第8話:ゴブリンの巣窟攻略

ゴブリンたちが、一斉に襲いかかってくる。


15匹——いや、奥からさらに出てくる。


20匹はいる。


「キィィィ!!!」「ギャギャギャ!!!」「グルルル!!!」


耳を劈く咆哮。


粗末な武器を振り回し、牙を剥き出しにして迫ってくる。


「多すぎる……!」


「奏多さん、私は左を!」


「分かった! 俺は右だ!」


瞬時に役割分担。


アナスタシアが左へ飛び、俺は右へ跳ぶ。


「キュルルル!」


リューイは、俺の頭から飛び降りて、空中で翼を広げる。


成長したリューイの翼は、もう飛べる大きさになっていた。


「【始祖龍魔法】!」


リューイの口から、無数の火球が放たれる。


ピュッ! ピュッ! ピュッ!


小さな火球が、ゴブリンたちに降り注ぐ。


「ギャアアアッ!」「キィィィ!」


3匹のゴブリンが、炎に包まれて倒れる。


「ナイス、リューイ!」


残り——17匹。


右側のゴブリン、8匹が俺に向かってくる。


「来い!」


【流水剣】!


水の流れのような連続斬撃。


一閃。二閃。三閃。四閃。五閃。


最前列のゴブリン2匹を切り裂く。


「ギャアアッ!」「ギィィィ!」


でも——残りのゴブリンたちは、怯まない。


仲間が倒れても、突進してくる。


「しつこい……!」


前方のゴブリンが、斧を振り下ろしてくる。


【疾風歩】!


風のように跳び、回避。


そして——背後に回り込む。


「【烈風脚】!」


回し蹴りが、ゴブリンの側頭部に直撃。


ドゴォッ!


「ギャッ!?」


ゴブリンが横に吹き飛ぶ。


残り——5匹。


左側では——


アナスタシアが、優雅に剣を振るっている。


「【精霊剣舞】!」


その動きは、まるで踊るよう。


回転しながら、斬撃を繰り出す。


ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!


連続攻撃と回避を同時に行う、美しい剣技。


ゴブリンたちの攻撃を、全て避けながら——


確実に、一匹ずつ倒していく。


「ギャアアッ!」「キィィィ!」


「すげぇ……」


アナスタシアの戦闘スタイルは、俺とは全く違う。


俺が力で押すタイプなら、彼女は技で躱すタイプ。


「集中しないと……!」


残りのゴブリン5匹が、同時に襲いかかってくる。


前方から3匹、後方から2匹。


完全に、包囲されている。


「くそっ……!」


【究極時空間操作】!


「時間、減速(スロウ)!」


5匹全員の時間を遅くする。


スローモーションになるゴブリンたち。


その隙に——


【金剛拳】!


闘気を込めた拳を、前方のゴブリンに叩き込む。


ドガァッ!


「ギャアアッ!」


一匹が吹き飛ぶ。


次——


【烈風脚】!


回し蹴りで、もう一匹を蹴り飛ばす。


ドゴォッ!


「ギィィィ!」


さらに——


【流水剣】!


連続斬撃で、残り3匹を切り裂く。


ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!


「ギャアアアッ!」「キィィィ!」「グルルル!」


全員、倒れる。


「はぁ……はぁ……」


右側、制圧完了。


***


アナスタシアの方を見ると——


彼女も、全てのゴブリンを倒し終えていた。


「ふぅ……」


剣を下ろし、深呼吸する。


汗一つかいていない。


呼吸も、乱れていない。


「お、終わったのか……?」


「はい。こちらは全て倒しました」


「すげぇな……俺より速い……」


「いえ、奏多さんも十分速かったですよ」


「キュルルル!」


リューイが、俺の頭に着地する。


「お前も、よく頑張ったな」


「キュゥゥ♪」


でも——


「まだだ……奥に、もっといる……」


洞窟の奥から、足音が聞こえる。


ドシン、ドシン、ドシン……


重い足音。


そして——


「グオオオオオオッ!!!」


巨大な影が、暗闇から現れた。


それは——


体高3メートルはある、巨大なゴブリン。


いや、ゴブリンではない。


もっと上位の種——


頭上にウィンドウが表示される。


+++

【ゴブリンキング】

レベル:40

種族:魔人族(上位種)

スキル:

・怪力(ヘラクレスストレングス)

・再生(リジェネレーション)

・統率(コマンド)

+++


「レベル40……!? 俺より10も高い……!」


「ゴブリンキング……! まずいです、あれは非常に強力な魔物です……!」


アナスタシアの声が、緊張で震えている。


ゴブリンキングが、巨大な棍棒を振り上げる。


その棍棒は、丸太のように太く、重そうだ。


「グオオオオッ!!!」


棍棒を振り下ろす。


俺たちがいた場所に——


ドガァァァンッ!!!


地面が砕ける。


岩が飛び散る。


衝撃波が、洞窟全体を揺らす。


「うわっ!?」


咄嗟に横に飛んで回避。


アナスタシアも、反対方向に跳ぶ。


「やばい……直撃したら、即死だ……」


ゴブリンキングが、再び棍棒を振り上げる。


今度は——俺を狙っている。


「奏多さん!」


「分かってる!」


【疾風歩】!


