転生編
ナレ死はイヤだ……ナレ死はイヤだ……ナレ死は……
投稿の仕方どうしようかと悩んだんですが……気分で逐次投入か充電放出か決めることにしました。
今回は逐次投入。
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ボクはある日死んだ。
それは単に心臓が止まり、脳への血と酸素の供給が途絶え、脳細胞が軒並み死滅したということではない。
生物学的な死とは違う───人として死んだということだ。
人生とは、山あり谷ありの連続だ。
成功して、失敗して、努力して、サボって、遊んで、働いて、笑って、泣いて、怒って、悲しんで。
時には挫折することもある。
心がポッキリと折れてしまって前へと足を踏み出せなることもあるだろう。
そしてそれを乗り越えて成長することもあれば、全く別の方向を向いて新たな歩みを始めることもあるだろう。或いは再び挫折することもあるかも知れない。
けれど、それは人が人として生きている限り続くことだ。
「人が生きていく」と書いて「人生」と読む。
ボクはある日死んだ。
人として───人生が終わった。
いつの日からか、ボクの人生は人生では無くなってしまった。
何の特徴もない。無限に続く平坦な大地。
道のひとつすらない世界でボクの足は止まってしまった。生きるのをやめてしまった。
挫折とか、葛藤とか、そういう立派で物語的なものではない。
ただある日ふと「やめてしまおう」そう思って全てを投げ出してしまったのだ。
なんか含蓄がありそうな話し方で此処までダラダラと語ったが結論を言おう。
───ボクはニートだ。
生きるのに疲れたとか、過去に深刻なトラウマを抱えてとか、そんな理由ではない。
就職活動に失敗してとか、自分の体に問題が生じてとかでもない。
ただ、どうしても「自分の人生」というものを自分で背負うことに理由を求め、その結果生きる必要性を感じられなかった。そんな怠惰でロクデナシのニートである。
§ § §
ニートの朝は早い───場合によっては。
日によっては鶏より早くに目覚め、日によっては太陽が天高く舞い上がった時に目覚め、日によっては月が金色に輝く時に目覚める。
だがそれでもニート───ボクだけかも知れないが───は言う。
───今日は早くに起きれた。
「お
時刻は午後6時。
ボクは寝床からノソノソと這い出し、顔を洗って、
いただきまーす……寝起きだからそんなにガッツリした料理食べれないよぉ。
「起きるのが遅いのが悪い。……炭水化物は残していいから野菜を食べなさい。ただでさえ健康に悪い生活してるんだから」
はーい。
ボクは食卓に並べられた料理をゆっくりと食べる。
一気に食べると胃もビックリするし、血糖値も上がるから直ぐにお腹いっぱいになってしまう。だからがっ付くのは厳禁だ。
「いただきます。……あ、お茶忘れた。冷蔵庫から取ってきて」
え、ボクが? 冷蔵庫まで歩いて十歩の距離なんだから自分で取ればいいじゃん。
「言い訳するな。一番近くの席に陣取ってるんだからそれぐらいやりなさい」
はぁ〜い。
ボクのところから冷蔵庫までは大股で一歩踏み込めば手が届く距離にある。だから足を伸ばし……ギャァァァアアア!!!???
「普段まともに動いてないからそんなことになる……。そもそも横着せずに椅子から立って取りに行けばよかったでしょ」
股が! ふくらはぎが! 脚全体がぁああ!! 痛い……痛いよぅ……。
普段全くと言っていいほど使ってない筋肉と、それを支える筋とか諸々が急に稼働して軋みだす。
神経を伝って脚が脳に叩きつける苦情に、ボクは思わず悲鳴を上げて床に崩れ落ちた。
「そんな所で寝るな、汚い。こんな馬鹿な時間まで寝てたのにまだ寝足りないのか?」
いや……別に世の中の人間みんなが日が回る前に寝てるわけじゃないからね? 日が沈んで起きてきたとしても睡眠時間が5時間とかの日もザラに……
「いいからさっさと立ってお茶を持ってこい」
ひでぇ……。
ボクは泣きべそをかきながら、生まれたての子鹿のようにぷるぷると震える両足を引きずって冷蔵庫を開ける。涙は流さない。流すとただでさえ惨めなボクの立場が更に惨めになるからだ。
この家でのボクの立場は堕ちるとこまで堕ちてるが、それでも自分で自分の立場を更に下げる気はない。
上限突破は何処までも出来るが、同じように下限突破も何処までも可能なのだ。
さて、早く取らないと怒られてしまう。何処に入ってるかなー……ありゃ?
