第7話 尾張の虎・最強弟、麒麟児を見出す

​1534年


柴田権六・9歳


​権六の放った「言葉の矢」は、夜を徹して走った密使により、尾張西部の要衝・勝幡しょばた城へと届けられた。


数日後、尾張全土に衝撃的な報せが駆け巡る。


​「清洲城下の不審火により、織田大和守家の重臣らが多数捕縛。彼らは、織田弾正忠信秀様を暗殺せんとする密議を働いていたとのこと……」


​さらに勝幡城からはもう一つ、慶事の報せが届いていた。


「弾正忠様に御嫡男・吉法師様が御誕生あそばされた!」


​屋敷の大人たちが祝儀と政情不安で騒然とする中、権六は一人、庭先でアイちゃんと『答え合わせ』をしていた。

『勝家くん、大成功ね!「尾張の虎」こと24歳の織田信秀公は、アンタのリークのおかげで間一髪、暗殺を回避。さらに息子まで生まれて、今まさにノリに乗ってるわ!』


​『……ふむ、情報のがこれほど劇的に効くとは正直驚いた。だが父上の様子が、少しおかしい……』


​そこへ屋敷の門が勢いよく開き、柴田家の門前に、数騎の騎馬武者が土煙を上げて現れた。弾正忠家からの公式な使者である。


​「柴田義勝殿!勝幡城より、信秀様が弟君・織田孫三郎信光様がお着きだ!」


​「な!……信光様だと!?」


​父・義勝が慌てて平伏する中、現れたのは、爛々と輝く瞳を持った20代前半の若武者──織田信光であった。


彼は、信秀が最も信頼を寄せる【織田家最強の盾と矛】である。


​信光は馬を下りると、形式的な挨拶もそこそこに、鋭い眼光を屋敷の奥へと向けた。

「義勝。兄上が感謝しておられたぞ。あの危急の間際に出された報せ。しかもかなり詳細な情報。義勝の鼻は、いつから犬より利くようになったのか?とな(ギロリ)」


​「は、ははっ……身に余るお言葉……(大汗)」


​義勝の脳内からは、滝のような冷や汗と共に


『マズい、不信感を持っておられる…まさか権六の言葉遊びから等と言えるハズも無い…どうする!』


という絶望の思考が漏れ出している。


権六は離れた場所から『鑑定』により知っていた。父の思考レベルがF(絶望的な動揺)へ転落した事を。



織田信光はふっと口角を上げると、父の背後で静かに控えていた権六に視線を固定した。


​9歳の権六は、大人の圧に震えるどころか、その瞳を真っ直ぐに信光に返した。


信光『ほお、、、こいつか、、、なるほどなぁ~腑に落ちたぞ(ニヤリ)』


​『勝家、気をつけて!この信光って人、ただの脳筋じゃないわよ。を直感で理解するタイプよ。アンタが黒幕だって、もう疑ってる!!』


​『……分かっている、アイリス。ここは9歳の子供を演じて逃げ切れそうか?』


​『いいえ!下手に隠すと逆効果。ここは「堂々とした柴田家の嫡男」として振る舞いなさい。情報の出所はボカしたまま、存在感だけで圧倒するのよ!』


​権六は一歩前へ出ると、深々と、しかし一切の卑屈さを見せずに頭を下げた。


​「柴田権六、信光様のお越しを心より歓迎申し上げます。吉法師様の御誕生、誠におめでとうございます。」


​その凛とした声、揺るがぬ立ち振る舞い。信光の脳内に、これまでにない『波紋』が広がるのを権六は捉えた。


​信光の思考

『……何だ、この小僧こわっぱは。9歳だと? 義勝のような実直さとは無縁の、底知れぬ刺々しさと同時に静けさがある……あの情報の「切れ味」……こいつだ!兄上を救ったのは、こいつで間違いない!』


​信光はしばし沈黙した後、爆発したように笑い声を上げた。


​「ハハハハハッ! 義勝、面白いせがれを持ったな! 権六と言ったか。貴殿のその面構え、眼力、クソ度胸!すべて気に入ったぞ!」


​信光は権六の肩を強く叩くと、声を潜めてこう続けた。


​「兄・信秀が勝幡城で待っておられる。吉法師の顔も見せてやるゆえ、すぐに支度をして明日、登城せい。権六……貴殿が明朝、城で何を語るか、兄上も儂も楽しみにしておるぞ(ニヤリ)」


​去りゆく信光の後ろ姿を見送りながら、権六は確信した。


自分の「隠れ蓑」であった子供という殻は今この瞬間、織田家の中心人物・尾張の虎のによって剥がし取られたのだと。


​『……ふぅ、凄い迫力だ(汗)……心臓が止まるかと思った。』


​『勝家くんお疲れさま!でも今の対応で、信光様はアンタを「ただの子供」じゃなくて「使える人材」として認識したわ。

さて次は本丸・勝幡城よ。虎の喉元で、最高の演技を見せてやりましょう!マッスル!』

​織田家随一の切れ者・信光に、その非凡さを見抜かれた権六。


9歳の少年が仕掛けた『言葉』は、ついに尾張の覇者・織田信秀本人との謁見を導き出した。


そして!!


権六『むっ?!!これは(大汗)』


アイリス『そんな……ウソでしょ……人の子なのに?あり得ない(汗)』


権六とアイリスの脳裏に、勝幡城の奥底で産声を上げたばかりの【後の第六天魔王ノッブ】から発せられる、巨大で異質な思考の残響が、予感として流れ込んで来た…


「ぐぬうぅぅ…」


吉法師のに当てられ、激しい耳鳴りを起こす権六。


『しっかりしなさい。ワタシが付いてるから……』


果たして権六は、虎の眼前にてその正体を隠し通せるのか?


運命の勝幡城会談。戦国史上最強の主従が交差する、勝幡城への旅路が今、始まる……


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