第57話 ラストバトル
右手には
左手には
ん?
突然、
「(それはもうレプリカではない。主を得て、正剣と成ったのじゃ)」
これが……真の
「(この俺でさえ成し得なかったってのによ……まさか、ユウキが“本物”を目覚めさせるとはなぁ!)」
「いや、俺だけの力じゃないよ」
試しに振ってみる。
……軽い。なのに、さっきまでとは比べものにならない手応えを感じる。
「そんじゃ……」
なおも執拗に結界をぶち破ろうとしている
「……三千年……それより、もっと前から、か。お前が何を思って黄泉の国の流れを詰まらせてんのか知んねぇけど、終わりにしようか!!」
五体の
「まずは……お前からだ!」
三つ首の大蛇を纏った
ガードしようと首を伸ばした大蛇ごと、真っ二つに叩き切った。
ズーン……
切断面が一拍遅れて崩れ、黒い塵となって消えていく。
「……あれ?」
自分でやっておいて、思わず声が漏れた。
あまりの切れ味、圧倒的な力――。
奴らは一斉に中央まで下がり、腕を組んでいた
漆黒の炎を噴き上げて、二回りほど大きくなる
「そっちも最終形態ってわけか。ラストバトルのあるあるだな!」
俺は二刀を構えなおして、
もう何がこようと、負ける気がしない。
『グオオオォォ――――――ッ!!!』
すると――
広間を埋め尽くすように、
その数、数十、百体以上かもしれない。
「なんだよ……。サシで勝負決めようと思ったのに、数の暴力でくるのか」
分神は空中にも表れはじめ、数百体の
「……ふっ。なら、こっちも遠慮なく出させてもらうぜ?」
「黒……いや、シロ子さん、どうぞー!」
両手を高らかに上げて叫ぶ。
「(はわわ……
「黒炎相手に黒子さんじゃ紛らわしいから、シロ子さんにしてみたぜ」
次々と現れるシロ子たち。
しかも――
「(おいおい、ユウキ……そいつら全員、俺じゃねぇーか!?)」
そう。
シロ子たちは全て、
「へへっ、これ、最強の軍団だろ?」
周囲では次々と戦闘が始まる。
分神同士の戦いは、ほぼ互角に見えた。
「さぁ~て、次は何を出してくるのかな?」
歩を進める。
全身に漆黒の炎を纏っているので、表情は見えないが、
当てが外れて驚いているのか? それとも悔しがっているのか?
すると、
ゴゴゴゴゴゴ――
地鳴りが響きわたり、中央の穴から巨大な何かが姿を現した。
大蛇……いや、龍だ。
漆黒の炎を纏った巨大な龍の頭が――ひとつ、ふたつ、と次々に姿を現す。
十本以上の首をうねらせて、その巨体が這い出してきた。
「
迷うことなく切り掛かった。
三つ首のヒドラも、八岐大蛇とも戦った。
蛇の頭が龍になったからといって、そこから繰り出される攻撃は大方の予想がつく。
思ったとおり、黒炎のブレスが次々と照射された。
「だよな! そうくるよなー!」
直線的な攻撃はかわしやすい。こっちは自在に空も飛べる。
龍の頭の向き、一瞬の溜め動作、どれだけブレスを吐かれようとも、当たる気がしない。
――しかし、調子に乗って飛び回っているうち、いつの間にか、四方八方を龍の頭に囲まれていた。
「あれ? やばっ!」
全方位から照射される黒炎のブレス――
咄嗟に結界を張る。
「……へ、へへ。絶対防壁ってな」
「(これ、ユウキ! 油断するでない!)」
「ごめん、ちょっとハイになってた」
深呼吸して、気を落ち着かせる。
ブレス攻撃がひと段落した隙に、再び宙を舞い二刀で切り込む。
案の定、首を落としてもすぐに再生する。
だったら――
「うおりゃぁああ――!!」
超スピードで、再生するよりも速く次の首を落としていく。
次! 次!! 次!!!
それにしても、これは、あまりにも――
「……手応えがなさすぎる」
全ての首を切り落とすと、
なにか裏があるのか、それとも――
いよいよ、
「……諦めたのか?」
仁王立ちの姿勢を崩さない。
相変わらず表情は見えないし、何も言わない。
俺は
「あんたには恨みも何もないけど……黄泉の国を、元に戻さなきゃならねぇんだ」
やはり、反応が返ってくることはない。
「……ゴメンな」
呟いて、剣を振り下ろした――。
・
・
・
「(ユウキ?)」
「(ユウキ殿……)」
「(どした? トドメ刺さねぇのか?)」
俺は――すんでのところで剣を止めていた。
「…………」
「(どうしたというのじゃ?)」
「よく分かんない……けど……これは、悲しみ?」
目の前の
そんな気がした。
『悔しい……』
『苦しい……』
『寂しい……』
『憎い!』
色々な、負の感情が渦巻いている。
ぐちゃぐちゃに絡み合った感情が押し寄せる中で――
『どうして――愛してくれなかったの?』
「ツクヨミ……、アマテラの鏡、出せるよな?」
「(もちろんです)」
それも特大サイズの鏡を顕現させる。
しかし、
漆黒の炎では照らせない。
それなら――
「アマテラ、お前の得意技だ」
「(ふむ。そういうことか)」
「さあ、本当の姿を見せろ――!」
「(真の姿を晒すがよい――!)」
パアアァァ☆と、俺から後光が差す。
すると、その姿が――
「……え?」
その真の姿は、
小さな、
赤子だった。
漆黒の炎を纏い泣きじゃくる、小さな赤子。
そして、
その赤子を抱きかかえる干からびて骨となった人の姿も浮かび上がる――
その感覚が、俺にも流れ込んでくる。
「(母上! それと……)」
「イザナミと、火の神……カグツチ、なのか?」
「(なんじゃと!?)」
「(なんだってー!?)」
学園祭の演劇に登場した、火の神カグツチ――
生まれてすぐに、母である
怒りに我を忘れた父、
胸の勾玉が、小さく脈打っている。
トクン……トクン……
すると、イザナギの勾玉は俺の胸から抜け出し、赤子の元へと漂っていく。
勾玉は宙を漂いながら光を放ち、人の形へ……
そして、優しく抱きかかえた。
すると、それまで激しく泣きじゃくっていた赤子は、少しずつ声の勢いを弱めていく。
それに呼応するかのように、漆黒の炎も、その勢いを無くしていく。
炎が弱くなると、干からびた骨の姿だった
父と母に抱きかかえられた赤子は、
安心したように、
穏やかな笑顔を見せた。
『……我が子らよ……世話を……かけたな』
『神の魂を宿した、人の子よ……イザナギをここまで連れてきてくれて、ありがとう。我が子らにも苦労をかけました……』
そんなことを微塵も思わせない、穏やかな表情で頭を下げている。
そうして、彼らは静かに、浄化の穴の底へと降りてゆく――
『――人の子よ……娘を……任せたぞ――』
最後に
周囲に残っていた
「……終わったみたいだな」
やがて、黄泉の国全体を覆っていた、禍々しい空気が渦を巻くように穴へと流れ込んでいく。
悪鬼を閉じ込めた玉の結界も、穴の中へ吸い込まれていくのが見えた。
「(閉ざされていた浄化の道が、開いたようです)」
「さあ、帰ろうぜ! 文字通り、みんなで一緒に!」
根ノ国へと続く道からは、物凄い勢いで瘴気が吹き込んできていた。
俺たちは、その流れに逆らいながら、根ノ国を目指す。
暗い洞窟の先からは、オレンジ色の光が差し込んでいた。
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