第7話:初めての街・ルミナス王都
アナスタシアと共に、草原を歩く。
目指すは、遠くに見える煙の方向——街があるはずの場所だ。
「奏多さん、本当にありがとうございます。私なんかのために……」
アナスタシアが、申し訳なさそうに言う。
「気にするなって。それに、俺も一人じゃ心細かったんだ。仲間がいてくれて、嬉しいよ」
「仲間……」
アナスタシアの瞳が、潤む。
「そう……私も、仲間がいるんですね……」
「ああ。俺たちは、仲間だ」
「キュルルル!」
リューイも、アナスタシアの肩に乗って嬉しそうに鳴く。
「ふふ……この子も可愛いですね。名前は?」
「リューイだ。永久始祖神龍の雛なんだ」
「永久始祖神龍……!? まさか、あの伝説の……」
アナスタシアが、驚いて目を見開く。
「伝説なのか?」
「はい。龍の中でも最も高貴で、最も強力な種族と言われています。何千年も前に絶滅したと……」
「そうなのか……女神様が、俺に託してくれたんだ」
「女神様……? 奏多さんは、女神様に会ったんですか?」
「ああ。異世界に転移する途中で、女神様に呼び止められて——スキルを授けてもらった」
俺は、女神様との出会いを話す。
4つの究極スキルのこと。
リューイの卵を託されたこと。
アナスタシアは、真剣に聞いていた。
「そんなことが……女神様に選ばれたなんて……奏多さんは、本当に特別な方なんですね」
「いや、そんなことないよ。ただ——運が良かっただけだ」
「謙遜なさらないでください。女神様が選ばれたということは、あなたには大きな使命があるということです」
「使命か……」
よく分からない。
ただ、俺は——この世界で、新しい人生を生きたいだけだ。
***
1時間ほど歩いていると——
街が見えてきた。
「あれが……」
「ルミナス王都です。この大陸で最も大きく、最も繁栄している都市です」
アナスタシアが、説明してくれる。
ルミナス王都——
遠くからでも、その巨大さが分かる。
高い城壁に囲まれた街。城壁の高さは、20メートルはあるだろうか。白い石で作られていて、太陽の光を反射して輝いている。
城壁の向こうには、無数の建物が見える。石造りの家、木造の家、そして——中央には、巨大な城がそびえ立っている。
「すげぇ……本当に、ファンタジーの世界だ……」
興奮が抑えられない。
地球では、こんな景色は見られなかった。
「初めて見る街ですか?」
「ああ。異世界に来て、まだ3日くらいしか経ってないから」
「そうなんですね。では、色々とご案内しますね」
「ありがとう、アナスタシア」
「いえ、命の恩人ですから。当然のことです」
アナスタシアは、優しく微笑む。
その笑顔が——とても綺麗で、思わず見惚れてしまう。
(いかん、いかん……)
顔が熱くなるのを感じる。
「キュルル?」
リューイが、不思議そうに俺の顔を覗き込む。
「な、何でもないぞ」
***
街の正門に到着する。
門の前には、衛兵が2人立っていた。
「止まれ。入城許可証を見せろ」
衛兵の一人が、槍を構えて言う。
「入城許可証……?」
「持ってないのか? なら、入城税を払ってもらう。一人、銀貨5枚だ」
「銀貨5枚……」
アイテムボックスから、銀貨を取り出す。
俺とアナスタシアの分で——銀貨10枚。
「はい、これで」
「確かに。入れ」
衛兵が、門を開ける。
ギィィィ……
重厚な門が、ゆっくりと開いていく。
そして——
門の向こうに、街の光景が広がった。
「すげぇ……」
石畳の道。両脇に立ち並ぶ店。行き交う人々。
人間、エルフ、ドワーフ、獣人——様々な種族が、街を歩いている。
露店では、野菜や果物、肉、魚——色々な食材が売られている。
武器屋では、剣や槍、弓が並んでいる。
防具屋では、鎧や盾、兜が展示されている。
雑貨屋では、薬草や魔石、道具が売られている。
活気がある。
人々の声、笑い声、商売の掛け声——全てが混ざり合って、賑やかな音を作っている。
「すごいな……こんな街、見たことない……」
