第18話 不安でしかない
神楽の湯宿を出発してから二日後の夕方、俺たちは大きな街に辿り着いた。
この街に、はぐれてしまった神の一柱がいるのだとか――。
「ひゃ~、俺たちがホームにしている町とはえらい違いだなぁ」
「栄えてるねぇ」
「旨いもの、いっぱいありそうだなぁ」
「ここまで大きな街だと、探すのも一苦労じゃのぉ~」
「フフフ、たぎるぜぇ~」
それというのも、数日前のこと。
――――――――――
――――――
――
「
「どれだけの神様がはぐれてんだ?」
「あと、三~四柱ほどみたいじゃ。他は月読が見つけて、釣り上げてくれたので、すでに
釣り上げたって、言い方!
「ふ~ん。その街に行けば、すぐに会えるのか?」
影の薄いモブ神様だとしたら厄介だ。
「うむ。踊り子として目撃されておるので、恐らくは――」
そこで
「そりゃ~、ウズメだな!」
「ウズメ?」
「うむ。
「あいつの踊りは久しく見てねぇからな。早速、観に行こうぜ!」
ノリノリの
「迎えにじゃなくて、観になのかよ」
「どっちでも一緒だぜ。ユウキ、お前、観たくねぇのかぁ~? あのウズメの踊りだぞ?」
「ええーっと……有名な話だと、
確か、
「そうだぜ。
ウズメの踊りはお前、ただの踊りじゃねぇんだよ!
胸なんかもこう、ぷる~ん♡ぽよ~ん♡と、よぉ!」
急にエロオヤジと化す
「できることなら、関わりたくないのじゃがのぉー」
苦手なキャラなのだろうか。
よくわからないけど、その仕草が妙に乙女チックで可愛らしくも見えてしまう。
――
――――――
――――――――――
「あそこの人だかりじゃね?」
街を歩きだしてすぐ、広場を埋め尽くした男たちが、口笛をヒューヒューならして声援を送っているのが見えた。
「あー、そうだな。あれは確かに、ウズメの姉ちゃんだ。真ん中で踊ってるぞ」
「フータ、サンキュー! さて、この人だかりをどうするか――」
言いかけたとき、
「スーさん……エロオヤジ化してないか?」
『会いたくない』感がにじみ出ている気がする。
やっぱり、
やがて、男たちの壁がササ―っと割れる。
そして現れたのは――
「天照さまー♡ ちょすちょす♪」
は? ギャル?
露出度高すぎの衣装。いや、衣装というよりも、布切れを纏った肌黒のギャルが駆け寄ってきた。
そして俺たちは、ギャルを追ってきた男たちに取り囲まれる。
『ウズメちゃーん♡愛してるよー♡』『結婚してくれー♡』
『あれ? そっちのお姉さんもイイねー♡』
『ウズメちゃんのちぃパイも良いけど、お姉さんのばい~んも素敵♡』
『なになに!? デュオ結成?』
ギャルは親父たちに向かって笑顔で叫んだ。
「はいはーい、今日の野外はー、これで終了!
解散でヨロ~。またお店に来てね~♡」
愛の籠った声援を残しつつ、潮が引くようにはけてゆく男たち。
「おいコラーそこ! 追っかけは出禁だかんね。ガチで」
最後まで残っていたオッサンに、ちょっと凄むギャル。
そして、広場には俺たちと通行人だけが残った。
「天照さま♡ やっときてくれた~!
アタシのこと探してくれてたとか、ちょいアツいんだけど〜?
太陽神だけに? きゃはは☆ 上手い!」
な、なんなんだコイツは……。
俺はちょっと引き気味になって後ずさった。
「あっれれ~? そっちのキミ、案内役の男子くんっしょ?
なに急に下がってんの~? え、なに照れてんの?
カワイイ~♡ ウケるんですけど~♡」
グイグイくるギャルに、完全に押されてしまう。
「いや、えっと、ひとまず、落ち着け。ステイ、ステイ。
な? アマテラ(たすけてくれ~)」
今や俺の腕は、ギャルにがっちりホールドされている。
このギャルが踊りの女神だというのか?
布切れの隙間からは、もう見えてしまってるし。
生じゃん、コレ!?
俺は理性が暴発せぬよう、必死に堪えた。
こんなときは、円周率だ!
円周率を唱えて気持ちを落ち着かせるんだ!
3.14……3.14……えと、3.14……だめだ! その先が出てこねぇ!
「こ、これ、ウズメよ。案内役が困っているではないか。少し離れよ」
「あれれ? 天照さま? もしかしてだけどぉ~」
そう言いながら
「な、なんじゃ?」
「アタシ、こういうのには、ちょーっと敏感なんよねぇ~♡」
「なななな、なんのことじゃ? わわわ
急にうろたえだす
こんな
いったい、
俺は息をのんで次の言葉を待った。
「天照さま~♡ お腹、ぺこりんこっしょ~?
お昼抜いちゃってるよね? よね?」
「はぁあ? あ、あー、そうじゃな。お腹がぺこりん? そうじゃったわ。
さすがウズメじゃー。敏感じゃのぉー」
んん?
ほっとしたような
なんなんだ、いったい……。
「でしょ? でしょ? したっけさ~、アタシが泊まってる宿に行こ♪
レッツラ~」
独りで、勢いよく腕を振り上げる
なんかスベった空気に、むっとして俺を小突いてくる。
「言えよ! 『ゴー』だろ? こういう時は! ほら、レッツラー!」
「ご、ごー?」
「ギャハハ☆ ゴゴーってなんだよ。何号まであんだよ☆
レッツラ~ロクゴー! とか? ウケる~」
「…………」
こうして俺たちが案内されたのは、
「マスター、ちょりーっす♪ アタシのお仲間連れてきたよー」
「お帰りなさいませ、ウズメ様。
お連れ様方も、当宿にご宿泊でよろしいでしょうか?」
「天照さま、いいよね? 一緒に、ね? 男たちは安い部屋でいっしょ」
お金の持ち合わせは、金貨10枚ほど……足りるだろうか。
「(宿代は心配しなくていいから)」と、
それは助かる、と……安心しながら
しかし、俺の視線に気づいた
――その笑顔は、ひくひくと引きつっているようにも見えた。
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