第10話:新たな出発

バキィィィンッ!!!


最後のゴーレムが、粉々に砕け散る。


破片が、床に散らばる。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


剣を杖代わりに、膝をつく。


全身から、汗が噴き出している。


【雷神降臨】を連続で使ったせいで、MPがほとんど空だ。


「奏多さん、大丈夫ですか!?」


アナスタシアが、駆け寄ってくる。


「ああ……ちょっと、疲れただけだ……」


「無理しないでください。少し休みましょう」


アナスタシアが、俺の体を支えてくれる。


柔らかい。そして、温かい。


(いかん……今はそんなこと考えてる場合じゃない……)


「ありがとう。でも、もう大丈夫だ」


ゆっくりと立ち上がる。


「キュルル……」


リューイが、心配そうに俺を見つめている。


「大丈夫だよ、リューイ。お前も疲れただろ? よく頑張ったな」


「キュゥゥ♪」


リューイの頭を撫でる。


***


ピロリン♪ ピロリン♪


レベルアップの音が響く。


+++

【レベルアップ!】

レベル35 → レベル40


【スキル熟練度上昇】

・武神術 Lv15 → Lv18

・雷神降臨 Lv1 → Lv3

+++


「レベル40……ゴーレムを倒して、一気に5レベル上がった……」


アナスタシアも——


+++

【アナスタシア】

レベル30 → レベル35


【スキル熟練度上昇】

・精霊剣舞 Lv8 → Lv11

・精霊王の一閃 Lv1 → Lv2

+++


「お互い、順調に成長してるな」


「はい。奏多さんと一緒だからこそ、ここまで来れました」


「俺もだよ。お前がいなければ、ここまで来れなかった」


二人で、微笑み合う。


ゴーレムたちが消えた場所には——


【魔法石(大)】×3

【古代の魔法回路】×3

金貨×30


「おお、結構な収穫だ」


全部、アイテムボックスに収納する。


「さて……奥へ進もうか」


「はい」


***


階段を降りていく。


石造りの階段は、苔むしていて滑りやすい。慎重に、一歩ずつ降りていく。


暗闇の中、【究極鍛冶】で作った魔法のランタンが道を照らす。


階段は、延々と続いている。


どれだけ降りたか分からない。おそらく、地下50メートルは降りただろう。


そして——


階段の先に、扉が見えた。


巨大な石の扉。高さ5メートル、幅3メートル。


扉の表面には、複雑な魔法陣が刻まれている。


「これは……封印の魔法陣……?」


アナスタシアが、扉を見つめる。


「封印? 何かを封じているのか?」


「おそらく……この先に、何か重要なものがあるのでしょう」


「開けられるのか?」


「試してみます」


アナスタシアが、扉に手を当てる。


そして——


「【生命の祝福】!」


アナスタシアの手から、緑色の光が溢れ出す。


その光が、魔法陣に触れると——


ゴゴゴゴゴ……


魔法陣が、輝き始める。


そして——


ガシャンッ!


封印が解け、扉がゆっくりと開いていく。


ギィィィィ……


重い音を立てて、扉が開く。


***


扉の向こうは——


広大な地下空間だった。


天井は高く、30メートルはある。壁には、無数の魔法陣が刻まれている。それらは全て、淡く光を放っている。


空間の中央には——


巨大な祭壇がある。


そして、その祭壇の上には——


白く輝く、剣が置かれていた。


「あれは……」


剣は、美しかった。


刀身は透き通るような白銀色。柄は黄金色。刀身全体から、神々しい光が溢れている。


「伝説の……【神裂剣アメノムラクモ】……!?」


アナスタシアが、驚きの声を上げる。


「神裂剣?」


「はい。古代魔法文明の時代に作られたとされる、七つの神器の一つです。全てを断ち切る力を持つと言われています」


「七つの神器……」


伝説の武器か——


祭壇に近づこうとすると——


ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!