風のように跳び、回避。


ドガァァァンッ!!!


再び、地面が砕ける。


「くそっ……避けるだけじゃ、埒が明かない……!」


反撃しないと——


「【流水剣】!」


ゴブリンキングの足を狙って、斬撃を放つ。


一閃。二閃。三閃。四閃。五閃。


ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!


「グオッ!?」


ゴブリンキングの足に、傷がつく。


でも——浅い。


皮膚が厚く、硬い。


そして——


傷が、みるみる塞がっていく。


「再生能力……!? くそっ……!」


「奏多さん、私も攻撃します!」


アナスタシアが、ゴブリンキングの背後に回り込む。


「【精霊剣舞】!」


優雅な連続斬撃が、ゴブリンキングの背中を切り裂く。


ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!


「グルルル……!」


ゴブリンキングが、怒りの咆哮を上げる。


でも——その傷も、すぐに塞がっていく。


「再生が速すぎる……!」


「どうすれば……」


二人とも、困惑する。


このままでは、ジリ貧だ。


(どうする……? 再生能力を持つ敵を倒すには……)


考える。


再生能力——傷が塞がる前に、致命傷を与える必要がある。


なら——


「一撃で、仕留めるしかない……!」


【武神術】の奥義——


【桜花乱舞】では、足りない。


もっと——もっと強力な技を——


その時——


頭の中に、新しい技が浮かび上がった。


中伝奥義——【雷神降臨(らいじんこうりん)】!


「これだ……!」


でも——使ったことがない。


MPも、大量に消費する。


失敗したら——


(いや、やるしかない!)


「アナスタシア、リューイ! 俺が合図したら、一斉に攻撃してくれ!」


「分かりました!」


「キュルルル!」


深呼吸。


全身のMPを、集中させる。


体中に、雷が走る。


バチバチバチッ!


「なっ……奏多さん、体が……!」


俺の体が、青白い雷光に包まれていく。


髪が逆立つ。


瞳が、光る。


「【雷神降臨】!!!」


瞬間——


俺の体が、雷光と化す。


***


視界が、変わる。


世界が——スローモーションに見える。


いや、違う。


俺が、超高速で動いているんだ。


ゴブリンキングの動きが、止まって見える。


(これが……【雷神降臨】の力……!)


全身が雷光化し、超高速連続攻撃を繰り出す技。


「いくぞ……!」


一歩。


いや、一瞬で——


ゴブリンキングの目の前に立っている。


「【金剛拳】!」


闘気と雷を込めた拳を、腹部に叩き込む。


ドガァァァッ!!!


「グオッ!?」


ゴブリンキングの巨体が、わずかに浮く。


次——


「【烈風脚】!」


回し蹴りを、側頭部に叩き込む。


ドゴォォォッ!!!


「グガッ!?」


さらに——


「【流水剣】!」


連続斬撃を、全身に叩き込む。


一閃。二閃。三閃。四閃。五閃。


十閃。十五閃。二十閃——!!!


ザシュザシュザシュザシュ!!!


「グオオオオオッ!?」


ゴブリンキングの体に、無数の傷が刻まれる。


でも——まだ足りない。


再生能力で、傷が塞がり始めている。


(なら——もっとだ!)


「【桜花乱舞】!!!」


さらに二十連撃を叩き込む。


ザシュザシュザシュザシュザシュ!!!


「グ……ガ……」


ゴブリンキングの体が、限界に達する。


(とどめだ……!)


「アナスタシア、リューイ、今だ!!!」


「はい!」


「キュルルル!」


アナスタシアが、【精霊剣舞】の最大奥義を放つ。


「【精霊王の一閃】!!!」


精霊の力を纏った、究極の一撃。


剣が、虹色の光を放つ。


ザンッ!!!


ゴブリンキングの首に、深々と剣が突き刺さる。


そして——


「【始祖龍魔法・龍王の咆哮】!!!」


リューイが、口から巨大な火球を吐き出す。


ゴォォォォッ!!!


直径2メートルはある火球が、ゴブリンキングに直撃する。


ドガァァァァンッ!!!


爆発。


炎が、洞窟全体を照らす。


そして——


「グ……ガ……ア……」


ゴブリンキングの巨体が、ゆっくりと倒れる。


ドサァァァッ!!!