「どうした?」
なんか……。
「ん?」
お茶……空っぽです。ペットボトルに1滴も入ってません。
冷蔵庫の扉に置かれたお茶のペットボトルは2本。2リットル入りの“ただの”ペットボトルは、そのどちらもが空であることを示している。
「そうかあ……」
取り敢えず、ドンマイ☆ ボクはお腹いっぱいだしもう部屋に上がるね〜。
「おい」
すたこらさっさと部屋に戻ろうとしたボクを制止する声が聞こえる。……イヤな予感がする。
な、何かな〜? ボクは今から新しく買ったゲームをするっていう大事な用事があるんだけど……?
季節は冬。ウィンターセールで安くなったゲームをまとめ買いしたボクはとても忙しい。
「つまり暇ってことだよな。ならお前に仕事をやる」
用事があるって聞こえてらっしゃらない?
頼むから勘弁してくれ。そんなボクの心の中の声を無視して無慈悲に命令が下される。
「そこのコンビニでお茶買ってこい」
えぇ〜面倒くさい。他の人に頼んでよ〜。
「他の人? この家に私とお前以外がいると思ってるのか?」
うぐっ……それは、そうだけど……。
決死の覚悟で行った抗議をアッサリと跳ね返されたボクはぐぬぬと不満気な態度で最後の抵抗を試みる。
ボクのターン! 「ふふくそうなたいど」を攻撃表示で召喚!
「まったく……今日がいつの日か分かってる? クリスマスだよ? あの人は社会人だから仕事中。私の血をしっかりと継いでくれた娘は、彼氏だか友達だかと遊びに行っていつ帰ってくるか分からない。最近グレて低俗な連中とつるんでる私の第二の息子は、今日もバイク乗って遠征? に行って帰ってこない。私も今から洗濯物に洗い物にと家事が盛り沢山。分かるか?
───こんな日に暇なのはお前だけなの。分かったらさっさと行ってこい」
なんてこった!? こうかはまったくない。
相手のターン! 「どせいろん」を攻撃表示で召喚。 こうかはばつぐんだ。
他の家族のことまで持ち出した攻撃でHPが底を尽きたボクはがっくりと頭を垂れる。
……はい、承りました……。
ボクはかんぱいしてしまった!
§ § §
クッッッソ寒い町中をボクはパジャマ1枚で歩く。なんで着替えてないんだって? そりゃ「洗濯物が乾きにくい時期に洗濯物を増やすな!」って言われたからだよ。
なので今のボクはパジャマの上下にクロックス、手には千円札1枚の何処からどう見ても「コンビニ行くために家から出てきましたよ?」と一目で見て分かる恰好なのだ。
ボクの住んでる家は駅に近いとかではないので、クリスマスの夜でも閑散としている。ただ、今から家に帰るのか、住宅街のほうに歩いていくカップルと見られる男女のペアがチラホラといる。けっ! イチャコラしやがって。
……まあ別にそこまで関心は無いんだけど。
正直男女の仲とか恋心とかよく分かんないし、誰が好きとかもない。仲睦まじそうに歩いてるカップルを見ても嬉しそうだなぁとか、幸せそうだなぁとかしか思わない。
───だって、他人の人間関係を気にしても仕方ないでしょ?
