第4話 測定不能
――異ノ国の町――
俺たちが辿り着いた町は、お祭りのように賑わっていた。
広場には屋台が立ち並び、見慣れた食材から、見たこともない道具などが売られている。
どこを見ても、『和』の雰囲気に満ちていた。
「
「まずは食い物だよ! オイラお腹空いたぞ!」
「おい! 見たことのねぇ武器が並んでるぜ!」
好き勝手に動き出す神々。
「待て待て! だから、まずはお金が必要なんだって!」
やれやれ……神様と一緒に異世界へ来たっていうのに、
ここでもお金の心配をしなきゃならんとは。
俺の不運は、異世界でも絶好調らしい。
「むむぅー。では、どうすれば良いのじゃ?」
「異世界でお金を稼ぐといえば? そう! 冒険者登録だ。異世界の基本だ」
◇
俺たちは『冒険者ギルド』と書かれた大きな建物にたどり着いた。
見たことのない文字だが、意味だけは伝わってくる。
異世界あるあるの、便利なパターンだ。
分厚い木の扉を押し開けると、中は冒険者らしき屈強な人々で賑わっていた。
侍のような和風装備が多いが、中世風の甲冑や兜、
幅広の剣に両手斧と、いろんな世界観が入り乱れている。
……ざわざわ、ざわざわ……
冒険者たちの視線が、一斉にこちらへ向けられた。
どうやら俺たちは、入った瞬間から注目の的らしい。
チーン☆
「すみませーん、冒険者登録したいんですけどー」
カウンターで声をかけると、可愛い受付嬢が元気な笑顔で応じてくれた。
「はいはい! 新規登録ですね。では最初に、能力値測定から行います!」
「能力値測定、オッケー! そのパターンね」
俺は通ぶって軽快に話を進めた。
「何なのじゃ? 能力値測定とは」
後ろから顔を覗かせた
「潜在能力や魔力量などを測定して、ランクを決めるんですよ」
そう言って受付嬢は、棚から丸い石を取り出した。
「それでは順番に、こちらの鑑定石さんに手を置いてください」
鑑定石さん?
最初に測定を受けたのは
鑑定石さんに手を置いた瞬間、石は眩い光を放った。
【ォィォィ、オイオイーッ! どこの怪物が触ったかと思ったぜ!
力がありすぎて測定不能だっつーの! こいつぁたまげたぜ!】
ギルド内に響きわたる声に、冒険者たちはざわついた。
『あいつ、マジかよ。規格外じゃねぇか』
『あんな光、見たことねぇよ』
『バケモンじゃねぇか』
……ざわざわ……
石は光を放ち、声はさらに続けた。
【オメェ、めちゃくちゃ強ぇなぁ! Sランク認定だぜ!】
「ガハハハッ! 気に入ったぜ、石! お前、わかってんじゃねえか!」
石が……喋ってるのか?
続いて
すると今度は、まるで太陽のような輝きが石から溢れ出し、
周囲をさらにざわつかせた。
【うっひゃ――――! ぶったまげたぜ! またまた計測不能!
まるで太陽だな! さっきのヤツの比じゃねえや!
いやいや、女神サマと呼ばせてくださいませ!
当然Sランクでございます!】
「当然じゃ。石よ、
次は、尻尾を振り回して待ち構えていた
【おやおや、お前さんはノリは軽いが、敏捷性が計測不能レベルだぜ!
その耳と尻尾もポイント高し!
よぉしよし、Sランク、あげちゃう!】
石が上から目線で評価するたびに、
「おっ、わかってるじゃん! オイラの良いとこ!」
……あの石、能力を見るって言っていたけど、容姿も見えてるのか?
他の神々も同じく測定不能な結果を叩き出し、
Sランク認定を受けては、ギルド内を騒然とさせた。
影が薄くても、神なだけはある。
そして最後に俺の番が回ってきた。
周囲を取り囲むように集まった冒険者たちは、
次はどんな規格外が見れるのかと、期待に目を輝かせている。
「(俺は凡人だけど、異世界に転移してきたんだし……
何かしらのチート能力があってもおかしくないだろう)」
深呼吸してから、そっと手を乗せた。
「(さあ、輝け! 石よ!)」
……しーん。
何の反応もない石を見て、受付嬢は首を傾げた。
「あの、もう一度お願いします」
再度、手を置くが石は無反応。
両手を置いたり、さすったりしてみる。
【おいおいおい、おいっ!
オメェ本当に生きてんのかよ?
冒険者やろうってヤツの数値じゃねーぞ!
低すぎて計測不能だっつーの……
特に『運の値』……マイナス値なんて、初めて見たぜぇ】
「低すぎて……計測不能。マイナス値!?」
俺は両手を石に添えて項垂れた。
【さっさと手をどけやがれ!
なんべん測っても結果は変わらねえよ!
オメェは最低のGランクだぜ】
石が露骨に人を馬鹿にしたように言い放つ。
いや、これ喋ってるのは……
「……あの、さっきから喋ってるのって、この石じゃなくて、
お姉さんですよね? 腹話術みたいに……」
受付嬢は一瞬だけ目を泳がせた。
そしてすぐに満面の笑顔を作る。
「な、何を仰いますか? そんなことありませんのよぉ~。
これは意思を持った鑑定石さんなのですから。オホホホホ」
【そうだぜ!
ふざけたこと抜かしてっと……あれだ。
オメェの運をさらにブチ下げてやんぞっ!】
「いやいや、そんな無茶苦茶な……」
【やんのか!? コラァ!】
石と受付嬢を交互に見て、さらに問い詰めようとするが、
周囲の冒険者たちの視線が痛く、結局それ以上言えなかった。
「つまり、今のユウキは凡人以下ということじゃな」
異世界転移したのにチート無双はないらしい。
「はぁ……まぁ、なるようにしかならない、か」
Sランクの神様たちが一緒なんだから、危険な目に遭うこともないだろう。
気持ちを切り替えて、前向きに行こう。
そうだ。
今の俺には、伸びしろしかないのだ。
そう思うことにした。
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