ねぇ、手……繋がない…?



それから数時経った放課後、彼女は何度目かわからないポーズで机の前に佇んでいた。


「どうした…?」

「どうしたって、今日私の家に来るでしょ。だから一緒に帰ったほうが良いと思うんだけど」


すでに自分たち以外誰もいない教室でそう告げる。


「一回帰ってから行こうかなて思ってたんだけど……ていうか、わざわざ待っててくれたんだ」

「待ってるよ、ずっと……だから、一緒に帰ろ」


差し出された手はいつの日かを思い返す。

そして、その手を掴み立ち上がる。


「待たせてごめん」

「いいよ、一緒に帰ろ」


数秒間見つめあい、同時に笑い出した。





———





帰路につき、夕陽が2人を照らす。


久々に誰かと帰る道は、どこかむず痒かった。


「田嶋くんって相変わらずだよね」

「…何が?」


ゆっくりとこちらを向き、徐に口を開く。

そんな彼女に合わせ、歩くペースを少し落とす。


「ほら、昔から学校が終わってもすぐに帰らなかったじゃん。それが高校生になっても変わって無いなって」

「まあ、癖みたいなもんだからね」

「懐かしいね」


足元の小石を蹴り、カラカラと心地よい音を立てる。


「確か、そんな田嶋くんが不思議で話しかけたのが始まりだよね」

「そうだったなぁ」


思い出に浸りながら同じ小石をもう一度蹴る。

今度はポチャっと音を立てて落ちた。


「…あの時、真希が話かけてくれたの結構嬉しかったんだよな」


昼間は喧騒に包まれた教室が夕方になると静まり返る。

家に帰りたくなかったと言う理由もあるが、時間で変化する日常が好きだった。


いや…誰かといたかったが、どうすれば良いか分からなかったのかも知れない。


「私は話しかけた事少し後悔したんだからね」

「なんで?」

「だって初めて遊んだ時、蜂の巣に石投げたじゃん」

「……それ、まだ根に持ってるの?」

「当然。本当にびっくりしたんだから」


新鮮な体験で少し楽しかったけどと続ける。


少し歩き、公園からつながる細道へ入っていく。昔良く通った近道だ。

あの頃と比較し成長した。それに加え、道幅が小さくなったため自然にと距離が近くなり肩がぶつかる。


「ごめん」

「こっちこそごめんね。昔は二人でも全然通れたのにね」

「もう高校生だしな」


狭さゆえに彼女の甘い香りがふわりと漂う。

風紀委員長で真面目な彼女だから香水では無いだろう。


その細道も半分くらい過ぎた頃静かに口を開いた。


「ねぇ、手……繋がない…?」

「は…?」


突拍子もないことを口にする。

びっくりし過ぎて唖然としていると慌てたように続ける。


「ほら!昔は手を繋いでここを通ってたでしょ…?だからどうかなって」


恥ずかしそうにチラチラと目線を送る。


「これは…風紀を乱す行為じゃないの?風紀委員長がそんなこと言っちゃって大丈夫なの?」


少しバツが悪そうにして笑う。


「…ほんと、風紀委員長なのにね」


少し頭を悩ませていると、ボソッと言葉を漏らす。


「……ねぇ、風紀委員長が手を繋いじゃ、だめかな」


日頃からそういった行動を抑制する側である風紀委員。

”学校を良くしたい“その一心でやっているからこそ、自分だけと言う点で引っ掛かるのだろう。


泣きそうな表情で見つめる。


「…今は学校じゃないし……俺の方からならセーフかも」


そんな彼女を放って置けなかった。


「……じゃあ、お願い」


二人の手が絡み合う。


「……あったかい」

「だな」


さっきより近くに彼女を感じながら再び歩み出した。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る