第13話 肯定するということ


境界の

鐘は、

鳴り続けていた。


 


意味を

失った

警告。


 


それでも、

音だけが

残る。


 


ラストは、

境界線の

前に

立っていた。


 


魔物は、

いない。


 


人も、

動かない。


 


ただ、

選択だけが

宙に

浮いている。


 


「……戦わない

 なら、

 どうする」


 


誰かが

呟いた。


 


答えは、

返らない。


 


ラストは、

足元の

土を

見つめる。


 


踏み固められ、

草も

生えない。


 


何度も

争いが

起きた

場所。


 


「……ここは」


 


声が、

かすれる。


 


「壊すか、

 守るか、

 じゃない」


 


視線が

集まる。


 


彼は、

逃げなかった。


 


「選び直せる

 場所に

 すればいい」


 


沈黙。


 


理解されて

いない

沈黙。


 


それでも、

ラストは

続けた。


 


「魔物が

 来る理由は、

 水と

 草だ」


 


「奪うから

 争う」


 


「だったら、

 境界の

 外に

 流れを

 作ればいい」


 


誰かが

鼻で

笑った。


 


「そんな

 ことで――」


 


その言葉は、

途中で

止まった。


 


風が、

変わった。


 


乾いていた

土地の

端に、

水が

滲む。


 


ラストは、

何も

していない。


 


ただ、

「そうあるべきだ」と

思った

だけだ。


 


水晶板が、

震える。


 


表示が

消える。


 


数字も、

枠も、

なくなる。


 


【最終確認】

あなたは、

自らの

行動を

価値ある

変化だったと

認めますか


 


逃げ場は、

完全に

消えた。


 


心臓が、

うるさい。


 


――認めたら、

 壊れる。


 


――否定したら、

 元に

 戻れる。


 


戻れる?


 


本当に?


 


害獣の

夜。


少女の

泣き声。


沈黙した

境界。


 


全部、

「なかったこと」に

できるのか。


 


ラストは、

震える

息を

吐いた。


 


「……価値は

 あった」


 


声が、

小さい。


 


それでも、

続けた。


 


「誰にも

 褒められなくても」


 


「数字が

 上がらなくても」


 


「間違いじゃ

 なかった」


 


世界が、

止まった。


 


完全な

静寂。


 


水晶板が、

砕ける。


 


音は、

しない。


 


代わりに、

“理解”が

流れ込む。


 


――変えた。


 


――壊さずに、

 繋いだ。


 


――選択肢を

 増やした。


 


胸の

奥で、

何かが

ほどけた。


 


怖さが、

消えない

まま。


 


それでも、

肯定した。


 


空に、

光が

走る。


 


世界の

深部で、

管理という

枠が

音を立てて

外れる。


 


誰かが、

呟いた。


 


「……何か

 始まった」


 


ラストは、

空を

見上げる。


 


涙が

出ている

ことに、

少し

遅れて

気づいた。


 


「……やっと

 言えた」


 


世界は、

まだ

応えていない。


 


だが。


 


もう、

拒んでいない。


 


――次の瞬間、

 数字が

 意味を

 変える。


 


それを、

彼だけが

知っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る