第17話 近づくのは、敵ではない
その朝、
ラストは
境界に
立っていた。
理由は、
ない。
ただ、
来るべき
何かが
近いと
感じた。
風が、
妙に
整っている。
強くも、
弱くも
ない。
「……揃い
すぎてる」
彼は、
そう
呟いた。
世界が、
身構えて
いる。
そんな
感触。
水晶板を
開く。
Lv:9999
数字は、
静かだ。
警告も、
表示も
ない。
だが。
視界の
端に、
淡い
歪みが
見える。
未来の
分岐。
その
ほとんどが、
同じ
一点に
収束している。
「……会いに
来る」
誰かが。
昼。
村に、
使者が
来た。
人間の
国の
上層部。
豪奢な
服。
鋭い
目。
「魔王が
動いた」
短く、
それだけ
告げる。
「討伐隊を
編成する」
「協力を
要請――」
ラストは、
首を
振った。
「必要
ない」
場が、
凍る。
「何を
言っている」
「魔王だぞ」
ラストは、
目を
逸らさない。
「彼は、
戦いに
来ない」
断言。
根拠は、
言わない。
言えない。
使者は、
怒りを
滲ませる。
「なら
なぜ
動く」
ラストは、
少しだけ
考えた。
「……理由を
探してる」
それ以上、
説明しなかった。
夕方。
境界の
向こうが
揺れる。
魔力の
圧は、
ある。
だが、
攻撃の
形では
ない。
巨大な
影が、
ゆっくり
現れる。
剣は、
抜かれて
いない。
魔王
グラディオ。
その姿を
見ても、
ラストの
心臓は
早まらない。
怖く
ない。
ただ、
重い。
魔王は、
境界線の
手前で
止まる。
越えない。
「……更新者」
低い
声。
「名を
ラストと
聞いた」
ラストは、
一歩
前に
出る。
「……魔王
グラディオ」
名を
呼ぶ。
それだけで、
世界が
揺れた。
敵同士の
呼称では
ない。
存在を
認める
呼び方。
魔王は、
わずかに
目を
細める。
「剣を
向けぬ
人間は
久しい」
「討伐に
来ぬ
魔王も
初めてだ」
短い
沈黙。
風が、
間を
通る。
「……聞きたい」
魔王が
言う。
「我は、
まだ
存在して
よいのか」
その問いは、
弱さでは
ない。
役割を
失った
者の、
正直な
疑問だった。
ラストは、
すぐに
答えない。
見える。
倒す
未来。
封じる
未来。
和解する
未来。
消える
未来。
その中で、
一つだけ。
誰も
選んで
こなかった
道。
彼は、
息を
吸う。
「……話そう」
「戦う
前に」
魔王は、
頷いた。
それだけで、
世界の
緊張が
一段
解ける。
人も、
魔物も、
まだ
理解して
いない。
だが。
最終決戦は、
もう
始まっていた。
剣では
なく。
存在理由を
問う
対話として。
――少年と
魔王は、
同じ
地平に
立った。
次に
語られる
言葉が、
世界を
終わらせる
か。
それとも
更新する
か。
それは、
まだ
決まって
いない。
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