第2話 旅立ち
「さてと、我らの準備はとうに整っておる。
早速出立するとしようぞ」
「お、おい、俺の準備はどうなる?」
「はて、おぬし、何を準備するのじゃ?」
「え、っと………………心の準備、とか?」
「さて、皆のもの、出立じゃー!!」
「よっしゃー! 久々に暴れてやんぜー!!」
「美肌……温泉……食事……絶景……」
「旨いもの食べ歩くぞ!」
……やいのやいの……
気合たっぷりに雄叫びを上げる
狐のような耳と大きな尻尾の少年? は飛び上がってはしゃぐ。
その他大勢の神様たちも大いに盛り上がっている。
そして、眩しい光に包まれ、ふわりと体が宙に浮かんだ――――
◇
ドサリと地面に叩きつけられた。
「あだっ!」
目を開けると、そこには草原だった。
サワサワと風にそよぐ草原が広がっている。
どこからともなく聞こえる鳥のさえずり。
ほどよく暖かい風が吹き抜け、
空は雲一つなく、どこまでも青い。
思わず深呼吸する。
湿った土と、草の青い匂いが心地よい。
遠くには町らしき建物の連なりが小さく見える。
瓦の屋根と茅葺屋根だろうか。
「……ここが、異世界……異ノ国なのか?」
大昔の日本へタイムスリップしたようにも思える。
「ふむ、なかなか良い所ではないか」
振り返ると、
さっきとは違う控えめな衣装を纏っている。
白と朱色を基調とした巫女服っぽい衣装には、
金色の装飾が散りばめられていた。
胸元が強調されているのは相変わらずだ。
チラリと覗く太ももと合わせて高得点を叩き出している。
「お前、その格好で旅するつもりなのか?」
「そうじゃ? 何か問題でも?」
「いや……問題は……ない」
むしろ『ありがとう』と言いたい!
周りを見渡すと、
肩当て付きの甲冑に、膝丈の防具が付いたスカート風の装い。
そしてノースリーブのレザーチュニックから覗く猛々しい筋肉。
背中には大剣を背負い、頭にはシンプルなバンダナ。
なんとも野性味あふれる姿――
「……まるで山賊だな」
その時、不意に後ろから声をかけられた。
「なぁなぁ、オイラは? オイラはどうだい?」
振り向くと、白と紺色を基調とした狩人風の服装を纏った少年。
真っ白なショートヘアーに狐の耳。
背後の大きな尻尾は、日の光を受けて輝いている。
「えっと……キミは、何神様だろ?」
「オイラ、
「……カッコいいっていうか、可愛いっていうか」
思わず呟くと、
「だろ? だろ?! も~っと褒めてもいいんだぜ!
っていうか、ユウキだけそのままなんだな」
そう言われて、自分の服装に目を落とす。
学園のブレザー姿。靴は革靴。
とても冒険に出るような格好ではない。
早々に装備を買い揃えなくては。
買い揃えるといえば、そうだ。先立つモノ(お金)が無い。
異世界旅行を計画したのは、
神様だというし、旅の資金はたんまり持ってきているだろう。
必要経費として、どうにかしてもらうとしよう。
早速、相談しようとしたところ、
「ふむ……これは、どうしたことじゃろう」
彼女につられて周囲を見渡してみる――
「あれ?」
あんなに大勢いた神様たちの姿はなく、
「もっと大勢いたはずなのに……他の神様たちはどこへ行ったんだ?」
「わからん。初めての異ノ国転移ゆえ、少々手違いがあったようじゃな。
しかし、案内役のそなたが共におるのだ。問題はなかろう」
「何度も言うが、俺はこんな世界、詳しくはないからな」
そんな俺の呟きには耳を貸さず、
「まあいいじゃねえか! この旅を楽しもうぜ!」
「オイラもワクワクするなあ!」
見たことのない、うっすら青く光る、不気味なキノコ……。
やっぱり、ここは異世界なのだろう。
「よし、ユウキ! まずは宿じゃ! 豪華な温泉宿が良いぞ! 案内せい」
「いやいや、まずは飯でしょ! この世界にどんな珍味があるのか、早く探しに行こうよ!」
「お前ぇら何言ってやがんだ! まずは壮絶バトルだろうがよ! 敵はどこだー!! ユウキ! 案内しろー!!」
……口々に言いたい放題だ……
「ちょ、待て待て!
えっと……異世界……異ノ国? もう面倒だ。どっちでもいいや。
異世界だろうが海外だろうが、旅に欠かせないのは、お金だ!
この世界のお金は持ってるのか?」
「お金、とな?
案内役なのだから、お主が用意すべきであろう」
組んだ腕に、たゆん♡と乗る豊満な胸から目が離せない。
「んなっ……」
開いた口が塞がらないとはこのことか。
理不尽極まりないことを言われているのに、なんなんだ、この敗北感は。
「財布なら、
そう言いながら、
そういえば、雲の上では、
だが、それらしい姿は見当たらない。
はぐれた――ってことか。
この、どことも知れない異世界で、バラバラに……。
「つまり、俺たちは今、一文無しで知らない世界にいる、と……」
神々とのぶらり旅。
連日連夜、大盤振る舞いの宴席で盛り上がる――。
そんな日々を夢見ていた時期が、俺にもありました……。
「と、とにかく、まずは町を目指そう。
人が居る場所へ行けば、何かがどうにかなるかもしれない」
遠くに見える町を指差した。
「うむ。さすが
「旨い飯あるかなぁ」
「物の怪、モンスター、盗賊でも何でもいい! 早く戦わせろ!」
とか何とか言いながら、俺たち一行は異世界、異ノ国で最初の町へ向かって歩き出した。
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