「ルミナス王都は、商業の中心地ですから。世界中から、商人や冒険者が集まってきます」
アナスタシアが、誇らしげに説明する。
「奏多さん、まずは冒険者ギルドに行きましょう。冒険者として登録しないと、正式な仕事を受けられませんから」
「冒険者ギルド……そうだな、そうしよう」
アナスタシアに案内されて、冒険者ギルドへ向かう。
***
冒険者ギルドは、街の中心部にあった。
3階建ての大きな建物。石造りで、頑丈そうだ。
入口には、「冒険者ギルド」と書かれた看板が掛かっている。
「ここです」
扉を開けて中に入ると——
広いホールが広がっていた。
奥には、受付カウンター。
カウンターの向こうには、若い女性が数人、仕事をしている。
左側の壁には、大きな掲示板。そこには、無数の依頼書が貼られている。
右側には、テーブルと椅子。冒険者たちが、酒を飲んだり、談笑したりしている。
「新人か?」
「ずいぶん若いな」
「エルフの娘、綺麗だな」
冒険者たちの視線が、俺たちに集まる。
少し、居心地が悪い。
でも——
(地球とは違う。ここでは、俺は強い。怯える必要はない)
胸を張って、受付カウンターへ向かう。
「すみません、冒険者登録をしたいんですが」
受付嬢が、にこやかに微笑む。
「はい、かしこまりました。初めての登録ですか?」
「はい」
「では、まずお名前を教えてください」
「皇奏多です」
「スメラギ・カナタ様ですね。年齢は?」
「17歳です」
「種族は?」
「人種です」
受付嬢が、羊皮紙に何かを書き込んでいく。
「それでは、スキルの確認をさせていただきます。こちらの魔石に手を当ててください」
カウンターの上に置かれた、大きな水晶のような魔石。
手を当てると——
魔石が、光り始めた。
そして——
魔石の中に、文字が浮かび上がる。
+++
皇奏多
レベル:30
スキル:
・究極鍛冶
・究極時空間操作
・神体
・武神術
+++
「……え?」
受付嬢が、目を見開く。
「きゅ、究極……? しかも、4つも……?」
周囲がざわつく。
「おい、今何て言った?」
「究極スキルを4つだと!?」
「そんな馬鹿な……」
冒険者たちが、一斉に俺を見る。
「あの……これって、まずいんですか?」
「いえ、まずいというか……その、非常に珍しいです。究極スキルを持っている方自体が稀なのに、4つも……」
受付嬢が、困惑した表情で言う。
「通常、人間は1つか2つのスキルを持って生まれます。3つ持っている人は、千人に一人。4つ持っている人は、一万人に一人と言われています」
「そうなんですか……」
「しかも、全てが『究極』や『神』という称号がついたスキル……これは、前代未聞です」
受付嬢は、何度も羊皮紙を確認している。
「では……ランクの判定をさせていただきます」
「ランク?」
「はい。冒険者には、F級からS級まで、7つのランクがあります。F級が最も低く、S級が最も高いランクです」
「なるほど……」
「レベルとスキルから判断して……」
受付嬢が、何かを計算している。
そして——
「あなたのランクは——C級です」
「C級……」
「はい。通常、新人冒険者はF級からスタートしますが、あなたのレベルとスキルを考慮すると、C級が妥当です」
「そうですか。ありがとうございます」
受付嬢が、金属製のプレートを渡してくる。
「こちらが、あなたの冒険者プレートです。常に身につけておいてください」
プレートには、俺の名前とランクが刻まれている。
『皇奏多 C級冒険者』
「これで、登録完了です。ようこそ、冒険者ギルドへ」
「ありがとうございます」
***
次は、アナスタシアの番だ。
「名前を教えてください」
「アナスタシアです」
「年齢は?」
「19歳です」
「種族は?」
「エルフ種です」
アナスタシアも、魔石に手を当てる。
魔石が光り——
+++
アナスタシア
レベル:25
スキル:
・精霊剣舞
・生命の祝福
+++
「レベル25、スキル2つ……あなたのランクは、C級です」
