第32話 やっぱこれだね♨
多くの男子生徒を敵に回した日の放課後――
「御手洗君、一緒に帰ろう~」
「僕もご一緒するでござるよ」
「あたしも」
鈴木と太田は一緒に帰ることが多い。
駅前のファストフードで夜までだべってたりもする。
だが今日は、西園寺まで付いてくるという。
「あ、ああ。別に構わないけど……」
なんというか、張り詰めた空気を感じる。
「色々と話を聞かなきゃならないと思うんだ、ボクは」
「僕も聞きたいことがあるでござる」
「あたしも」
……でしょうね。
「で? アマ……大神さんたちは、どちらへ?」
教室を出てから、ピッタリと俺の後ろについてくる三人。
「ユウキがどんな所に住んでいるのか、見ておこうと思うての」
「俺ぁ暇だからよぉ」
「また
そういや、異ノ国観光の時、
これは……断りにくい。
「ったく……あんなボロアパート、見にきたって面白いもんなんかねぇーぞ。
……それと!」
「まさか、お前らまで付いてくるってんじゃねーだろうな!?」
「もちろん付いていくぜ!」
「御手洗の生き方を参考にさせてもらうって決めたんだ」
「この腕の借りは忘れねぇかんな」
面倒な連中に懐かれてしまったようだ。
「……あのな、こんな人数、入りきれねぇよ。床が抜けるって」
どうにか説得を試みたが、なし崩し的に俺の部屋へと向かうことになった。
◇
「汚い部屋だけど、どうぞ――」
玄関に靴が入りきらないので、男子の靴は廊下に追いやられた。
八畳一間に敷きっぱなしの布団をテキトーに畳んで隅に追いやる。
「お邪魔しまーす」
「想像以上に汚い部屋だなぁ」
「秘密のトレーニング器具とかあんだろ?」
「カビっぽいのぉ」
……やいのやいの……
床がミシミシと音を立てている。
「やっぱ、この人数は無理があるって……。
駅の向こうにカラオケルームとかあったよな」
「俺たちは立ったままでいいぜ」
「お前らはくつろいでくれ」
「押し入れん中も見せてみろよー」
部屋の隅で妙にお行儀よく立つ不良たち。
いや、ねじり鉢巻きは押し入れを物色しようとしている。
「まぁ、これはこれで良いではないか。こういうのに憧れておったのじゃ」
「殿方たちと密着してしまいますわね。
すかさず鈴木と太田が近くに陣取り、マシンガンのように話しかけている。
西園寺は、きょろきょろと様子を窺いつつ、俺の隣をキープ。
……ガヤガヤ、ガヤガヤ……
隣部屋の住人から苦情がこないか心配だ。
それ以上に、誰かが移動するたびに、床が悲鳴を上げるかのように軋んでいるのが気にかかる。
「さーてと、俺たちの再会と、ユウキの友人たちに、乾杯でもすっか!」
「てか、スーさんのそれ、酒じゃん!」
「「「さすが師匠だぜぇ」」」
「ガーッハッハッ! いいじゃねぇーか! 今はこんなナリしてっけども、
わかってんだろぉ~?」
そう言って、部屋のど真ん中に、ドスンと尻を下ろしてあぐらをかいた。
すると……
ミシ、ミシミシミシ――バキベキバキー★
やっぱりー!?
案の定、ボロアパートの床が抜け落ちたのだった――
◇
幸いにして、かすり傷程度で済んだ俺たちは、神楽丘学園まで戻ってきた。
そのまま学園の裏手へと向かう。
「工事は終わったのか?」
「ああ、バッチリよ! 驚くぜ~」
校舎の横を通り抜ける。
鬱蒼と生い茂る草の向こうに、旧校舎とは違う建物があった。
【 神 楽 の 湯 宿 】
「あ、ええーっ!?」
そこには、異ノ国で常宿にしていた神楽の湯宿があった。
「これ、え? 建てたの!?」
「どうだー! 良く出来てるだろう?