空間全体が揺れた。


「!?」


祭壇の前に、何かが出現する。


黒い霧のようなものが、渦を巻く。


そして——


霧の中から、巨大な影が現れた。


それは——


体長5メートルの、巨大な騎士の姿をした魔物。


全身が黒い鎧に包まれている。手には、巨大な大剣。背中からは、黒い翼。


頭上にウィンドウが表示される。


+++

【ダークナイト】

レベル:55

種族:魔法生物(守護者)

スキル:

・闇の剣技(ダークソードアーツ)

・絶対防御(アブソリュートディフェンス)

・死の一閃(デスストライク)

・魔力吸収(マナドレイン)

+++


「レベル55……!? しかも、守護者だって……!?」


「この剣を守るために、配置された守護者です……! 非常に強力です……!」


ダークナイトが、剣を構える。


その剣から、黒い瘴気が溢れ出す。


「ッ……」


プレッシャーが、すごい。


今までの魔物とは、格が違う。


明確な——殺意。


「アナスタシア、気をつけろ。こいつは——本気で殺しに来てる」


「はい……!」


二人とも、剣を構える。


「キュルルル……!」


リューイも、警戒している。


ダークナイトが——動いた。


***


一瞬で、距離を詰める。


5メートルの距離が、0.5秒で消える。


「速い……!?」


ダークナイトの大剣が、俺に向かって振り下ろされる。


【心眼】!


動きを読む——


でも、速すぎる……!


咄嗟に、【鉄壁守】を展開。


ガギィィィンッ!!!


凄まじい衝撃。


バリアが、ひび割れる。


「うわっ!?」


体が、10メートルも吹き飛ばされる。


壁に激突する。


ドガァンッ!


「がっ……!」


痛い……全身が痛い……


「奏多さん!」


アナスタシアが、ダークナイトに攻撃を仕掛ける。


「【精霊剣舞】!」


連続斬撃が、ダークナイトを襲う。


ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!


でも——


ダークナイトは、剣で全てを弾く。


ガキン! ガキン! ガキン!


「効かない……!?」


「【絶対防御】のスキルです……! 普通の攻撃では、ダメージが通りません……!」


くそっ……厄介だ……


立ち上がり、再び剣を構える。


「なら——奥義で攻めるしかない……!」


【雷神降臨】!


全身を雷光化。


超高速で、ダークナイトに接近。


【金剛拳】を連打する。


ドガッ! ドガッ! ドガッ!


でも——


ダークナイトは、片手で全てを受け止める。


「嘘だろ……!?」


そして——


ダークナイトの左手から、黒い光が放たれる。


「【魔力吸収】!」


ズゴォォォッ!


黒い光が、俺の体を包み込む。


「うっ……!?」


体内のMPが、吸い取られていく。


「やばい……!」


【雷神降臨】が、強制解除される。


体が、元に戻る。


そして——


ダークナイトの大剣が、俺に向かって振り下ろされる。


「【死の一閃】!」


一撃必殺の技——


「まずい……!」


避けられない——


その時——


「【精霊王の一閃】!!!」


アナスタシアの剣が、ダークナイトの剣を弾く。


ガキィィィンッ!!!


火花が散る。


「奏多さん、今のうちに!」


「アナスタシア……!」


距離を取る。


アナスタシアは、俺を守るために——


ダークナイトと、一対一で戦っている。


「くそっ……俺が、守らないといけないのに……!」


悔しい。


力が足りない。


このままじゃ——


アナスタシアが危ない。


(どうする……? どうすれば、勝てる……?)


考える。


ダークナイトは、レベル55。


俺は、レベル40。


レベル差、15。


普通に戦っても、勝てない。


なら——


(あの剣だ……!)


祭壇の上の、【神裂剣アメノムラクモ】。


あれを使えば——


「アナスタシア! 時間を稼いでくれ!」


「分かりました!」


アナスタシアが、ダークナイトの注意を引きつけている。


その隙に——


俺は、祭壇へ走る。


***


祭壇に手を伸ばす。


【神裂剣アメノムラクモ】——


その柄を、掴む。


瞬間——


ビリリリリッ!!!


