第9話 第六天魔王の揺籃(ゆりかご)
揺籃の中で眠る、破壊の化身…
9歳の教育係が最初に授けるのは知恵か…それとも毒か───
1534年(天文3年)
柴田権六・9歳
勝幡城の最奥、厳重な警護に守られた一室。
信秀の許可を得て権六は、父・義勝と共に、生まれたばかりの嫡男・吉法師の寝所へと足を踏み入れた。
一歩入った瞬間、権六は
部屋の空気が重い。物理的な重圧ではない。脳内に直接流れ込んでくる、圧倒的な思考の濁流のせいだ。
『……何だ、これは。脳が……焼けそうだ……!』
『勝家くん、脳内のファイアウォールを最大出力に!全開で防御するのよ!
これ、思考なんて生易しいものじゃないわ……この子、無意識に「世界の
アイちゃんの悲鳴に近い警告!
権六は必死に意識を保ち、小さな
【鑑定対象/吉法師(織田信長)】
思考レベル/測定不能(オーバーフロー)
思考傾向/世の常識の純粋なる破壊と再構築
状態/覚醒前(ただし周囲の因果を歪めている)
『何てこった……9歳の俺が「情報操作と武力」の怪物なら、この赤ん坊は「世界の破壊」か……化け物め!』
権六は、震える手を伸ばした。
その時、眠っていたはずの吉法師が、パチリと目を開けた。
生まれたばかりの赤ん坊特有の濁った瞳ではない。そこには、すべてを見通すような冷徹で澄んだ「宇宙」があった。
吉法師の無意識下から、1本の鋭い思考の針が権六の脳を突く。
『……ヌシは……ダレだ……?』
権六は息を呑んだ。言葉ではない、概念としての問いかけだ。
アイちゃんが弾けたように叫ぶ。
『勝家くん!ここで気圧されたら一生パシリよ!「軍師」として、この子の脳に「最初の
権六は恐怖を抑え込み、不敵な笑みを浮かべる。そして吉法師の小さな手首を優しく、しかし力強く掴み、概念を口に出して言葉として伝えた。
「吉法師様。私は貴方の『刃』となる男だ……そして貴方がこの国を壊し尽くす前に、正しい『壊し方』を教える家庭教師でもある。」
その瞬間、部屋を支配していたノイズが、ピタリと止んだ。
吉法師が、ほんの少しだけ口角を上げたように見えたのは錯覚か。
「……権六。吉法師が笑ったか?」
後ろで控えていた信秀が、驚愕の声を漏らす。
「はい。どうやら、私の挨拶を理解していただけたようです。」
信秀は満足げに頷き、権六の肩に手を置く。
「良い。これより儂の許可無く吉法師の側に控えることを許す……さて権六。教育係としての初仕事だ。この子を『唯一無二の王』にするため、お主は何を教える?」
アイちゃんが脳内で「合格!」の看板を持って飛び跳ねている。
『来たわね!勝家くんの「英才教育プログラム」一発ぶちかましてやりなさい!』
権六は信秀から視線を逸らさず静かに、だが断固として告げた。
「まずは……『言葉』を教える前に、『沈黙』と『情報の重み』を教えます。王が軽々しく言葉を発すれば、それは刃となります。吉法師様には、沈黙だけで敵を殺す術を学んでいただきます。」
信秀は思わず息を飲む。
『…やはりコイツは、ただ者ではない…儂を越える器を持っている…それに0歳から教育を受ければ吉法師の器は、日ノ本を飲み込む!』
その瞬間、信秀の思考は「レベルA:歓喜」へと跳ね上がっていた。
信秀「ワハハハハハ……沈黙で殺すか。面白い! 柴田権六、吉法師を好きに料理せよ。この尾張という籠を壊し、日ノ本を平らげるほどの大鷹にな!」
アイリス『さすが尾張の虎ね。ワタシですら戦慄する、吉法師の規格外な才能を既に見抜いている。しかも大事な嫡男を、まだ9歳の勝家くんに託すなんて…その器量たるや圧巻だわ。』
こうして9歳の軍師と、0歳の破壊神による「世界一危険な授業」が幕を開けた。
権六とアイリスは、第六天魔王の強大な力を英才教育の名の下に、戦国の理を覆す【最強の魔王】プロデュースを始めることを決意したのである!
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