「えー! すごーい! 学校の裏に温泉宿が出来ちゃったの?」
「どういうこと!?」
「旧校舎、取り壊してたんじゃなかったのか!?」
みんな各々に驚き慄いている。
「……最初から、ここに来りゃよかったんじゃねーか?」
そうすりゃ、オンボロアパートの床をぶち抜くこともなかったのに……。
あの後始末、どーすりゃいいやら。
「まぁまぁ、過ぎたことは良いではないか。ささ、みなも上がってゆくがよいぞ」
わぁー☆と駆け込んでいく。
俺たちは大広間へと案内された。
そこには――
「あっれー? ユキりんじゃーん☆ やっぴー♪」
相変わらずのギャル神っぷり。
舞のリハーサルでもしていたようだ。
駆け寄ってきたギャル神さまは、俺の腕に抱き着く。
前がはだけて、ちぃパイが見え隠れしている。
「御手洗君……忘れてたけど、色々と話を聞かなきゃと思うんだ、ボクは」
「僕も聞きたいことがあるでござる」
「あたしも」
く……
助けを求めるように、
そこへ現れたのは、
「ユウキー! 来たなー♪ もうすぐ飯の時間だぞー!
みんなで喰う飯は旨いからなぁ」
ぎゅーっと抱き着いてくる。
まて。お前、そんなキャラだったか!? わざとやってないかー!?
「御手洗君ーっ! ボクはー(涙目)」
「僕もー(涙目)」
「あたしもー(涙目)」
なんだってんだー!!
「イ、イナリも、ウズメも、ちょっと離れよう。な?」
すると突然、部屋の明かりが消えた。
「きゃっ」
「あれ、停電?」
「どうしたでござる?」
パッ☆
スポットライトがステージを照らす。
そこに現れたのは――
巫女さん衣装を百倍豪華にしたような、それでいて薄手の生地。
もにょん♡と揺れる大きなお胸が、今にもはみ出しそうだ。
そしてチラりと覗く太もも。
「え? 大神さん? の、お姉さん? え?」
「
太陽を司り、
パアアァァ☆と、スポットライトよりも眩しい後光が差す。
そしてその横には、
どちらも、神スタイルだ。
なぜか不良三人組は
「俺は、戦の神。
「
「そして、そこにおるのは、我らと共に異ノ国を旅した男、ユウキである!」
カッと俺にもスポットライトが当たる。
俺もか!?
鈴木も太田も、西園寺も、ぽっかーんとして、理解が追いつかない様子。
そりゃ、そうなるよな。
「募る話は、食事をしながらということで」
三頭身の黒子たちがわらわらとお膳を運び込んでくる。
まるでアニメの世界に迷い込んだかのようだ。
部屋の隅で黒子たちに指示を出しているおばちゃんには見覚えがあった。
「あれれ? 売店のおばちゃん、だよね? どーしてここに」
「あら、あんた、いつもあんパン買ってくれてた少年じゃないか。
あたしゃ、ここで雇われたのさ。昼が売店、夜は湯宿ってね」
昼も夜も働いてるなんて、お疲れ様です。
お膳がずらりと並び、
そして、神々の宴席が始まった。
♨カポーン♨
鈴木と太田と並んで、湯に浸かる。
「いやー、まさか御手洗君がー」
「異ノ国でござるか……僕も行ってみたいでござるよぉー」
目の前では、
それを真似る不良三人組。
壁を隔てた向こう側から、西園寺たちの声が聞こえてくる。
『大神さん、その大きさは反則だよぉー。月読さんもぉー』
『おぬしだって、可愛らしいではないか。のぉ~月読よ』
『そうですわね。カタチは大切です。良いモノをお持ちですわよ』
『きゃ、ちょ、ちょっと、揉まないでよぉー』
『マナっち、腰のくびれから太ももにかけてのライン、まじいい感じ♡』
『ひゃ、あ……んっ♡』
……きゃーきゃー♡あははうふふ♡……
「御手洗君ー」
「なんだー」
「異世界では、混浴だったと聞いたでござるよ」
「ふふっそんなこともあったなー。遠い想い出さ……」
「兄ちゃんたちは、混浴が好きなのかー?」
「!? イナリ! お前、なんでこっち入ってんだよ!?」
「え? オイラは、どっちでも気にしないよぉー」
ざぱぁと立ち上がった
「御手洗君ー!!」
「御手洗氏ー!!」
「ほーっほっほっ。良きかな良きかな――」
♨カポーン♨
「まだ夢でも見てるみたいだ」
「一生忘れないでござるよ」
「また遊びにきても良いよね?」
「俺たちは修行つけてもらいにくるぜ!」
「おうよ!」
「みてろよー御手洗ー! 追いついてやっからなー!」
鈴木と太田と西園寺、それに不良三人組たちは、それぞれ自宅へと帰っていった。
俺はといえば、床が抜けたアパートでは暮らせないので、当面ここで寝泊まりすることになった。
温泉に、神様に、騒がしい仲間たち。
俺の学園ライフは文字通り、神がかったものになっていく運命らしい――
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