電撃のような衝撃が、腕を駆け巡る。


「うっ……!」


痛い。


でも——離せない。


この剣が、必要だ。


『……汝……我を求めるか……』


頭の中に、声が響く。


老いた、男性の声。


「あなたは……?」


『我は……神裂剣アメノムラクモに宿りし……古代魔法王の残留思念……』


「古代魔法王……!?」


『汝……我を使いこなせるか……?』


「使いこなす……試させてください……!」


『……ふむ……汝の心……見せてもらおう……』


次の瞬間——


無数の映像が、頭の中に流れ込んでくる。


俺の記憶——


家族に見捨てられた記憶。


学校でイジメられた記憶。


孤独で、辛くて、絶望していた記憶——


全てが、剣に読み取られていく。


『……なるほど……汝は……苦しみを知る者……』


『だが……同時に……希望を持つ者……』


『良かろう……我が力……汝に貸そう……』


剣が、輝き始める。


白い光が、全身を包み込む。


そして——


剣が、俺の手に馴染む。


まるで、最初から俺の剣だったかのように。


「これが……神裂剣の力……!」


剣を振ってみる。


シュゴォォォッ!


空気が切れる。


いや、空間が切れる。


剣の軌跡に沿って、空間に亀裂が走る。


「すごい……!」


これなら——勝てる!


「アナスタシア! 交代だ!」


「はい!」


アナスタシアが、後ろに下がる。


俺が——ダークナイトの前に立つ。


「さあ……もう一度だ……!」


ダークナイトが、再び大剣を振り上げる。


「【死の一閃】!」


一撃必殺の技——


でも——


「今度は、違う……!」


【神裂剣アメノムラクモ】を振り抜く。


「【神裂剣・天翔一閃】!!!」


剣から、白い光の斬撃が放たれる。


シュゴォォォォッ!!!


光の斬撃が、ダークナイトの【死の一閃】を——


切り裂いた。


ズバァァァンッ!!!


「!?」


ダークナイトが、初めて——驚きの声を上げる。


そして——


光の斬撃が、ダークナイトの体を貫く。


ザシュゥゥゥゥッ!!!


「ッ……!」


ダークナイトの体に、一筋の亀裂が走る。


そして——


バキィィィンッ!!!


ダークナイトの体が、真っ二つに割れた。


黒い鎧が、床に崩れ落ちる。


そして——光の粒子となって、消えていった。


***


「はぁ……はぁ……はぁ……」


剣を下ろす。


勝った——


ダークナイトを、倒した。


「やった……やったぞ……!」


「奏多さん! すごいです! あの伝説の剣を……!」


アナスタシアが、駆け寄ってくる。


「ああ……でも、これは俺一人の力じゃない。お前が時間を稼いでくれたからだ」


「いえ、奏多さんが——」


「二人の力だよ。俺たちの、力だ」


アナスタシアの目を、まっすぐ見る。


「……はい」


アナスタシアが、微笑む。


その笑顔が——本当に、綺麗だ。


ピロリン♪ ピロリン♪ ピロリン♪


連続で、レベルアップの音が響く。


+++

【レベルアップ!】

レベル40 → レベル45


【新装備取得】

神裂剣アメノムラクモ(神器)