「ありがとうございます」
アナスタシアも、冒険者プレートを受け取る。
「よかったな、アナスタシア。同じランクだ」
「はい。これで、一緒に依頼を受けられますね」
「ああ」
受付嬢が、説明を続ける。
「依頼は、あちらの掲示板に貼られています。ランクに応じて、受けられる依頼が決まっています」
「分かりました」
「それでは、良い冒険者ライフを」
***
掲示板の前に立つ。
無数の依頼書が、貼られている。
『ゴブリン討伐依頼 報酬:銀貨50枚 ランク:D級以上』
『薬草採取依頼 報酬:銀貨30枚 ランク:F級以上』
『護衛依頼 報酬:金貨10枚 ランク:B級以上』
色々な依頼がある。
「どれを受ける?」
「そうですね……初めてなので、簡単なものから始めましょうか」
アナスタシアが、一枚の依頼書を指差す。
『ゴブリンの巣窟討伐依頼
場所:ルミナス王都近郊の森
報酬:金貨5枚
ランク:C級以上
詳細:ゴブリンの巣窟を発見。このままでは被害が拡大する恐れあり。討伐求む。』
「ゴブリンか……昨日も戦ったな」
「大丈夫ですか?」
「ああ。問題ない」
依頼書を受付に持っていく。
「この依頼を受けます」
「かしこまりました。では、こちらにサインを」
羊皮紙にサインをする。
「依頼、受理しました。ゴブリンの巣窟は、街の北の森にあります。気をつけて」
「ありがとうございます」
***
ギルドを出て、北の森へ向かう。
街を出る前に、装備を整えることにした。
「武器屋に寄ろう」
武器屋に入ると、店主が迎えてくれる。
「いらっしゃい。何をお探しで?」
「剣と、それから——」
アナスタシアを見る。
「お前、武器は?」
「私は……剣を使います」
「なら、剣を2本ください」
「はいよ。こっちにいいのがあるぜ」
店主が、いくつかの剣を見せてくれる。
どれも、そこそこの品質だ。
でも——
「やっぱり、自分で作った方がいいな」
【究極鍛冶】で作った剣の方が、遥かに高品質だ。
「すみません、やっぱり結構です」
「そうかい? まあ、またいつでも来てくれ」
店を出る。
「奏多さん、武器は?」
「自分で作るよ」
「作る……? 【究極鍛冶】で、ですか?」
「ああ」
路地裏に入り、【究極鍛冶】を発動。
アナスタシア用の剣をイメージする。
彼女に似合う、美しく、優雅で、でも鋭い剣を——
すると——
手の中に、一振りの剣が出現した。
細身の剣。刀身は銀色で、柄はエメラルドグリーン。エルフの文様が刻まれている。
「これを」
「わ、私に……?」
「ああ。お前のための剣だ」
アナスタシアは、剣を受け取る。
「……軽い。そして、美しい……」
剣を振ってみる。
シュッ、シュッ、シュッ
「完璧です……まるで、私の体の一部のように……」
アナスタシアの瞳が、輝いている。
「ありがとうございます、奏多さん。大切に使います」
「気に入ってくれて、よかった」
「はい!」
***
装備を整えて、街の北門へ向かう。
門を出て、森へ入る。
「ゴブリンの巣窟は、森の奥にあるらしい」
「気をつけましょう。ゴブリンは、単体では弱いですが、集団になると厄介です」
「ああ」
森の中を進んでいく。
木々の間を縫うように、奥へ奥へ。
30分ほど歩くと——
前方に、洞窟が見えた。
「あれが……巣窟か」
洞窟の入口は、直径5メートルほど。
中は暗く、奥が見えない。
「キュルル……」
リューイが、警戒している。
「行くぞ」
剣を抜き、洞窟に入る。
アナスタシアも、剣を構えて続く。
洞窟の中は——
暗く、湿っていて、悪臭がする。
「くさい……」
「ゴブリンの臭いです……近くにいます……」
そして——
「キィィィ!!!」
暗闇の中から、ゴブリンたちが飛び出してきた。
5匹、10匹、15匹——
「多い……!」
「奏多さん!」
「分かってる!」
初めての——本格的な共同戦闘が始まった。
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