第21話 神を纏いて
「聞いたか、ユウキ! 大物が出たらしいぞ!」
街の騒ぎを聞いた
「三つ首のヒドラか。強ぇんだよな? な! 腕が鳴るぜぇ~!!」
「ちょい落ち着けよ、スーさん。
まずは詳しい話を聞かなきゃ。冒険者ギルドに行ってみよう」
「ウズメは、イナリとフータを探して連れてきてくれないか?」
「オケオケ♪」
俺たちも冒険者ギルドに向かう。
ヒドラか……。
街中が恐怖に慄き騒然となっている中、俺の中に不安は無かった。
魔獣とは比べ物にならない怪物らしいが、
大丈夫――神々が瞬殺してくれる。
俺の出る幕は、ない。
分かってはいる。けど、少しだけ、
寂しいような、
悔しいような、
そんな気持ちが渦を巻いていた。
――俺は、一緒に戦いたいのか?
◇
「今、ヒドラ相手に戦えそうなのは、あなた方しかいないのですぅ!」
涙目で訴えかけてくる冒険者ギルドの受付嬢。
今、この街にいる冒険者は、ほぼCランク。
ヒドラは首の数によって討伐ランクに差があって、三つ首はSランクが三人以上で挑むレベルということだ。
「ふむ。問題はあるまい」
「へへっ。三つ首だって? こちとら八つ首を相手にしたことだってあんだぜ?」
そういえば、
オロオロする受付嬢に向かって、俺は努めて平然と語りかけた。
「俺たちなら大丈夫。なんとかできるっすよ。で、目撃された場所は?」
「あ、はい。半日ほどの距離に渓谷があるのですが、一体目はそこで……」
「一体目? 何体出たんだ?」
「目撃されたのは、もう一体……渓谷とは真逆の湖です」
なんてこった。
まぁ、何匹いようとも、ヒドラは問題なく倒せるだろうが、
渓谷と湖がどうなってしまうかって方が心配だ。
「どっちか、近い方から順に討伐していくか……」
すると受付嬢は慌てて首を振った。
「だだだダメですよ!
どちらかを刺激したら、もう一体がそちらに向かうに決まってます!」
この慌てようからすると、ヒドラの習性をよく知っているってとこか。
「えー、じゃあ、街に向かってくるのを待って迎え撃つ――のも厳しいか」
大きな街だ。両端から攻め込まれては、どちらか一方の対処が間に合わない。
「そうですよ。それに、放置しておくと近隣の村々への被害が……」
俺たちの中の主力はこの二柱だ。
じゃあ、俺も……
ドクン。
「ふむ。二手に分かれるしかないようじゃの。ユウキよ」
ドクン。
「ようし! 俺とユウキが渓谷で、姉者は湖だな!」
ドクン。
ドクンッ!
「ユウキ、やれるな?」
「ぁぁ、ああっ! もちろんだ!」
俺と
「フータ! あれを披露するときがきたようだな!」
「ええー、またあれやるのかー。腹減るんだよなー」
「……帰ったら、たらふくご馳走にありつけるって」
「なにをやるってんだ?」
「ふっふっふっ。
アブラーゲ事件のときに、俺たちが編み出した凄い技があるのさ。
さあこい! フータ!」
「ここでかよー」
外見的な変化は無いが、ぶわっと周囲に風が広がった。
そして俺の中には凄まじい力がみなぎっている。
「お、お前ぇ、それ……」
「
ふふっ、思ったとおり驚いてい……え? かむい……なんて?
「
「(そうだよ。ずーっと昔、この技を編み出した神がいたんだ)」
頭の中から
「ガーッハッハッ! そうか! そうだよな! そうこなくちゃなっ!!
姉者、これでもう心配ないな?」
なんだろう、その表情は――
俺の成長を喜んでいる?
いや、もっとこう……懐かしいような、切ないような……
よく分からない。
分からないけど、今はいいや。
「それじゃ、さっさと片付けてこようぜ!」
「待つのじゃ! ユウキよ、コレを持つが良い」
俺は
「コレは?」
教科書か何かで見たことがあるカタチをした青銅色の質素な剣だった。
「
またの名を
――の、レプリカじゃ」
「な!? 三種の神器じゃん!
って、レプリカ? あ、模造品か。まあそうだよな」
「その腰に下げているナイフよりは、役に立つじゃろう」
俺は腰に視線を落とした。
……たしかに。
「湖の方は、
イナリとウズメは、街で待っておれ」
俺たちは、拳を突き合わせて視線を交わし、力強く頷いた。
そしてギルドの冒険者たちに見送られながら出立した。
北の湖へ向かって飛んでいく
神だから、空くらい飛べるのか。
しかし……
「ユウキ! お前ぇ! ズルいぞー!!」
ドスドスと重量感たっぷり地べたを走る
「スーさんは飛べないの?」
「神にだって、得手不得手ってのがあんだよ!!」
「じゃー、ちょっと先へ行って、様子見てくるよー」
「あ! こら! まちやがれー……」
高度を上げていく。
高く、高く――
空から見た異ノ国は、美しい緑の大地が、どこまでも続いていた。
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