第2話

 俺はステータス画面を表示させて確認する。


――――――――

・治癒魔法〈リペア・エボルヴ〉


Lv1. 傷を止血する。

Lv2. *********

――――――――


 やはりレベル2というものが存在する。

 このレベル2の能力がどんなものかはまだ明かされていない。

 だが、レベルは上げた方がいいよなぁ……。


 俺は家のベッドの上で丸まるように眠っている少女の姿を盗み見る。

 手足の欠損。

 これを何とか治してやりたいところだが。

 少なくとも今の自分には無理。

 レベルが上がったからといって直せる保証もない。


 が、一縷の望みがあるとすれば、やはりレベルアップによる新たな効果の獲得だろう。

 それで失った部位を取り戻すことが出来るようになれば、この子もまともに生きられる。


 しかし、一番の問題は――


「レベルの上げ方が分からないってところなんだよな」


 そう。

 このスキルのレベルの上げ方が分からない。


 敵を倒せば良いのか。

 それとも止血を続けていればいいのか。


 どうすればレベルが上がるのか、分からない。

 それが一番の問題だった。


 もし敵を倒してレベルを上げるのであれば、それ相応のリスクが伴う。

 魔獣は強い。

 とんでもなく。

 俺が一人で戦いに行っても間違いなく瞬殺されるだろう。


 もし、レベルアップが止血を続けることであれば、このまま続けていればいい。

 ただ、既にもう何百人もの人間の止血を行っている。

 レベル1から2に上がるのに、そんなに苦労するものなのだろうか。

 少し怪しい。

 普通ならレベルアップしていてもおかしくない人数の止血は行っているはずだった。


 ってことは、やはり魔獣を倒す必要があるのか。


 戦えるのか、俺に?


 ……怖い。

 まだ死にたくない。

 痛いのも嫌だ。


 と、その時だった。


 もぞもぞと少女が目を覚ましたみたいだった。


「んんっ……」


 大きな瞳が開かれる。

 そのまま上半身を起こそうとして――


 ガッシャン!


 体勢を崩してベッドから転げ落ちそうになってしまった。


「ちょ……! あっ、あぶねぇ……!」


 なんとかギリギリのところで俺は少女の身体を抱き留める。

 軽い身体だ。

 危なかった。

 これでベッドから落ちて怪我をしていたら、俺は後悔してもしきれない。


「大丈夫か?」

「……ありがと」


 俺の問いに感謝の言葉を返してくる少女。

 その表情はどこか申し訳なさげだった。


「いや、無事なら良いんだ」


 俺はいうと、再び少女をベッドに寝かせた。


 ……やっぱりここはリスクを背負ってでも魔獣を倒しに行くべきだ。

 レベルが上がらなければこの子はずっとこのままになってしまう。

 少しでも治せる可能性があるのなら、俺は魔獣を倒しに行くべきだろう。


「なあ」

「……なに?」

「名前、なんていうんだ?」


 俺の問いに少女は少し考えた。

 それから首を横に振った。


「無いって事か?」

「……言いたくない」

「どうして?」

「好きじゃない、自分の名前」


 そうか……。


 やはり何かしら深い事情があるみたいだった。

 両親は死んでいるわけではなく、捨てられたとかなのだろうか?

 で、そんな両親につけられた名前が好きじゃない、と。

 その可能性もあるなと俺は思った。


「でも呼び名がないのは不便だな」

「……つけて」

「え?」

「名前。つけて」


 俺がか?

 う~ん、人の名前なんてつけたことないが……。


 やっぱりここは異世界っぽい名前がいいか?

 いや、俺の前世の、和風っぽい名前をあえて付けるのもありか。


 俺はしばらく悩んだ挙げ句、この名前をつけることにした。


「ツムギ。お前の名前は今日からツムギだ」

「ツムギ……」

「……気に入らないか?」


 俺が少し不安になって尋ねると、少女――ツムギは大声を出した。


「そんなことないッ!」

「そ、そうか……」

「この名前がいい。この名前じゃなきゃだめ……」

「じゃあ、今日からお前はツムギだ。……よろしくな、ツムギ」

「うん、よろしく。……ええと」

「俺はジン。ただのジンだ」


 そう言うと、ツムギは少しだけ恥ずかしそうにはにかんで、噛み締めるように言った。


「ジン、ジン……。よろしく、ジン」


 俺は何だか家族が出来たような気持ちになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る