選択

私は、立ち止まった。


逃げない。

女も放さない。


木々の間に立つそれへ、視線を向ける。


形は、人に近い。

だが、近づくほど違和感が増す。

関節の位置が、微妙に合っていない。


顔が、ない。


布のようなものが垂れているだけだ。


「……何を見てる」


声が震えないように、息を整える。


「私が、左だった理由」


一拍。


風が、木々を揺らす。


「判断」


短い返答。


「速く、正確。

犠牲を許容した」


胸の奥が、きしむ。


「それは、生きるためだ」


「同義」


否定はない。


肯定もない。


女が、腕の中で身じろぎする。


「では、今は?」


問い返す。


布が、僅かに揺れた。


「判断、再計測」


空気が、重くなる。


「対象、二名」


女を、見る。


「生存率、低下」


分かっている。

だから聞いた。


「それでも?」


一瞬の沈黙。


――その沈黙が、答えだった。


「基準、逸脱」


私は、笑ってしまった。


「じゃあ、正解は?」


答えは、返ってこない。


代わりに。


「次段階へ」


視界が、歪む。


森が、遠のく。


女の重さが、消える。



気づくと、私は立っていた。


あの廊下だ。


灯りは、相変わらず薄暗い。


だが――

今度は、私しかいない。


正面に、分岐。


右と、左。


そして。


私の手元に、布。


被せるための、布。


選別された先に……

選ぶ側へ回る資格が、与えられた。

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選別された先に… mono @monokaki_story

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