第25話 久しぶりだね♨
「金貨九百枚、確かに頂戴しました」
「天照さまー♡ まじ感謝っす!」
「俺やユウキにも感謝しろよ」
「ちょすちょす♪」
ヒドラ討伐の報酬は破格だった。
街を救った英雄として、惜しみなく支払われた。
ツケを清算してもまだ、金貨百枚以上が手元に残った。
「感謝といえばさ、不滅の魔法少女にも協力してもらったよね」
「あー、そういやそうだったな! あの娘も強かったなー。
姉者と似たような光の術を使っててな」
「おぬしら、あれに
「いや? 突然現れて、ヒドラ倒したと思ったら、すぐまたどっか飛んでっちゃったから」
「ふふっ。元気だったんじゃな。それにしても、急かしい娘じゃ」
……知り合い、なわけはないよな。
いや、もしかしたら……
以前、
ようやく帰ってきたと思ったら、たしか『時間軸がひねくれていて』とか言っていたな。
その時にでも、会っていたのかもしれない。
それよりも、天岩戸神話のことや、
聞きたいことは色々ある。
けど……天岩戸は『黒歴史みてぇなもん』と言っていたし、聞き難いよなぁ。
「さあ、この街ですべきことはもうないな? 神楽の湯宿へ戻るとしようぞ!」
「「「おおー!」」」
そうして、街の人々や冒険者たちに惜しまれながら、俺たちは帰路についた。
◇
「……で、どーして俺がアマテラの荷物も背負ってるんだよ」
ジャンケンで負けた、いつぞやのように俺は、
「良いではないか。『俺の女』なのであろう? 大事にせい」
「おまっ! それはっ!」
そんな俺たちの間に、
「天照さまばっかり、ズールーいー! あたしの荷物も持ってよー」
その後ろで、
「ウズメ! 俺様が持ってやっても良いぞ! 俺を頼れ!」
「ぇぇー……汗臭くなりそう」
無邪気に跳ね回る
なんとも平和な光景だ。
軽口と笑い声。
揺れる草原。
遠くに見える山並み。
どこまでも広がる青い空。
これは異世界の冒険ではなく、まさしく、異ノ国の観光だ。
この時の俺は、呑気にそんなことを思って、景色と
◇
「え、待って!? 天照さまっ、こんなヤバい宿、常宿にしてたの~!
マジアガるわ~!」
神楽の湯宿、到着。
『帰ってきた』感が半端ない。
「おかえりなさいませ!」
宿の主人が笑顔で迎えてくれる。
「またしばらくお世話になるっす!
モブ神……いや、他の仲間たちは大人しくしてたかな?」
「ええ、ええ、そりゃあもう。ただ――お宿代のほうが、少しばかり溜まっておりまして、できればそのぉ、一旦清算していただけると助かるのですがぁ」
「あ~、もちろんです。すんませんねぇ。おいくらになります?」
「結構な額いっちゃってますよ?」
「大丈夫っす。たんまり稼いできたんで」
金貨がぎっしり詰まった袋を取り出した。
「それはそれは、助かります! ええーと、少々お待ちを……」
カウンターの向こうでパチパチとソロバンを弾くような音が聞こえる。
「お待たせしました。こちら、明細になります」
受け取った数枚の紙に目を通すと、食事と酒代が延々と続いている。
そして最後に記された請求金額を見て、ちょっと青ざめた。
「……これ、金貨と銀貨、間違えてたりは……」
「ええ、ええ。金貨で間違いありません」
宿の主人はやんわりと笑顔を浮かべながら答えた。
「で、ですよねぇ~」
ギリギリだった。
今夜の宿代も前払いして、残ったのは銀貨が数枚のみだった。
「まいどありがとうございます~」
湯宿に残していったモブ神様たちは大人しくて控え目な神様ばかりだったはずだ。
その時、奥の娯楽室から何やら楽しげな声が聞こえてきた。
「ロン! ロンじゃ! またわしの勝ちじゃな!」
「ちょっと待ちんしゃいよぉ、タカさん~それをカンしてツモるつもりじゃったのにぃ……」
「あーっはっはっ、甘いのぉ、カミさん!」
娯楽室を覗くと、
一緒に卓を囲む老人たちが口角泡を飛ばしつつ麻雀を打っている。
「あ、天之爺さん……そちらの方々は?」
恐る恐る、訪ねてみた。
「おぉ、ユウキ殿、帰りなさったか。いやー、いつの間にか集まってきてのぉ。
あっちが、
お、覚えきれん……。
しかし、あの請求明細の膨大な量と額の理由は、容易に想像がついた。
「あ、あんたら……。この数日で……どんだけ豪遊しとんじゃ!」
「ほぅ~ほっほっ。歳をとるとのぉ~楽しみといったら、食うか呑むかくらいのもんじゃ~」
「い~っひっひっ。そうじゃのぉ~。しかし、儂ぁ~まだまだいけるぞぉ~?」
「タカミの爺ぃはいつまでもそげなこと言ってからに、どれ、見せてみぃ~?」
あはは、いひひ、と盛り上がる老人たち。
ダメだ。こういう輩には、何を言っても通じない。
「支払い、ご苦労じゃったな、ユウキ。
さぁて、久しぶりに温泉にでも浸かろうかのぉ~」
そ、そうだ!
ここでの楽しみは、上手い飯と混浴の露天風呂なのだ♨
「そ、そうだな。俺もひとっ風呂浴びようかなぁ~」
そうして俺は、期待に膨らむ胸の高鳴りを隠しつつ、
老人たちに専有された娯楽室を後にした。
♨カポ~ン♨
沈みかけた夕日が、空を真っ赤に染めている。
立ち込める湯気と、肌を撫でる暖かな風が心地よい。
「はぁぁああ~、やっぱここは、良い湯だなぁぁああ~~」
「ガーッハッハッ! 久しいな~!」
大量の湯が波打って俺を飲み込む。
「げほっ! だーかーらー! 静かに入れって! げほっげほっ」
脱衣所から、
「やっぱ肌綺麗っすねぇ~天照さま~♡ ほら、早く早くっ♪」
そして、颯爽と現れた
時が止まったかのような沈黙――
・
・
・
そして時は動き出す。
「うっっぎゃ~!!! ちょま~っ!!!
え? なんで!? どーして男子が一緒なの!」
は?
普段はあられもなくちいパイを晒している
「混浴とか聞いてないしー! マジありえないっしょー!」
え? え?
そして、脱衣所へと走り去っていった。
『混浴とかマジ無理無理ー!』とか、騒ぎ立てる声が聞こえてきた。
「そうか? 気にしたことは無かったのじゃが、ウズメがそこまで言うのならば、少し時間をずらすとするかのぉ~」
「そんじゃ、オイラもあとでいいやっ♪」
ええーっ!?
「ひゃ~っひゃっひゃっ。若い女子たちと混浴できず、残念じゃったのぉ~」
スイーっと現れたのは、さっきまで娯楽室にいた老人の一人だった。
「む……な、なに言ってんだか。つーか爺さん、娯楽室で麻雀やってたんじゃ?」
「な~に。若い男と混浴しとぉ~てのぉ~。あ~儂ぁ、
うげっ……。
確かに、ちょーっと乳が垂れてるなーと思っていたが……。
もう、色々ガッカリだよ。
ぶくぶくぶくぶく…………
♨カポ~ン♨
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