第14話 衝撃の真実

♨カポ~ン♨



 激戦の疲れを癒す、憩いの時間。



 俺と須佐之男命すさのおのみことは、互いの力を認め合った戦友のように、共に湯に浸かっていた。


 そこへ、いつものように、稲荷神いなりのかみ風神かぜのかみたちもやってきた。


「ふぅ~。それにしても、ユウキ。思ったより早かったな」


「スーさんのお陰だよ。何だか、ほんの一瞬だけ、遠い昔の記憶が蘇った気がして……あの時の力を、思い通りに出せるようになれば俺は――」


 ぐぐっと握った拳を見つめた。

 あのとき聞こえた声は何だったのか。誰の声だったのか。


「まったくよぉ。俺の背中に土を付けたヤツなんざ、そういねぇんだぜ。

 やってくれたな!」


 そう言って須佐之男命すさのおのみことは、嬉しそうに湯を掻き回した。


「わっぶ! だからって暴れんなって!」


 今日の稲荷神いなりのかみは、風神かぜのかみと並んで大人しくぷっくらと湯に浮かんで漂っている。


「ほら、イナリとフータを見習えよ」


 尻尾を抱きかかえるようにして、湯に漂う稲荷神いなりのかみの様子を見ていると、ほっこりと心まで癒される気がする。


 清見温泉から帰ってから、天照大御神あまてらすおおみかみは入浴の時間をズラすようになっていた。


 正直、残念ではあるが、ゆったりと安心して湯に浸かれる。これも悪くない。


 そう、油断していた。


「ふむ……今日も良い湯加減じゃのぉ」


 ふいに聞こえた、その声にも、ぼんやりと普通に応えていた。


「あぁ、そうだなぁ……」


 ん?


 横を見ると、久々の『神の造形』が、そこにあった。


「……って、あれ! また!?」


 嬉しいと恥ずかしいが激しく交錯する。


「今宵、宿泊しているのは我ら一行のみじゃ。問題なかろうに?」


 あー、そういうことだったのか。

 他の宿泊客がいたから混浴を避けていたのか――って、それはどうでもいい!


「いやいやいやいや、そういう問題じゃなくて!」


「ふむ。ユウキよ。そなた、わらわを何だと思っておるのじゃ?」


 なんだ? この核心を射抜くような問い掛けは。

 まるで、両想いを期待している女が、男に向かって「ねぇ、あたしのこと、どう思ってるの?」とかなんとか言ってるヤツみたいじゃないか!?


「いや、何って……神様……だけど、女の人、で……ブクブクブクブク……」


「なるほどのぉ。と、いちいち大騒ぎするのであれば、ほれ。

 稲荷は良いのかえ?」


 は?


 何を言っているのか、意味がわからなかった。


 意味がわからないまま、湯船を漂う稲荷神いなりのかみを凝視する。


 話が聞こえていたのか、稲荷神いなりのかみはパシャパシャと泳いできて、

 俺の目の前で立ち上がった。


 はぁ!?


 ない……。

 あると思っていたあれが……ない!


「オイラ、これでも女神だよ?」


「ええぇぇぇ――――!?」


 思わず湯船から立ち上がる。

 確かに、改めて、わずかに膨らみかけた胸がある……が、やはり、下のほうにあれがない。


「そ、そんなに見つめるなよ。ユウキ……」


 もじもじっとして尻尾で大事なところを隠す稲荷神いなりのかみ


 これはこれで、破壊力がある。


「なんじゃ、ユウキよ。おぬし、そういうのもイケるのかの」


 天照大御神あまてらすおおみかみ稲荷神いなりのかみは、元気いっぱいの俺のあれに視線を落としていた。


 ――!?


 俺は大慌てて湯船に沈んだ。


「まあまあ、細かいことは気にしないでさ。

 オイラ、みんなと一緒に温泉入るの楽しくて好きだぞ!」


 そう言って、稲荷神いなりのかみはスイーっと泳いでいった。


「まさか、フータも……」


 プカプカ浮かぶ風神かぜのかみ

 そこには、ちいさなあれがちょこんと付いているのが見て取れた。


「なにジロジロ見てんだよ、ユウキ――」

「い、いや、気持ちよさそうだなぁと思って……」


 須佐之男命すさのおのみことは……確認するまでもあるまい。




 夜空を見上げると、今日も月のない空には、満天の星々が輝いていた。


 フッ……。


 俺の中の何かが吹っ切れた気がした。


 そうさ。あいつらは、神様なんだ。

 性的な目で見るほうがおかしいのさ。

 そう、女じゃあない。

 女じゃない。

 女じゃ……


 どれだけ自分を偽ろうとしても、俺のあれは鎮まることはなかった。



♨カポ~ン♨

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る