歩くこと約10分。
ポツポツと街灯の光に照らされた歩道を道なりに進んで見えてくるはコンビニ。道を挟んで向こう側に位置しているため、入るには横断歩道を渡る必要がある。
……ここの信号無駄に待ち時間長いんだよなぁ。そこまで交通量の多くない道でなんで待たなきゃいけないのやら。
まあ横断歩道があるなら待つけどね。でももし無かったら間違いなく適当な所で道路を横断してた。
「いらっしゃいませ〜」
幸いにして、ボクが横断歩道に辿り着いたときには丁度青になっていたのでノンストップで渡ることができた。
そのままコンビニに入るとお決まりのセリフを聞きながら店内を物色する。
……え〜と、お茶、お茶は……と。
ほしいのは容量のなるべく大きいペットボトルのお茶。重さはいいけど、手がかじかんでる中で何本もペットボトルを抱えて歩きたくはない。袋を頼べばって? ……あとで「なんで余計な金払って袋貰ったの!?」って怒られるに決まってる。(5敗)
「お会計九百円になります」
う〜ん高い。物価高の流れは止まらず……ってね。
元々長年続いていた不景気に加えて、最近は産油国で政治的混乱が発生したとかで石油価格が高騰。それに釣られるように他のあらゆる物品の値段も上がっていってる。
まあ、全てに石油が関わってる以上、石油の値段に他の物価も引っ張られることは自明の理なのだけど。
「お預かりします。お釣りが百円になります。ありがとうございました〜」
あざーす。
さあ、あとはペットボトルを抱えて、もと来た道を戻るだけ。行き来で計20分。買い物時間も入れたら合計25分くらいの短い外出だった。
……ボクにとってはスゴイ長い外出だったけどね。
前回外に出たのはいつだろう。そんなことを考えながら横断歩道の前まで歩く。今回もラッキーなことに青信号だ。
よく見ると向こう側には人がいるので、もしかしたら信号が変わったばかりなのかもしれない。凄くどうでもいいタイミングで運が味方してやがる。……本当にラッキーだなー(棒)。
信号が変わっても面倒なのでさっさと渡ろうと道路に足を踏み出す。
一歩、二歩、三歩……。
……あれ?
その時、ボクは違和感に気が付く。
歩くペースを落としながら思考に集中すると、答えはすぐに分かった。向こう側にいる人だ。
黒いジャンバーを着ながら立っている。
顔はフードを被って俯いているせいで見ることができない。
そして何より不可思議なのが……さっきから全く動いてないってこと。
ただぼうっとしているだけなのか、それとも気分が悪くて動けないのか。
前者なら青信号になっていることを教えてあげたほうがいいだろうし、後者なら最悪救急車を呼ぶべきだろう。ボクの後ろにはコンビニもあるので、そこまで連れて行ってもいい。
───まあどちらにせよ、声は掛けなきゃね。
この時、ボクは目の前の不審者を無視するべきだった。この日のことをボクはちょっとだけ後悔してる。……マジで毛ほど、だけど。
結論から言おう。
ボクはこの日死んだ。
それは単に心臓が止まり、脳への血と酸素の供給が途絶え、脳細胞が軒並み死滅したということだ。
生物学的な死で───生命体として死んだということだ。
「……ゥ゛…………ク゛キ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!゛!゛」
病死、自然死、老衰死、突然死、溺死、焼死、窒息死、餓死、凍死、中毒死、失血死、墜死、轢死、圧死、縊死、扼死、絞死、変死、孤独死、尊厳死、ショック死、過労死、安楽死、老衰。
この中でボクの死因を選ぶとしたら、それは失血死かショック死になるだろうか。
……病気でも自殺でも事故でもなく、こんなので死ぬなんて。
ボクは豪快に、ボクの首から飛び出した紐状の───大動脈を食い千切った不審者を見ながら意識を手放した。
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主人公「ナレ死はイヤだ」「トラックに轢き殺されるのもイヤだ」「通り魔に刺されるのもイヤだ」「過労死もイヤだ」
「 じ ゃ あ 咬 ま れ て 死 ね ☆ 」
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