☆第一話 正人、なんか超人になる!☆
気が付いた正人は、仰向けで転がっていた。
「………病院…じゃないな…」
体も意識も、何とも心地良いスッキリとした感覚で満たされていて、ついでに視界を占める天上は青空だ。
「たしか、僕は…」
目覚める前の出来事が、ボンヤリとして思い出せず、しかし気持ちがサッパリとしている感じは爽快で、それはまるで。
「なんであれ、会社勤めから開放されたー、みたいな気分だ♪ …ん、なんだ?」
周囲を確かめようと身を起こそうとしたら、左側の半身が、なんだか重たい。
右手で触って確かめると、プニプニとした弾力があってスベスベで温かく、起伏に恵まれた柔肌らしき手触りがあった。
「んふん…もう、目覚めた途端に、えっちなんだから…♡」
左肩のあたりから、甘くて官能的な、うら若い女性の声がする。
正人が顔を向けると同時に、声の主も頭を上げた。
目が合うと、美しい女性の満たされた笑顔が、すぐ目の前。
緩いウェーブのツヤツヤ金髪も豊かな美女は、小顔の中に目鼻立ちが、超絶バランスで整っている。
大きくて蒼い瞳や細くて高い鼻筋、ポッテリとした艶めく脣など、微笑んでいるだけで男性の心を鷲掴みに魅了してしまう程だ。
「………」
自分の隣で、身を預けて微笑む美女。
認識が追いつけず、ボンヤリと目を奪われている正人に対し、美女が気怠げに身を起こすと、一糸まとわぬ裸身であった。
白い肌は一点のくすみも無くツヤツヤで、細い首からなだらかな細い肩、頭部と同じほどに大きな双乳や括れたウエストなど、見ただけで男性の繁殖欲を暴走させそうな程の美体である。
しかも肌触りはツルツルすべすべで、甘くて爽やかで優しい良い香りもした。
「んふ…♡」
「っ――っぅうわぁぁぁああああああああああっ!」
見知らぬ裸の美女の添い寝という、想像した事も無い光景に、戻った認識がパニックを起こす。
「っすすすっ――すいませんでしたぁっ!」
秒で飛び起きた正人は、一瞬で正座姿勢になって土下座をしながら、必死の謝罪。
これは男性の本能と言えるだろう。
対して美女は、そんな正人の様子に、楽しそうな笑みで返した。
「ぁら、スミマセンだなんてぇ…私とは、遊びだったのかしら…?」
「ぇっ、えっ、ぃぇあのっ! なななっ、なんと言いますかっ――昨夜? の事はっ、そのっ…僕はっ、何も覚えておらず…っ!」
額を擦り付けながらの弁解に、身を起こすヌードの美女は、やはり楽しそうだ。
「ひどいわ…昨夜はあんなに、激しくシてくれたのに…♪」
「っ――っや、やっぱり…僕は、やらかしたんですか…っ?」
思わず問うたら、美女は「これ以上からかうのは可愛そう」とか感じたのだろう。
「うふふ…♡ な~んて♪ 覚えて無くて、当然だわよ~♪ だって正人クン、死んじゃったんだもの~♪」
と、イタズラを謝罪するような困り眉の美顔も輝いて、正人は美女の言葉を認識するのが、また遅れる。
「………え、死んだ? そ、それは…僕のこと、ですか…?」
呆けた感じな正人の問いに、美女は美しい笑顔のまま、こくんと頷いた。
「………死んだ…」
言われて、周囲を見ると病院ではなく、雲の上。
しかも人間とは思えない程の官能美女が、自分の目の前で気怠げに微笑んでいる。
想像される限りで言えば、間違いなく。
「…では、ここは天国…なのですか?」
可能性としては、美女は女神様だろうなので、正人は緊張感とは別に、敬語となった。
「うふふ♪ 天国ってぇ、私の美しさへの 賞賛かしら?」
金髪美女は、また妖艶に嬉しそうに問い返しながら、細くてしなやかな指先で、正人の頬を優しく撫でる。
「だ、だってその…ぁなたのように、お美しい…女神様…ですよね…?」
裸身を隠さない美女から、どうしたって引き寄せられる目を必死に逸らしつつ、欲求を固く示す正座の股間を両掌で隠した。
無自覚に、なんだかスカスカする感触なのは、今の正人の存在が、魂に対する仮の肉体だからだろう。
正人自身には認識出来ないけれど、実は正人の身体は、現在は半透明な状態である。
「ぅふふ…あなたたち人類の概念で言えば、私は女神様って言っても、差し支えは無いわねぇ♪ でも正確に言ったら、ん~…ここは、あなたたちの言う 煉獄ね~♪」
「れんごく…」
死んだ魂があの世へ行く前の、禊をする場所だ。
「では…僕はこれから、天国へ行くか地獄へ堕ちるか…審判されるのですか…?」
出来れば、地獄へは行きたくない。
真顔な正人の問いに、女神様はまた、愛らしい美顔で考えて、教えてくれる。
「ん~…あなたたち人類の考える天国とか地獄~、っていう感じじゃあ、無いかな~♪」
「…?」
正人が要領を得ないと理解をしている為か、金髪グラマー裸女が、更に説明をくれた。
「あのねぇ♪ ドコの世界でもぉ、いわゆる現世って~、魂の修練の場なのね♪ いくつかの世界で修練を積んでぇ、徳を積んだ魂だけがね、あなたたちの言う、神様~! に、なれるわけ♪」
「…そう言えば、なんかそういう話を、子どもの頃に お寺さんで聞いたような…」
「うん♪ でね、現世での修練を終えた魂は~、神様になるか、新たな世界へ転生するかの、二択なワケね♪」
笑顔で言いながら、白魚のような指でVサインを見せてくれる、金髪を纏ったヌードの女神様。
「そ、そうなんですか…あ、それで、徳が足りないと地獄逝き。とか、なのですか?」
なら自分は、どうなのだろう。
「まぁ~♪ 人間の考える 天国も地獄もね、有って無いような感じ~、かしら?」
女神様曰く、現世とは様々なパラレル世界を指していて、いわゆる異世界という世界も、無限の現世の一つに過ぎないのだとか。
「だからね♪ あなたのいた世界よりも平和な世界は天国と言えるし~、苛烈な世界は地獄とも言える~。ワケなのよ~♪」
人間世界で伝えられている天国も地獄も、所謂パラレル異世界という事らしい。
「な、なるほど…。あ、それでその…僕は…」
どうなるのだろうか?
