第4話 柴田権六・虹の女神アイリス運命の遭遇!

1534年(天文3年)


柴田権六・9歳


【マニュアル】と書かれている本を、震える手でその表紙を撫で、ページを捲った刹那!!


「うっ!!!?」


脳裏に響いたのはこれまでの(雑音)とは一線を画す、陽気な女の声だった……



□◆□◆□



『ふむ。目次とやらを見る限り、オレの不思議な能力の全てを解説してくれる物らしい…それよりこのマニュアル自体が摩訶不思議そのものだがな(笑)』


その最初のページを読もうとした権六は、再び驚愕する事になる。


『本日より(情報の取捨選択)→(予測)→(誘導)という進化のプロセスを取得して頂きマッスル!良いですね?良いですよね?良いのか?って聞いてるんですが?』


『……何だ!読もうとしたら勝手に喋り出した……(汗)しかも女人にょにんの声とは……うむむ面妖な(汗)もののけの類いか!燃やそう!』


『かまわないけどさ~燃えないよ私。そもそもにしか見えないし、実体化してないから物理的攻撃はすべて無効なのテヘッ』


『勝家?誰だそれ?オレの名は権六だ!』


『それは幼名ね。元服したら柴田勝家、上洛後は柴田 修理亮しゅりのすけ勝家と名乗るのよ。』


『修理亮だと!!それは従五位下の位階に相当するぞ!』


『そうね、貴方は時の天皇から個別許可(昇殿の宣下)さえ出れば昇殿を許される。六位以下の官人、地下人じげにんより上位の貴族だわ。』


『オレが…貴族…(汗)』


『それよりさあ~。いきなり出てきたら流石に5歳児の小童こわっぱには耐えられないと思って、この4年間ずっと回りくどい方法で慣らしてたんだよ。優しいでしょワタシ(ニコニコ)』


『う、うむぅぅ…お主は?何者なのだ?』


その時、屋敷中に響く大音量がw

「若!わかーーー!かわやが長過ぎますぞ!!やはり手伝いましょうか!!」


『せっかちね村木くんw今晩ゆっくり説明するから、さあ行ってきなさい。

あ!それとワタシ勝家がどうしても必要であれば、この時代の日本人女性として実体化も可能だから。気が乗らない役目なら断るけどね。』


『断るけどねって…なにかとワガママそうな女人であるな…それで名は?名は何と呼べば良い?』


​『ワタシの名前はアイリス!ギリシャ神話の虹の女神(イリスIris)様よ。長いから略して(アイちゃん)って呼んでね。』


『虹の女神様!神様であるか!でなければ、この様な不思議な術も行使は無理……神様をちゃん付けしてバチが当たらぬのか?…あ、ア、アイちゃん(様)…』


『……ちゃんの後に様って……も~勝家ってホント頭固いんだから!ワタシ、神の世界じゃ超売れっ子の伝令係だったんだよ!』


『…超売れっ子…女神様なのに売られたのか…如何いかがわしい場所か?…』


『…ねえバカなの?まあでも主神のゼウス様は、隙あらばワタシを口説こうとしてくるし、その奥さんのヘラ様は超絶嫉妬深くて「浮気調査してこい!」って毎日パシリにされるし……もうブラック企業もいいところ!』


​『ゼウス?ヘラ?……さっぱり分からぬが、お主、女神様なのに苦労しておるのだな。』


​権六が思わず同情の目を向けると、アイちゃんはさらに調子に乗った。


​『でしょー!?旦那のゼピュロス(西風の神)は「春を運ぶ仕事が忙しい」って言って全然帰ってこないし…

ワンオペ育児に疲れ果てたところで、このマニュアルの仕事に転職したってわけ。神様の世界も世知辛いのよ、勝家くん。』


​『……お主、神のくせに所帯じみておるな。というかワンオペ育児?おっ!脳内で勝手に解説が始まった。。。。。ほお子供がおるのだな。』


​『あ、いっけなーい!ワタシのネタバレは厳禁だったわ!テヘッ。とにかく!ワタシの(伝令スキル)を全注入して、貴方を最強のインテリ武将にプロデュースしてあげるから。感謝しなさいよね!』


​『……インテリ~プロデュース?……制作・演出・完成まで導く……うむ。オレと何の関係性があるのか?もはや考えるのをやめよう。これ以上は脳が焼ける。』


​権六は深くため息をつき天を仰いだ。


目の前に広がる早朝の青空に、うっすらと七色の虹が架かっている。


​「若!何を呆けておられる!早く厠から出ぬかーーー!」


​村木の叫び声で、権六の第1回・女神様アイちゃんとの面談は強制終了となった。

​家臣の怒声に追われるように庭へ飛び出した権六。その視界の端では、透き通るような美女の幻影が「マッスル!!」と拳を突き上げて笑っていた。


前途多難。

だが、この騒がしい奇妙な女神との出会いが、尾張の小童を戦国最強の武将へと変える、運命の歯車となったのである。


───


1534年

まさにこの年、織田信秀の嫡男・吉法師(後の織田信長)が誕生します。

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