第十五回:唇に刻まれる罰

地下室での「血の契約」から一夜明け、俺、佐藤翔太の日常は完全に作り替えられてしまった。 「共有協定」はさらに進化し、放課後の俺の時間は三分割され、それぞれの場所で「お仕置き」を完遂しなければならない。


「翔太くん、一秒の遅れも許さないわよ」


放課後のチャイムと同時に、俺のスマホに**桜(さくら)**からの位置情報が届く。


第一の関門:生徒会室

最初に向かったのは、ひっそりと静まり返った生徒会室。 桜は椅子に座り、書類を片手に俺を待っていた。 「さあ、約束の時間よ。まずは……わかっているわね?」 俺は震える足で近づき、彼女をきつく抱きしめる。桜の冷たい髪から、高貴なバラの香りがした。 「ふふ、合格よ。次は、ここ」 彼女が指し示した唇に、俺はキスを落とす。桜の手が俺の背中に回り、爪が食い込むほど強く抱き寄せられた。


「……次は美雪さんのところね。色目を使ったら、明日はないと思いなさい」


第二の関門:放課後の教室

次に向かったのは、夕日に染まる無人の教室。 そこには、白鳥(しらとり)が机の上に座り、足をぶらつかせて待っていた。 「先輩! 遅いですよー! 私、待ちきれなくてカッターで机を削っちゃいました」 白鳥は俺を見るなり飛びつき、子供のように抱っこをせがむ。 俺が彼女の細い体を持ち上げると、彼女は俺の首筋に何度もキスを刻んできた。 「先輩の心臓、ドクドクいってる。……あは、大好き」


第三の関門:夕暮れの神社

最後は、校裏にある美雪の神社。 石段を登り切ると、美雪(みゆき)が白衣に緋袴の姿で、凛として立っていた。 「翔太……他の二人の残り香がします。今すぐ、私が上書きしてあげましょう」 彼女は俺を拝殿の奥へと連れ込み、静かに俺を抱きしめた。 「神聖なるこの場所で、あなたを浄化します」 彼女のキスはお香の味がした。目を閉じた彼女の頬には、執念にも似た一筋の涙が伝っていた。


三箇所の巡回を終え、俺がフラフラになりながら校門を出ようとしたその時。


「……ずいぶんと、お疲れのようね。佐藤くん」


街灯の影から現れたのは、あの日地下室で切り捨てられたはずの黒井先生だった。 彼女の目は、かつての余裕を失い、どす黒い復讐の炎に燃えていた。


「三人のお人形さん遊びは楽しいかしら? でも、私を捨てた代償……高くつくわよ」


彼女の手には、何かの「薬品」が入った注射器が握られていた。

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