エピローグ

エピローグ

 カーテンの隙間から差し込む日の光。



 真新しい畳の香り。



 天井のシミと、古臭い蛍光灯。



 オンボロアパートの、自室。



 抜け落ちていた床は綺麗に修繕され、新しい畳が敷き詰められている。



 いつもと同じように身支度を済ませ、部屋を出る。



 大勢のサラリーマンと学生たちがひしめく駅前を通り抜ける。



 お弁当屋のショーケースに並んだ、80円のおにぎりを横目に通り過ぎる。



 元気に駆けていく小学生たち。



 排気ガスと砂ぼこりの混じった空気が、少しだけ心地よいとさえ感じる。



 神楽丘学園へと続く上り坂。



 ――途中、くたびれた登山家のような足取りで登る鈴木の後ろ姿を見つけた。



 その先には、太田の後ろ姿もある。



 声をかけて、共に頂上へ向けてのアタックを開始する。



「おーい、御手洗くーん♡」



 後ろから、俺を呼ぶ声が近づいてくる。



 振り返ると、西園寺が元気に駆け登ってくるのが見えた。



「おっはよー! ふぅ~♪」



 坂を登り切ると視界が開け、どこまでも広がる街を見渡せる。



 平和だな――



 ごく普通の、ありふれた学園生活。



 俺は今、それを満喫している――



 だがしかし、教室の入口をくぐると、世界は一変する。



「ユウキよ、遅かったではないか」


 待ち構えていたのは、制服姿の天照大御神あまてらすおおみかみ――大神。

 髪はポニーテールにまとめられ、大き目のリボンがあしらわれている。

 さらに今朝は、メガネまで装備しているときた!

 その破壊力たるや――


「ごきげんよう、ユウキ殿」


 月読命つくよみのみこと――月読。

 今朝も懲りずに付き纏う九条には目もくれず、俺に上品な笑顔を向けてくる。

 ハーフアップにまとめられた艶やかな黒髪。肩口にさらりと流れる髪が色っぽい。


「もう! 朝っぱらから鼻の下伸ばしちゃってー!」


 西園寺が、すっと間に割って入る。


「御手洗ばっかり、ずりぃぞ!」

「なんで、あいつばっかりモテてんだー!」


 男子生徒たちからはブーイングの嵐。


 さらには――


「おう! 御手洗ー! 勝負だー!!」

「勝負しろ、コラー!」

「今日こそ打倒してやんぞー!」

「俺も混ぜろ、俺も!」


 学ラン、リーゼント、ねじり鉢巻き……。

 それに、制服を着崩した須佐之男命すさのおのみこと――須佐野までもが、

 机を引きずり寄せて、腕相撲の体勢を取っていた。



 俺の平穏な学園ライフは、どこへいってしまったのか――



「そうじゃ、ユウキよ! この者たちも引き連れて、久々に異ノ国へ観光旅行はどうじゃ? もちろん案内役は、おぬしに任せるとしようぞ!」


「……勘弁してくれー!」




日本神話は終わらない ~終~

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