第10話 14歳の重臣と、5歳の魔王
1539年(天文8年)
柴田勝家・14歳
吉法師・5歳
月日は矢のように流れ
尾張の情勢は激変していた。
那古野城の広間
そこには元服を終え、幼名の権六から【柴田権六勝家】と名乗る少年の姿があった。
14歳───現代なら中学2年生だが、この時代の勝家は、織田弾正忠家当主・信秀の直命により吉法師の筆頭後見役として、織田家の中枢にどっしりと座を占めている。
「……気に食わぬ。柴田の小倅が、なぜ我ら宿老を差し置いて吉法師様の隣におるのだ。」
「所詮は口先三寸で殿をたぶらかした小僧よ。近々、身の程を教えてやらねばな……」
背後から突き刺さる、老臣たちのドロドロとした嫉妬の思考。
勝家の脳内には、アイちゃんの警告音が鳴り響く。
『勝家くん、左後ろのハゲたおじいちゃん(林秀貞)が「次の鷹狩りで、勝家を迷子にして暗殺しちゃおう計画」を練ってるわよ。妬み思考レベルB、どす黒い殺意ね!』
『…フン、相変わらずだな。5年もこの環境にいれば殺意の
勝家は表情一つ変えず、目の前で奇妙な動きをしている5歳の幼子(吉法師)を見た。
彼は、家臣たちが並ぶ広間の真ん中で、泥のついた石を並べ陣形を作って遊んでいる。
「勝家これを見よ。石をこの様に置けば清洲の城門は3日で落ちるぞ。どうだ?なぁ?」
ニヤリと笑う5歳の魔王の瞳。
そこには相変わらず、宇宙のようなノイズが渦巻いている。
『勝家くん!吉法師ちゃん、5歳にして「補給路の遮断」を理解してるわ…この子の成長速度、ワタシのプログラムを超えてるかも!』
『5歳とはいえ魔王だからな。だが、まだまだ穴だらけだ。』
『そうね導いてあげてよ。お勉強ターーイム!』
「吉法師様、石を並べるだけでは足りませぬ。この石に『
勝家が現代の経済封鎖の概念を囁くと、吉法師は「ハハハハハ!」と無邪気に笑い声を上げた。
「さすがは我が知恵の刃! ジジイたちの顔を見ろ、まるで腐った魚のようであるな!」
吉法師の無邪気な毒舌に、家臣団の顔色が赤黒く染まる。
「ぐぬぅぅ……ジジイ……」
「腐った魚!!………」
その時、奥の間から赤ん坊の泣き声が響いた。
「……生まれたか。我が弟、勘十郎(後の信勝)が。」
吉法師の瞳が、ふっと冷たくなるのを勝家は見逃さなかった。
生まれたばかりの信勝。彼は母・土田御前の寵愛を一身に受け、後にうつけと呼ばれる兄に代わって、家督を狙う悲劇の謀反人となる運命だ。
『勝家、出たわよ。信勝ちゃんの思考波形……吉法師ちゃんとは正反対の「超・保守的」なタイプ。周りの嫉妬深いジジイたちが、こぞって担ぎ上げそうな「扱いやすいお人形さん」の波形ね。』
『……つまり、俺たちの排除を目論む者どもの「神輿」になるというわけか。』
勝家は静かに立ち上がり、吉法師の隣で腰の刀を触った。
14歳とは思えぬその威圧感に、先ほどまで陰口を叩いていた老臣たちが一斉に視線を逸らす。
「吉法師様。弟君の誕生、祝わねばなりませぬな……ただし、幼き権威を神輿として担ごうとする余計な手は、某が今のうちにすべて叩き折っておきましょう。」
「勝家…励め!お主が退屈な掃除をしている間、儂は熱田の港で新しい『銭の儲け方』を考えてくるとしよう。」
5歳の信長と、14歳の勝家。
後に日ノ本を焼き尽くし再構築する二人の若き巨星の絆は、嫉妬に狂う織田家の中でより強固に、より危険に研ぎ澄まされていく。
信勝の産声を聞いて涙ぐむ老臣たちを、冷めた目で見る勝家。
『勝家くん、ワタシには視えてるのよ…事は17年後に起きるわ。』
『……17年後だと?』
『ええ。あの赤ん坊が17歳になった時、この国(尾張)の運命を分ける大きな戦いが起きる。
アンタが裏切り者になるか、それとも天下の副将軍になるのか……これからの17年間の教育と、神輿を担ぐ取巻き連中の排除で決まるわよ。』
勝家は、5歳の信長の奔放な笑い声と赤ん坊の泣き声が混ざり合う広間で、静かに17年後の戦場(稲生ヶ原)の光景を幻視していた。
『オレは17年も待つ気は無い…情報操作でバカをその気にさせ、もっと早く危険分子は殲滅する(ニヤリ)』
────
信勝(織田信行)の生年月日については、実は正確な記録が残っていません。
しかし、歴史学上の通説や信長との年齢差を考えると、以下のようになります。
(史実での推定)
生年・1536年~1537年頃
織田信長(1534年生)の2歳から3歳年下の同母弟と伝わっている。
ですが、あくまでも推定ですので、本作のタイムラインでは(1539年・天文8年)生まれとします。
因みにこの物語の世界線では、信勝の双子の妹として、お市も生まれた事とします。
御了承下さい m(_ _)m
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