死者と話せる店
てんてこマイスター
本編
殺された母からの第一声は謝罪の言葉だった。
「なんで謝るんだよ…もしかして金のことか?この店すげえ金取られたもんな。そんなの心配いらねえんだよ。最近羽振りが良くてさあ。母さんと最後に会ったのは俺が10歳の頃だし、信じられないのも無理ないけど。」
嬉しさと動揺で矢継ぎ早に言葉が紡がれる。
「…そうじゃないの。」
「じゃあ何だってんだよ。」
まだ子どもだった俺を残して死んだことか?そんなのは母さんのせいじゃない。
「私…結局最期まで、あなたに言えなかった。」
黙って母の言葉を聞く。
「あなたはきっと、私を殺した人間を探していると思うんだけど。もうやめたほうがいい。私が殺されたのは当然の報いだから。」
「どういうことだよ…?」
「あなたには、お父さんは私たちを捨てて出て行ったと言ったけど、本当は違う…。私があの人を殺したの。」
なんで僕にはお父さんがいないの?軽い気持ちで母親に問いかけた時、たしかそんなことを言われた気がする。
「本当にごめんなさい。」
正直、そんなことはどうでも良い。俺を捨てていようが、母に殺されていようが、どちらにせよ碌でもない男だったんだろう。
「私がいるのに、他の女性と関係を持っていたの。許せなかった。でも…あなたはとてもかわいかった。あなたには…悲しみを背負って生きて欲しくなかった。だから、咄嗟にあんなことをしてしまったのかもしれないわね。」
嗚咽しながら話す母を見て心が痛む。でも、俺はただ知りたかった。昔の業などどうでもいい。殺されたのが因果応報だったとしても、俺にとってはたった一人の家族だったのだ。
「教えてくれ。母さんを殺した奴のことを。」
「私を殺したのは…」
母は震える息を一口飲み込み、一度吐いて整える。重く閉ざした口をゆっくりと開く。
「あなたの母親よ。」
死者と話せる店 てんてこマイスター @tentekomeister
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