第11話 早まる審判、勝家の時短殲滅術
1539年(天文8年)・那古野城
生まれて間もない信勝(勘十郎)を抱く土田御前と、その周りで
「これこそが正統な後継者だ」
と目を輝かせる老臣たち。彼らの浅ましい思考が、城内の空気をよどませている。
勝家は自室に戻り、暗闇の中でアイリスと対話していた。
『勝家くん、林(秀貞)たちが動き出したわよ。信勝ちゃんの誕生を機に、アンタを「吉法師をたぶらかす邪悪な近習」として排除する冤罪ルートを爆走中。17年後の反乱に向けて、今からじわじわ勢力を固めるつもりね。』
アイリスの警告を聞き勝家は暗闇の中で低く、しかし冷酷な笑みを漏らした。
『17年……? アイリス、奴らはそんな先まで平和に陰謀をこねくり回せると思っているのか?』
勝家は、窓から見える那古野の夜景を、獲物を見定める鷹の目で見据えた。
『17年も待つ気は無い……情報操作でバカをその気にさせ、もっと早く危険分子は殲滅する(ニヤリ)』
『……ひっ! 勝家くん、顔が完全に悪役(ヴィラン)になってるわよ! でも嫌いじゃないわ、そのスピード感!』
勝家は懐から現代の(心理プロファイリング)と(流言飛語の拡散理論)を応用したメモを取り出した。
『奴らが信勝を神輿に担ごうとするなら、その神輿が「今すぐ動く」と錯覚させてやればいい。林たちの耳元で囁いてやる。「殿(信秀)は、近いうちに権六を城主に据え、林たちの領地を没収しようとしている」とな。』
『なるほど! 恐怖心でバカたちをパニックにさせて、準備が整わないうちに無理なクーデターを起こさせるのね。自滅への特急券(エクスプレスパス)発行完了!情報の毒を回しマッスル!』
翌朝、広間に現れた勝家は、昨日まで自分を暗殺しようとヒソヒソ話していた林秀貞の隣を通り過ぎる際、わざとらしく、しかし微かに聞こえる声で呟いた。
「……林殿、那古野の土は、新しい城主を待ち望んでいるようですな。」
「なっ……!?」
林の思考レベルがDから「レベルE・極度の疑心暗鬼」へと転落するのを、勝家は見逃さなかった。
その様子を、物陰から竹鉄砲を構えて見ていた5歳の吉法師(信長)が、愉快そうに鼻を鳴らす。
「カカカ! 勝家、また『毒』を撒いたな。ジジイ共が、まるで熱に浮かされた猿のように騒ぎだしておるぞ!」
「吉法師様、これは掃除にございます。綺麗な庭を作るには、まず枯れ葉をまとめて焼かねばなりませぬから。」
織田家を二分する悲劇の序曲。しかし勝家とアイリスの手にかかれば、それは単なる「効率的な組織改編」という名の、血塗られたスピード決戦へと変貌していく。
『17年後の運命など待たぬ。』
14歳の勝家は、アイちゃんの知略を武器に、老臣たちの欲望と恐怖を煽り、自滅への罠を仕掛けていく。
信勝誕生の祝宴の裏で加速する粛清の歯車。軍師・勝家の「時短殲滅」が今、始まった!
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