第10話 御神体
「あの小鬼、根ノ国の雑魚だよな?」
「根ノ国じゃ、こんなモノ落とさなかったぞ?」
「
なるほど。
異世界の怪物が落とすアイテムといえば定番だな。
「これは多分、魔石の類だよ。異世界あるあるだ。
何かの素材として使うか、売って金にする……ってとこかな」
「ほほぅ。さすが案内役じゃ」
ふふふ。
俺の知識が通じている。役に立っている感じが、ちょっと嬉しい。
「まぁ、こんな簡単に拾った魔石なら、たいした金にはならないだろうけどな。
持って帰ってギルドで鑑定してもらおう」
それにしても……
「スーさんが飛び出して行かなかったのは、ちょっと意外だったよ」
あれだけバトルを熱望していた
敵を見つけたなら、真っ先に突っ込んでいきそうなのに。
「んあ? お前、俺を何だと思ってんだ?
お前はあれか、蟻んこを見つけたら、目の色変えて踏みつけるのか?」
「…………」
「俺が求めてんのは、血沸き肉躍る壮絶バトルよ! 雑魚に用はねぇ」
オオカミの時は一方的に力をぶん回してたと思うが……今は黙っておこう。
「それに、」
「(天照の姉者は、小鬼ってのが大っ嫌いなんだ。視界に入ることすら許せないほどに。だから、下手に横から手を出すとあとが大変なんだよ)」
な、なるほど。神様もそういうのあるんだと納得した。
「さて、ユウキよ。ギルドの依頼は、ここの遺跡の調査じゃったな」
そうだそうだ。魔石の他にも何か――
すると、
「そうだ、こっちこっち!」
そう言って壁の一部を指差す
見ると、岩の壁に小さな扉が設置されていた。
“
「俺、コイツに誘われてここへ来たんだ」
「御神体、じゃな」
バラバラと、細かい金属片のようなパーツがこぼれ落ちた。
「え? ちょっと見せてくれ」
特徴的な金属のフレームとガラスの板。
間違いない。
スマートフォンだ。
「それ、スマホだよ。ほら、これと同じ」
俺は自分のスマートフォンを御神体の隣に並べて見せた。
同じ型のスマートフォンだ。
「なるほど……朽ちてはいるが、たしかに同じモノのようじゃの」
新しい型のスマートフォンなのに、どうすればこんな状態になるのだろうか。
オモテにあった社殿の朽ち方は、数十年……いや、下手をすれば百年近くは経っていそうだし。
「どうして、こんな場所にスマホが祀られていたんだろ」
すると、少し離れた場所から
「おーい、みんな。こっちに来ておくれよー」
何か見つけたようだ。
行ってみると、衣装箱のような
……開けたら煙が出てきて、全員老人にってオチじゃないよな?
「ユウキよ、開けてみるのじゃ」
あ、みんな、後ずさってってないか?
でもまあ、びびっても始まらない。
煙が込められているとは思えない。
俺はそっと覗き込みながら蓋をあけた。
学生服……ブレザーだ。
経年劣化でボロボロだったスマートフォンと違って、こちらは比較的状態は良い。
取り出して広げてみると、女物だった。
デザイン的には、俺の時代と似た雰囲気だ。
というか、似すぎてないか? 見覚えのあるエンブレムが刺繍されているし。
神楽丘学園 三年
「あっ、やっぱり! 俺が通ってる学校の生徒じゃん!?」
生年月日:慶平2年5月27日
「慶平って……いつ? 何て読むんだ? けいへい?」
混乱する俺の隣で、
「なるほどのぉ~。異ノ国。ここは時空がひねくれているようじゃ」
「時空が?」
「うむ。恐らく、その衣類は、あの御神体の持ち主のものじゃろう。
して、ユウキと同じ学園の生徒。
しかし見知らぬ元号ということは、生まれた年が遠い未来か、
もしくは平行世界かもしれぬが、そんな世界の存在は知らぬ。
ゆえに前者、未来から来たのであろう」
「つまり、大神薫子さんは、俺よりずっと未来の時代の神楽丘学園の生徒で、いわば後輩になるのか。
その彼女が、この異世界では数十年か、あるいは数百年も前に転移してきてた?」
「おそらくな。故郷を想って、オモテの社殿を建てたのかもしれぬ。ひとりでは無理な話じゃがな。原住民の協力があったか、もしくは他にも大勢で転移してきたのか、それとも……」
そのまま、元の世界に帰ることはなく、この世界のどこかで土に還ったのか……。
会ったこともない娘だけど、同じ学園ってだけで妙に親近感が湧いてしまい、
彼女がこの世界でどんな苦労をして、どんな最後を遂げたのか、
それを想うと、胸の奥がぎゅっと痛くなった。
「ここの調査は、もう良さそうじゃのう」
「そうだな。遺物は相当古い物だから、慎重に運ぼう」
そうして俺たちは、
◇
「こ、ここ、こ、これは! 物凄い大発見ですよぉーっ!!」
俺たちが持ち帰った遺物を鑑定していた受付嬢が叫び声を上げた。
遺物は例の『鑑定石さん』にかざしていたはずだが、
今日の石は興奮のあまり喋らないようだ。
「これは、伝説として語り継がれている“不滅の魔法少女”薫子様の、
私物ではありませんかぁあああ!?」
ん?
どっかで聞いたワードだな。
“不滅の魔女”……“不滅の魔法少女”……薫子様?
“薫子”って、学生証に書かれていた名前だ。
「“不滅の魔法少女”ってのは?」
「読んで字のごとく、不滅なんです。
不老不死にしてとてつもない魔力を持ち、
歴史上なんども世界の危機を救ってくださっている、
偉大な魔法少女なんですよぉおおお!」
えらいテンションだ。
俺は鑑定石さんを撫でまわしながら、石に向かって語り掛けた。
「で? この遺物は、どのくらいの値打ちがあるんだ?」
しばしの沈黙――。
【おいおい、値打ちなんて付けられるわけねぇだろ。
だいたい、それらは遺物じゃなくて私物だぜ?
薫子様の私物を勝手に持ち出して売買したとあっちゃ、お前……ヌっ殺されっぞ】
相変わらず口の悪い石だ。
「まてまて。ってことは、その薫子様ってのは、まだ生きてるのか?」
【あったりめぇだろ? “不滅の魔法少女”なんだからよぉ】
ええー……
《彼女がこの世界でどんな苦労をして、どんな最後を遂げたのか……》
あの時の、俺の胸の痛みを返してくれ。
【今はどこにおられるのかは、わからんがな。
世界がピンチになったら、きっと……】
「ふ~ん。まぁいいや。
調査のほうは完了したんだから、クエストの報酬は出るよな?」
そして受付嬢を威圧するように、俺の両隣で仁王立ち。
「も、もちろんですよ。報酬は弾ませて頂きます!
えーっと……あれがこうで、これがあーだから……
ざっと、金貨80枚になります!」
ギルド内が『おおー』とどよめく。
「良いではないか! これで当分の間、あの温泉宿に滞在できるな?」
「ああ、そうだな」
「よっしゃー!!」
「毎日旨いもん食えるのか!?」
「なんだよ、天照様たち、温泉宿に泊まってたのか?」
「ほーっほっほっ」
「ちなみに、この真っ赤な小石は、魔晶石ですね。
綺麗ですが、特に使い道は無いので、買い取りはしてないです」
「……ま、それはいいや」
他のモブ神様たちも、何枚かの金貨を稼いだみたいだし、
これからだ。
これから、始まるんだ。
異世界、異ノ国豪遊ツアーが!!
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