参環

私「え、神様そんなかっこよかったんですか? ︎︎どタイプなんですけど」


私が両手で自分の口を覆えば神様は「なるほど。人間には世界がこんな風に映っているのか」とひとりでにつぶやいた。

そうして簡単に辺りを見回すと私の方に向き直った。


神「本来人の前に姿を見せる時は親しみやすい小動物などの姿にするんだが、今回は君の好みに合わせたからな」


神様は質問に答えると私から視線を外し、不思議そうに自分のてのひらを見つめてグーとパーを繰り返す。


私「わお、ありがとうございます。どうして私に合わせてくださったんですか? ︎︎それと私神様に好みの話なんてしましたっけ?」

神「君は質問が多いな」

私「あ。すみません」


(これ悪い癖かもなあ)


申し訳ない気持ちで神様を見ていると神様は横目でちらりと私を見てふっと笑った。

それから手のひらを空に向けて観察しつつ口を開いた。


神「構わない。1つずつ答えよう。まず、人の形を選んだのは人の視点で人の世を識りたくてだ。それから君のことを識るには君に好感を持ってもらえる姿がよいと判断した」


神様はそう言いながら視線の端で捉えた鳥を眺め始める。


私「意外です。一瞬でそこまで考えちゃうくらい人が好きそうなのに今まで人の姿になったことがないだなんて」

神「今までの環境で事足りると思っていたからな」

私「今は違うんですか?」

神「ああ。今はもっと⋯⋯」


言葉の途中で鳥の姿が見えなくなると神様は私に視線を戻して「深く識りたい」と真剣な声で告げた。


(うわ⋯⋯)


神「なんだ」

私「そんな表情かおでそういうことを言われるとファンサみたいだなと⋯⋯。うっかりときめきそうでした」

神「アイドルになった覚えはないのだが」

私「あはは! ︎︎アイドルなんて言葉どこで覚えたんですか?」

神「参拝客からか年に二度ある神の集まりだろうな」

私「へえ。そんな集まりがあるんですね」

神「ああ。⋯⋯と、それで思い出した」

私「何をですか?」

神「さっきの君の好みに関しての話だ」

私「ああ」


ぽんと手を叩くと私は笑った。


神「なんだ?」

私「なんでもないですよ。⋯⋯ふふっ」


(どんな会話も覚えてくれてるなんて愛情深い神様だなあ)


私は体に温かさが広がるのを感じながらもお礼を直接言葉にするのは照れくさく、心の中で感謝の気持ちをつぶやいた。


(ま、本人には言えないけど)


神「あー⋯⋯悪いが筒抜けだ」

私「え!?」


驚いて神様を見れば神様は気まずそうに眉尻を下げた。


神「君の心の声は君の会話をする意思とは関係なく私に流れ込んでくるんだ」

私「え。ということはもしかして私の好みがわかったのも⋯⋯」

神「ああ。君がアイドルを見ていた時にやたらと心の声がうるさい時があってな。それを参考にした」

私「なるほど……。私は今神様の集まりについて掘り下げたい気持ちと、心の声が常にダダ漏れになっている事実から目を背けたい気持ちでいっぱいです」

神「ははっ、こんな状況でも君は好奇心旺盛だな」

私「⋯…」


(わ⋯⋯笑った顔の破壊力すご……)


神「ほう。君の弱点を見つけたな」

私「心を読まないでください……」

神「諦めてくれ」

私「そんなあ」


情けない声を出せば神様は「あはは!」と豪快に笑った。

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