第5話:森での修行とレベル上げ

朝日が、テントの隙間から差し込んでくる。


目を覚ますと、リューイが俺の胸の上で丸くなって眠っていた。


「キュゥゥ……」


寝息を立てている。可愛い。


そっと撫でると、リューイがゆっくりと目を開ける。


「キュルル……?」


「おはよう、リューイ」


「キュゥゥ♪」


リューイが、俺の顔を舐めてくる。


「わっ、くすぐったいって」


笑いながら、テントから這い出る。


外に出ると——清々しい朝の空気が、肺に満ちる。


森は、朝靄に包まれていた。白い霧が、木々の間をゆっくりと流れていく。鳥のさえずりが、静かな森に響いている。遠くで、小動物が駆け回る音が聞こえる。


「いい朝だな……」


地球では、こんな朝を迎えたことがなかった。


いつも、重い体を引きずってベッドから出る。頭痛と吐き気に耐えながら、学校に行く準備をする。


でも、今は——


体が軽い。頭もスッキリしている。


「健康って……こんなに素晴らしいんだな……」


改めて実感する。


近くの泉で顔を洗い、水を飲む。


冷たくて、美味しい水。


「ふぅ……生き返る」


簡単な朝食を取る。昨夜の残りの肉と、森で見つけた果物。


果物は、地球では見たことがない形をしている。リンゴとオレンジを足したような、赤とオレンジのグラデーションの果物。試しに食べてみたら、甘くてジューシーで、とても美味しかった。


「この世界の食べ物、美味しいな」


「キュルルル!」


リューイも、果物を美味しそうに食べている。


***


朝食を終えて、テントを片付ける。


全部、アイテムボックスに収納する。


「便利だな、本当に……」


そして——今日も、森での修行を続けることにした。


「もっと強くならないと。この世界で生きていくには、力が必要だ」


「キュルルル!」


リューイも、やる気満々だ。


森の奥へと進んでいく。


昨日よりも、さらに深い場所へ。


木々が密集し、日の光がほとんど届かない場所。


そこには——より強力な魔物がいるはずだ。


***


歩いて10分ほどすると——


前方に、何かの気配を感じた。


「……誰かいる?」


いや、「何か」だ。


殺気——いや、敵意。


明確な、敵意。


「リューイ、気をつけろ」


「キュルル……」


リューイも、警戒態勢に入る。


そして——


ガサガサガサッ!!!


藪の中から、複数の影が飛び出してきた。


それは——


体長1.5メートルほどの、緑色の肌をした人型の魔物。


醜悪な顔。鋭い牙。黄色い目。


手には、粗末な槍や斧を持っている。


「ゴブリン……!?」


頭上にウィンドウが表示される。


+++

【ゴブリン】×5

レベル:8~10

種族:魔人族

スキル:

・集団戦術(パックタクティクス)

・武器使用(ウェポンマスタリー)

+++


5匹——しかも、集団で襲ってくる。


「キィィィ!!!」


ゴブリンたちが、一斉に襲いかかってくる。


前方から3匹、左右から1匹ずつ。


完全に、包囲されている。


「くっ……!」


【疾風歩】!


風のように跳び、包囲網を突破する。


後方に回り込み、距離を取る。


「5匹か……一匹ずつなら問題ないけど、集団だと厄介だな……」


ゴブリンたちは、すぐに隊列を立て直す。


さすが、【集団戦術】のスキル持ち。


連携が取れている。


前衛3匹が盾となり、後衛2匹が槍を構える。


「キィィィ!」


前衛のゴブリンが、斧を振り上げて突進してくる。


「【流水剣】!」


一閃。


二閃。


三閃。


四閃。


五閃。


連続斬撃が、前衛のゴブリンを切り裂く。


「ギャアアアッ!」


一匹が倒れる。


でも——


「キィィィ!!!」


後衛の槍持ちゴブリンが、槍を投げてきた。


しかも、2本同時に。


「やばっ!」


【鉄壁守】!


バリアを展開する。


ガキィン! ガキィン!


槍がバリアに弾かれる。


でも——


その隙に、残りの前衛ゴブリン2匹が接近してきた。


左右から、同時攻撃。


「ちっ……!」


【烈風脚】!


回し蹴りを放つ。


右のゴブリンに、蹴りが直撃。


ドゴォッ!


「ギャッ!?」


ゴブリンが吹き飛ぶ。


でも——


左のゴブリンの斧が、俺の腕を掠める。


「っ痛!」


浅い傷だが、血が滲む。


「このっ……!」


【金剛拳】!


闘気を込めた拳を、左のゴブリンの顔面に叩き込む。


ドガァッ!


「ギャアアアッ!」


ゴブリンの体が、5メートルほど吹き飛ぶ。


地面に叩きつけられ、動かなくなる。


残り——3匹。


後衛の槍持ち2匹と、さっき吹き飛ばした1匹。


「キィィィ!!!」


後衛の2匹が、また槍を投げてくる。


「もう、その手は通じない!」


【究極時空間操作】!


「時間、減速(スロウ)!」


槍の時間を遅くする。


スローモーションになった槍を、簡単に避ける。


そして——


【疾風歩】で一気に距離を詰める。


「はああああっ!」


【流水剣】!


連続斬撃が、2匹のゴブリンを切り裂く。


「ギャアアアッ!」「ギィィィッ!」


2匹が倒れる。


残り——1匹。


さっき吹き飛ばしたゴブリンが、よろよろと立ち上がる。


「キ、キィィ……」


怯えている。


仲間が全滅したことで、戦意を失っている。


「……逃がすか」


【気功波】!


