第十七回:地獄の愛欲、崩壊のマンション

黒井先生に強引に連れ込まれた先は、生活感の薄い、薬品の匂いが漂う高層マンションの一室だった。


「……さあ、佐藤くん。ようやく二人きりになれたわね」


先生は玄関の鍵をいくつも閉めると、狂気的な手つきで自らの上着を脱ぎ捨てた。キャミソール姿の彼女の肌は、月の光を浴びて青白く光っている。


「先生、やめてくれ! 三人が……あの子たちがすぐにここを見つける!」


「あはは! 来ればいいわ。その時にはもう、あなたは私の薬と体で、私なしでは生きられない体になっているもの」


先生は俺をベッドに押し倒し、馬乗りになった。その手には、先ほどの怪しい液体が入った注射器が握られている。


「あの日、保健室でやり残したこと……今ここで全部しましょう。私の体で、あの子たちが教えられない『最高の快楽』を教えてあげる。そうすれば、あなたはもう二度と、あんな子供たちのところへなんて戻りたくなくなるわ」


先生の熱い吐息が首筋にかかり、注射器の針が俺の腕に触れる。


「さあ、力を抜いて。私と一緒に、甘い地獄へ落ちるのよ。今夜、あなたを私の『夫』にしてあげる……!」


恐怖と薬物の予感に俺の体が震えた、その時だった。


ドォォォォォン!!


凄まじい衝撃音と共に、頑丈なはずのマンションの扉が、蝶番ごと吹き飛んだ。


「――そこまでよ、この泥棒猫(どろぼうねこ)!!」


土足で踏み込んできたのは、返り血のような赤いオーラを纏った**桜(さくら)**だった。その手には、巨大な裁ち鋏が握られ、狂気に満ちた笑みを浮かべている。


「翔太を奪い、神聖な協定を汚した罪……万死に値します」 **美雪(みゆき)**が、抜き放った御神刀を青白く光らせながら後に続く。


「あはははは! 先生、今度こそ本当に『お掃除』してあげますね! どこからバラバラにされたいですか?」 **白鳥(しらとり)**が、狂ったようにカッターをカチカチと鳴らしながら、寝室の壁を切り裂いた。


「あら、お邪魔虫たちが来たわね」 黒井先生は怯むどころか、俺の首を抱きしめ、挑発するように三人を見据えた。 「でも残念。この子はもう、私の指先一つでとろけちゃう体になるんだから!」


四人の女たちの狂気が、狭いマンションの室内で激突する。 俺、佐藤翔太を巡る、文字通りの「殺し合い」が始まった。

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