【新スキル習得】

・神裂剣・天翔一閃 Lv1

+++


アナスタシアも——


+++

【アナスタシア】

レベル35 → レベル40


【称号取得】

守護の騎士

+++


「レベル45……そして、神器を手に入れた……」


手の中の【神裂剣アメノムラクモ】を見つめる。


美しい。


そして——強力だ。


この剣があれば、もっと強くなれる。


***


ダークナイトが消えた場所には——


【ダークナイトの鎧片】×1

【古代の魔導書】×1

金貨×100


「すごい……金貨が100枚も……」


全部、アイテムボックスに収納する。


「さて……遺跡の探索は、これで終わりか?」


「いえ、まだ奥に部屋があるようです」


祭壇の奥に、小さな扉がある。


扉を開けると——


そこには、宝物庫があった。


「うわぁ……!」


金貨の山。


宝石の山。


武器、防具、魔導書——


無数の財宝が、所狭しと置かれている。


「これ……全部……?」


「古代魔法文明の財宝です……すごい……」


「全部、持っていくか」


全てを、アイテムボックスに収納する。


金貨:500枚

宝石:100個以上

武器・防具:50点以上

魔導書:20冊


「すごい収穫だ……」


「はい……これだけあれば……」


「しばらくは困らないな」


二人で、笑い合う。


***


遺跡を出て、街へ戻る。


既に、日が暮れかけている。


夕焼け空が、美しい。


「今日は……本当に、色々あったな」


「はい。でも——楽しかったです」


「楽しかった……か。そうだな、俺も楽しかった」


アナスタシアと一緒だから——


危険な冒険も、楽しく感じる。


「奏多さん」


「ん?」


「私……奏多さんと出会えて、本当に良かったです」


アナスタシアが、真剣な表情で言う。


「あの時、奏多さんが助けてくれなければ——私は、もう生きていませんでした」


「……」


「でも、奏多さんは私を助けてくれて、仲間にしてくれて——生きる希望をくれました」


アナスタシアの瞳から、涙が溢れる。


「だから……本当に、ありがとうございます」


「アナスタシア……」


俺は、アナスタシアの頭を撫でる。


「俺の方こそ、ありがとう。お前がいてくれて——俺も、生きる希望を持てた」


「奏多さん……」


二人で、見つめ合う。


夕焼けの光が、二人を照らす。


「これからも——一緒に、冒険しような」


「はい……! ずっと、一緒です!」


「キュルルル!」


リューイも、嬉しそうに鳴く。


***


街に戻り、冒険者ギルドへ。


依頼の完了報告をする。


「遺跡探索、完了しました」


「お帰りなさい! 無事で何よりです」


受付嬢が、安堵の表情を浮かべる。


「財宝は、見つかりましたか?」


「はい。これです」


アイテムボックスから、一部の財宝を取り出す。


宝石×20、魔導書×5、武器×10。


「これは……! すごい……!」


受付嬢が、目を輝かせる。


「では、査定させていただきます」


しばらくして——


「査定額は……金貨200枚です」


「200枚!?」


「はい。その50%が、報酬として支払われます。つまり——金貨100枚です」


「それと、依頼の基本報酬が金貨20枚。合わせて、金貨120枚です」


金貨120枚——


すごい額だ。


「ありがとうございます」


「いえいえ。それと——」


受付嬢が、真剣な表情になる。


「あなた方のランクが、また上がりました」


「え?」


「守護者級の魔物を倒したという実績から——あなた方は、A級冒険者に昇格します」


「A級……!?」


「はい。おめでとうございます」


新しい冒険者プレートを受け取る。


『皇奏多 A級冒険者』

『アナスタシア A級冒険者』


「A級か……ついに、ここまで来たんだな……」


「はい……」


アナスタシアも、感慨深げにプレートを見つめている。


***


ギルドを出て、宿屋へ戻る。


今日は、本当に疲れた。


でも——充実していた。


部屋に入り、ベッドに倒れ込む。


「ふぅ……」


「キュルル……」


リューイが、俺の胸の上で丸くなる。


「お疲れ様、リューイ」


「キュゥゥ……」


リューイの頭を撫でる。


窓の外を見る。


夜空には、満天の星。


「俺……変わったな……」


地球にいた頃の俺とは、全く違う。


強くなった。


仲間ができた。


生きる希望を持てた。


「これからも——頑張ろう」


目を閉じる。


明日も——新しい冒険が待っている。


***


そして——


この日、俺は気づいていなかった。


アナスタシアへの想いが——


ただの仲間意識を、超え始めていることに——。


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