第14話 レベルという檻が、壊れる
世界が、
息を
吸った。
ラストは、
それを
感じた。
風が
止まり、
音が
消える。
境界も、
村も、
遠くなる。
彼の
前に、
何もない
空間が
広がった。
白でも
黒でも
ない。
「……また
来たのか」
返事は、
ない。
だが、
今度は
理解できる。
――これは
場所じゃない。
――世界が
自分を
見る
距離だ。
目の
前に、
水晶板が
浮かぶ。
ひびだらけ。
数字は、
表示されて
いない。
《最終処理を
開始する》
管理者の
声。
だが、
もう
支配では
ない。
ただの
報告。
《肯定を
確認》
《定義外
成長を
許可》
水晶板が、
静かに
砕けた。
破片は、
落ちない。
溶ける
ように、
消える。
その
向こう側に、
新しい
表示が
現れた。
――数字では
ない。
だが。
ラストは、
理解した。
「……ああ」
「これが
“強さ”か」
次の
瞬間。
数字が、
追いつく。
Lv 1
一瞬で、
消える。
Lv 48
Lv 312
Lv 1247
止まらない。
世界が、
数え切れない
変化を
まとめて
流し込む。
害獣の
夜。
沈黙した
境界。
逃げなかった
言葉。
選ばれなかった
未来。
すべてが、
一本の
流れに
なる。
Lv 9999
数字が、
定着した。
だが、
体は
変わらない。
筋力も、
魔力も、
反射も。
平均以下の
まま。
「……?」
戸惑う
ラストに、
世界が
応える。
《レベルは
力では
ない》
《更新権限だ》
《選択肢を
生成する
優先度》
視界が、
開ける。
村が
見える。
だが、
数字では
ない。
人の
迷い。
未選択の
未来。
崩れかけた
因果。
それらが、
淡く
光っている。
「……全部
見える」
怖さが、
戻る。
だが、
逃げない。
世界は、
彼を
押さえつけない。
ただ、
委ねている。
境界で、
冒険者が
剣を
抜く。
魔物が、
現れた。
だが、
ラストは
動かない。
一歩も。
代わりに、
言葉を
投げる。
「……戻れ」
命令
ではない。
理由を
与えただけ。
水の
流れ。
草の
再生。
争う
必要の
ない
未来。
魔物は、
立ち止まり、
踵を
返した。
誰も、
理解できない。
ただ、
結果だけが
残る。
戦いは、
起きなかった。
ラストは、
小さく
息を
吐く。
「……これが
無双、
なのか」
管理者の
声が、
遠くで
消える。
《世界は
更新された》
《以後、
君は
観測者
ではない》
《“選択を
生む者”だ》
空間が、
現実に
重なる。
村の
ざわめき。
朝の
匂い。
誰かが
呟いた。
「……レベル
いくつに
なった?」
ラストは、
少しだけ
困ってから
答えた。
「……9999」
沈黙。
だが、
恐れは
ない。
数字が
意味を
変えた
ことを、
世界が
知っている。
――少年は
最強に
なった。
だが、
誰も
倒していない。
それでも、
世界は
前に
進んでいた。
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