第15話
③そう呼ばれる人
その人が来ると、
席の決まり方が少し遅くなる。
空いている席はある。
人数も足りている。
それでも、
誰かが一拍、待つ。
「先、どうします?」
そんな言葉が出る。
意味は、特にない。
誰も断らない。
誰も拒否しない。
ただ、
自然に別の卓が先に立つ。
その人は、
何も言わない。
急かさない。
理由も聞かない。
表情も変わらない。
打ち方が荒れているわけじゃない。
ルールも守っている。
声が大きいわけでも、
無言すぎるわけでもない。
それなのに、
同卓すると、
空気が少しだけ硬くなる。
安全だと思った牌が、
通らない。
待ちが読めない。
筋はある。
数字も合っている。
でも、
結果がズレる。
誰かが振り込むと、
小さく息を吐く音が出る。
「まあ、仕方ないね」
そう言って、
次に進む。
文句は出ない。
説明もされない。
その人は、
勝っても、
負けても、
同じ顔をしている。
感情を出さない。
取り繕わない。
それが、
余計に分からない。
帰り際、
誰かがぽつりと思う。
今日は、
やりにくかったな。
それだけだ。
名前は出ない。
理由も出ない。
でも、
次に来た時。
席の決まり方は、
また少し遅くなる。
そうして、
いつの間にか。
その人は、
「縁起が悪い」と
心の中で呼ばれるようになる。
誰も、
そう言ったことはないのに。
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