衛する軍勢の(異常さ)に釘付けとなる。


​「……なんじゃ?あの軍装は……」


​そこには、これまでの戦国常識をあざ笑う光景が広がっていた。


約1,200人の足軽たちは統一された漆黒の防弾ベスト(超軽量鋼板)を纏い、背には火縄のない、だが確実にと呼称される新型銃を担いでいる。


そしてその後方に控える500人は三間半(6,3m)の長槍を装備している。


穂先は、勝家の工廠が生み出した純度の高い鋼で、陽光を浴びて冷酷なまでに青白く光っていた。


「うむぅ…信長らしき者がおらぬ。さては暗殺を警戒し兵士の中に紛れておるのか?注意深いのぉ…噂のような(うつけ)では無いようじゃ。」



□◆□◆□



古びた寺の周囲には、斎藤道三が誇る精鋭1,000人が、獲物を狙う蛇のように静かに伏せている。


​『……勝家くん、あっちの茂みに潜んでいる美濃軍兵士の心拍数、上がってるわよ。思考レベルは「レベルC:警戒と嘲笑」。13歳のガキが何をしに来たんだって思ってるわねw」


​脳内でアイリスが実況する中、22歳になった勝家は、信長の傍らに一歩引いて控えていた。


その前方に、異様な威圧感を放つ中年の男(美濃の蝮)こと斎藤道三が座している。


​道三は信長を見て息を呑んだ。


寺の手前で信長は、鉄砲隊の姿から着替えていた。よりによって傾奇者かぶきものに…


虎の皮を大胆に纏い、片肌を脱いで胸元を露わにした、まさに「尾張の大うつけ」と噂されている、まんまの信長の姿。


だがその傍らには、常に沈着冷静な眼差しながら、2メートル近い巨漢で周囲を圧する柴田勝家が、無言のまま影のように付き従っている。


​聖徳寺の本堂。

道三は正装で待ち構え、現れた信長を冷徹な眼差しで見据えた。


​「……ほう、お主がか。噂通りの異形な格好よな。」


​道三の低い声が堂内に響く。

信長は、近隣諸国の武将達が恐れるの威圧感を、鼻で笑うかのように受け流した。


彼は道三の目の前にどっかと胡坐をかくと、片肌を脱いだまま不敵な笑みを浮かべて答える。


​「斎藤殿。本国ならいざ知らず、他国への遠征で正装などすれば、いざ戦になった時に動きの邪魔になるだけ。一刻で血と泥にまみれるものであろうよ……」


「なるほど。この儂に常在戦場の心構えを解くか…面白い…」


そして道三の目は次に、信長の後ろに控える勝家へ移る。


​「して……そこのデカイ若造が、林秀貞をハメて消したという柴田権六勝家か。織田家の尾張統一の功により、火力部隊の奉行を任されておると聞くが?」


「ハメて消したとはまた心外ですな。それよりも斎藤様、木曽川の対岸から美濃の喉元を覗いている織田の『キャノン砲』の列。美しく見えておりますかな(ニヤリ)」


​信長と勝家は、射程距離8kmのキャノン砲というを背景に、対等どころか上位者として道三を見下ろしている。


勝家の挑発に道三の眉がピクリと跳ね、殺気が膨れ上がる。周囲の美濃兵たちが一斉に槍を構えた。


勝家と織田護衛兵も柴田銃の銃口を向ける。

​そんな中、13歳の信長は鼻で笑い落ち着いた声で訪ねる。


​「斎藤殿、一つお教え願いたい。貴殿が帰蝶(濃姫)を差し出す正式な文を寄越したのは、娘への愛ゆえか? それとも我が尾張が独占する『鉄』と『硝石』、そして『富』に食らいつきたいがためか?」


​道三は、背後に控える柴田勝家と一瞬だけ目が合った。


勝家の瞳には、道三の権謀術数などすべてお見通しだと言わんばかりの、圧倒的な知性と武力が同居していた。


​『…コイツら、その若さで物怖じ一つせぬとは…ここは美濃・敵国だと言うに…狂っておるのか!信長という男も、その影でこの怪物を育てた勝家という男も。』


​道三は確信した。

このまま戦えば美濃の兵が声を上げる前に、木曽川対岸に居並ぶキャノン砲が、稲葉山城を瓦礫の山に変えるだろうと…


そして1,200名の柴田銃部隊に撃ち抜かれ、美濃の精鋭1,000人は皆殺しにされると…


「……フッ、仕方ないか……」

マムシは、自嘲気味に口角を上げた。


​「よかろう。か名君かは知らぬが、この道三、もはや蛇に睨まれた蛙も同然じゃ。

信秀殿に送った文の通り、尾張へ帰蝶を遣わす。これで美濃尾張は同盟国となる。じゃが儂の死後、せいぜい美濃を丸ごと飲み込んでみせよ(ニヤリ)」


義父殿ちちうえの御存命中に飲み込むかとw」


「……ワハ……ワハハハハ! 織田信秀、とんでもない怪物を育ておったな! 頼りにしておるぞ婿殿!」


​こうして史上名高い「聖徳寺の会見」は、尾張の圧倒的な軍事・経済力の前に、道三の完全なる屈服という形で幕を閉じた。


それは、勝家が描く【織田家による天下統一】の、本格的な始まりとなる。


帰り道、信長は勝家の肩を叩く。


​「権六。帰蝶とやらが美女でなければ、そちの首を跳ねるぞ(笑)」


​「ご安心を信長様。それがしの忍び衆によれば、帰蝶様は美濃国1の美女。そして信長様にふさわしい『苛烈な毒婦』にございますれば(ニヤリ)」


「美女で毒婦か…心を掴めるかも儂の才覚次第と言う訳だな。よかろう、逢うのが楽しみだカカカカカw!」



​22歳の軍師・勝家

13歳の魔王・信長

そしてアイリス


​最強の三位一体が、ついに美濃の蝮をもその軍門に吸収したのである。

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