地面が揺れる。


光の粒子となって——消えていった。


***


「はぁ……はぁ……はぁ……」


【雷神降臨】を解除する。


全身から、力が抜ける。


膝をつく。


「奏多さん!」


アナスタシアが、駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか!?」


「ああ……ちょっと、疲れただけだ……」


MPが、ほとんど空っぽだ。


【雷神降臨】は、想像以上にMPを消費する技だった。


でも——


「勝った……よな……?」


「はい。完璧な勝利です」


アナスタシアが、優しく微笑む。


「奏多さん、本当にすごかったです。あんな技……初めて見ました」


「俺も、初めて使ったんだ……」


「え、初めて……!?」


「ああ。ぶっつけ本番だった」


「それで、あれだけの威力を……」


アナスタシアが、驚いた表情で俺を見つめる。


「キュルルル!」


リューイが、俺の頭に着地する。


「お前も、よく頑張ったな。あの火球、すごかったぞ」


「キュゥゥ♪」


リューイが、嬉しそうに鳴く。


***


ピロリン♪ ピロリン♪


レベルアップの音が響く。


+++

【レベルアップ!】

レベル30 → レベル35


【スキル熟練度上昇】

・武神術 Lv10 → Lv15


【新スキル習得】

・雷神降臨(らいじんこうりん) Lv1

+++


「レベル35……ゴブリンキングを倒して、一気に5レベル上がった……」


アナスタシアも——


+++

【アナスタシア】

レベル25 → レベル30


【スキル熟練度上昇】

・精霊剣舞 Lv5 → Lv8


【新スキル習得】

・精霊王の一閃(せいれいおうのいっせん) Lv1

+++


「アナスタシアも、レベル上がったな」


「はい。奏多さんのおかげです」


「いや、お前も頑張ったよ」


ゴブリンキングが消えた場所には——


大きな魔石と、金貨が20枚落ちていた。


さらに——


【ゴブリンキングの王冠】×1

【ゴブリンキングの棍棒】×1

【ゴブリンキングの魔石(特大)】×1


「すごい……レアアイテムが……」


全部、アイテムボックスに収納する。


「これ、売ったらいくらになるんだろう……」


「ゴブリンキングの素材は、非常に高価です。おそらく、金貨50枚以上にはなるかと」


「マジで!?」


「はい。特に、王冠と魔石は非常に貴重です」


「やった……これで、当分は生活に困らないな……」


***


洞窟の奥を探索すると——


ゴブリンたちが集めていた財宝が見つかった。


金貨100枚、銀貨500枚、それに——


様々な武器、防具、宝石、魔石。


「これ……全部、盗品なんだろうな……」


「おそらく。ゴブリンは、人間の村を襲って財宝を集める習性があります」


「全部、持っていくか」


全てを、アイテムボックスに収納する。


「よし、これで巣窟の攻略完了だな」


「はい。ギルドに報告しましょう」


洞窟を出て、街へ戻る。


***


冒険者ギルドに到着。


受付に、依頼達成の報告をする。


「ゴブリンの巣窟、攻略完了しました」


「本当ですか!? 証拠は?」


「これです」


アイテムボックスから、【ゴブリンキングの王冠】を取り出す。


「これは……! ゴブリンキングを倒したんですか!?」


受付嬢が、目を見開く。


「はい」


「すごい……C級冒険者になって、初依頼でゴブリンキングを……」


周囲の冒険者たちも、ざわつく。


「おい、聞いたか?」


「新人が、ゴブリンキングを倒したって?」


「マジかよ……」


受付嬢が、報酬を渡してくれる。


「こちらが、依頼の報酬です。金貨5枚」


金貨を受け取る。


「それから——あなた方のランクが上がりました」


「え?」


「ゴブリンキングを倒したという実績から——あなた方は、B級冒険者に昇格します」


「B級……!?」


「はい。おめでとうございます」


新しい冒険者プレートを受け取る。


『皇奏多 B級冒険者』

『アナスタシア B級冒険者』


「すげぇ……もうB級か……」


「奏多さん、やりましたね!」


アナスタシアが、嬉しそうに微笑む。


「ああ。お前のおかげだ」


「いえ、私こそ——奏多さんのおかげです」


二人で、笑い合う。


「キュルルル!」


リューイも、嬉しそうに鳴いている。


***


ギルドを出て、宿屋を探す。


「今日は、ゆっくり休もう」


「はい。いい宿を知っています。こちらです」


アナスタシアに案内されて、宿屋【銀の月亭】に到着。


「いらっしゃい。部屋をお探しで?」


「はい。2部屋お願いします」


「かしこまりました。一泊、銀貨10枚になります」


銀貨を支払い、部屋の鍵を受け取る。


「2階の201号室と202号室です。ごゆっくり」


***


部屋に入ると——


シンプルだが、清潔な部屋だった。


ベッド、机、椅子、それに小さな窓。


「ふぅ……」


ベッドに倒れ込む。


柔らかい。


「今日は……色々あったな……」


アナスタシアと出会って。


街に来て。


冒険者ギルドに登録して。


初めての依頼を達成して——


「充実してるな……」


地球では、毎日が地獄だった。


でも、ここでは——


毎日が、冒険だ。


「キュゥゥ……」


リューイが、俺の胸の上で丸くなる。


「お前も、疲れたか」


「キュルル……」


リューイの頭を撫でる。


「今日も、よく頑張ったな」


「キュゥゥ♪」


窓の外を見る。


夕日が、街を染めている。


オレンジ色の光が、美しい。


(明日は……何が待ってるんだろう)


期待と、少しの不安。


でも——


(大丈夫。俺には、仲間がいる)


アナスタシア。


リューイ。


もう、一人じゃない。


「明日も……頑張ろう」


そう呟いて——


俺は、眠りについた。

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