「うん♪ あなたはね、これまで すっごく~、徳を積んでいるのね? もう、私がドキドキしちゃうくらい♡ だからね、次の修練場へ行く際にね、あなたの根源的な願望、叶えちゃおぅかな~って?」
「こ、根源的なっ、願望…?」
まさか、転生した世界で小説家になれる。
(とか…っ?)
もしそうなら、モノ凄く、この上なく、泣く程に嬉しい。
はたして、女神様の答えは。
「うふふ♪ 不老不死はNGだけどぉ♪ 完全無敵の超人にぃ、し・て・あ・げ・る♡」
「ちょ、超人…? ぁ…」
女神様の両掌が正人の頬へと添えられ、青年の身体が優しく光り始めた。
魂が、中から強い力を溢れさせる感覚があって、正人は思わず自分の両掌を見る。
「…はい、OK~♡」
「ぉおお…っ!」
光が収まると、仮の肉体だった正人の魂は、本物たる身体の感触を得ていた。
自分の身体を新たに得られたと解り、そして気になる、今後に対する質問。
「えぇと…僕は、いわゆる 異世界へ転生…するのですか?」
「うん~♪ 生前の世界とは、また違う世界の方が、修練も楽しいでしょ~?」
女神様のお言葉によれば、全ての世界にとって、別世界は異世界である。
正人の生きていた現実世界も、異世界人からすれば当たり前に異世界であり、それは正人たちが認識をしている異世界の概念とは、何の違いも無いのだとか。
「あなたたちの世界にもね~、別の世界からの いわゆる転生者とか、普通にうじゃうじゃいるわよ~♪」
「そ、そうなんですかっ?」
特異な才能を発揮する人とか、その可能性が高いらしい。
「色んなスポーツのスター選手とか~、とんでもないヒット曲を送り出す人とか~、大発明をする人とか、ね♪」
「な、なるほど。そういう人たちって、異世界転生者かも知れないのですね…」
素直に納得の正人。
「そ、それで…僕はその、これから、どんな世界へ…?」
「超人のあなたが、大活躍~♪ 出来る世界~とか、素敵でしょう?」
「大活躍…僕が…誰かのために、ヒーローになれる…っ!」
そう認識をすると、確かに正人の根源的な願望であった。
超人となった自分の能力も、意識をしたら、自然と理解が出来てくる。
(こ、これは…)
限りなく高速で空を飛び、どんな攻撃も通じない防御力。
破壊出来ないモノなど無い程の攻撃力や、深海や大気圏外でも無呼吸で活動が可能。
更に、食物を摂取しなくても全く問題の無い生命力や、惑星の反対側へでも一瞬で出現できるテレポーテーション、等々の各種超能力。
全てに於いて、完全最強無敵の存在。
まさしく超人。
「ついでにね、目から色んなビームとかも、出るわよ~♪」
「そんなにですかっ!」
それはもう、正義の味方というより、破壊神っぽくもある。
「でも、あの…どうして、そんなに 良くしてくれるのですか…?」
「だってぇ~♪ あんなに激しく されちゃったもの~♡」
とか、美女は頬を染めて、裸身をクネクネさせたりした。
「え…そ、それはあの――ぅわぁああっ!」
いわゆる昨夜の出来事の真相を聞こうとした正人の身体が、足下からの光に包まれ、透明に変化をして何処かへと転送されて行く。
「それじゃあ、正人♡ 新しい世界を、タップリと楽しんでね~♪」
裸身の女神様による、微笑みながらの投げキッスを貰いつつ、超人となった正人は別なる世界へと送られた。
~第一話 終わり~
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