手のひらから、闘気の波動を放つ。


シュゴォォォッ!


青い光の波が、ゴブリンに直撃する。


「ギャアアアアッ!!!」


ゴブリンが吹き飛び——光の粒子となって消えた。


***


「はぁ……はぁ……」


剣を下ろし、深呼吸する。


「集団戦は……疲れるな……」


でも——


ピロリン♪


レベルアップの音。


+++

【レベルアップ!】

レベル15 → レベル18


【スキル熟練度上昇】

・武神術 Lv8 → Lv10

・究極時空間操作 Lv2 → Lv3

+++


「レベル18か……順調だな」


ゴブリンたちが落としたアイテムを回収する。


魔石×5、銀貨×25、それに——


【ゴブリンの槍】×2

【ゴブリンの斧】×3


「武器も手に入った。これ、売れるかな?」


全部、アイテムボックスに収納する。


「キュルルル!」


リューイが、俺の肩に飛び乗ってくる。


「ありがとうな、リューイ。お前も戦ってくれて助かった」


戦闘中、リューイは【始祖龍魔法】でゴブリンたちを牽制してくれていた。


小さな火球や氷の矢を放って、ゴブリンたちの動きを乱してくれた。


「キュゥゥ♪」


リューイも、レベルが上がっている。


+++

【リューイ】

レベル8 → レベル12

+++


「お前も強くなってるな」


「キュルルル!」


***


その後も、森の中で修行を続けた。


出会った魔物は——


【オーガ】。体高2.5メートルの巨人型魔物。レベル20。棍棒を振り回して攻撃してくる。でも、【心眼】で動きを読んで、【飛燕斬】で急所を狙って撃破。


【ダイアウルフ】。ブラックウルフの上位種。体長3メートル。レベル22。群れで襲ってきたが、【桜花乱舞】で一掃。


【ポイズンコブラ】。毒を持つ巨大な蛇。体長5メートル。レベル18。毒霧を吐いてきたが、【空間切断】で真っ二つにした。


【レッドボア】。赤い毛を持つ巨大な猪。体長2メートル。レベル19。突進力がすごかったが、【金剛拳】で正面から粉砕。


戦闘を重ねるごとに、俺の技術は磨かれていく。


【武神術】の8つの基本技——


流水剣、烈風脚、金剛拳、飛燕斬、鉄壁守、疾風歩、気功波、心眼。


全ての技を、実戦で試し、習得していく。


最初は、技を発動するのに意識が必要だった。


でも、今は——


無意識に、体が動く。


状況に応じて、最適な技が自然と出る。


これが——【武神術】の真髄か。


***


夕方、再び泉のほとりで休憩する。


ステータスを確認すると——


+++

【皇 奏多】

レベル:18 → レベル25


HP: 1000 → 2500

MP: 1000 → 2500


全ステータス:100 → 250


【スキル熟練度】

・武神術 Lv10(基本技マスター)

・究極鍛冶 Lv3 → Lv5

・究極時空間操作 Lv3 → Lv5

・神体 Lv1 → Lv3


【習得技】

基本技:全8種マスター

初伝奥義:桜花乱舞 Lv3

+++


「レベル25……ここまで来たか……」


【武神術】の基本技も、全てマスターした。


「次は……中伝奥義を目指すか」


でも、それには——もっと強い魔物と戦う必要がある。


アイテムボックスの中身も、かなり増えた。


魔石:50個

金貨:50枚

銀貨:200枚

各種魔物の素材:多数


「これだけあれば、街で当分は困らないだろう」


「キュルルル♪」


リューイも、大きく成長している。


+++

【リューイ】

レベル:12 → レベル20


体長:30cm → 50cm

+++


体も、少し大きくなった。


最初は30センチだったが、今は50センチ。


でも、まだまだ可愛い。


「キュゥゥ♪」


リューイが、俺の膝の上に乗ってくる。


「重くなったな、お前」


「キュルル?」


「いや、嫌じゃないぞ。むしろ、嬉しい」


リューイの頭を撫でる。


夕日が、森を染めていく。


オレンジ色の光が、木々の間から差し込んでくる。


「今日も、よく頑張ったな」


「キュゥゥ♪」


***


夜、再び焚き火を囲む。


今夜の夕食は——【レッドボア】の肉。


分厚い肉を、焚き火で焼く。


ジュゥゥゥゥ……


脂が滴り、火が跳ねる。


いい匂いが漂ってくる。


「うまそう……」


【究極鍛冶】で作った調味料をかける。


塩、胡椒、そして——この世界で見つけた、香辛料のようなハーブ。


「いただきます」


肉にかぶりつく。


「うまい……!」


ジューシーで、柔らかくて、香ばしい。


地球で食べたどんな肉よりも、美味しい。


「キュルルル!」


リューイも、自分の分を夢中で食べている。


火の光に照らされて、リューイの白銀の鱗がキラキラと輝いている。


「今日は、色々な魔物と戦ったな」


「キュゥゥ♪」


「明日は……そろそろ街を探そうか。このままずっと森にいるわけにもいかないし」


「キュルルル!」


リューイも、賛成のようだ。


「人と会うのは……ちょっと不安だけど……」


地球では、人と関わるのが怖かった。


イジメられるんじゃないか。


馬鹿にされるんじゃないか。


そんな恐怖が、いつもあった。


でも——


(今の俺は、違う)


力がある。


自信がある。


もう、怯える必要はない。


「よし……明日は、街を探そう」


決意を新たにする。


空を見上げる。


満天の星空。


無数の星が、輝いている。


地球では見たことがない、美しい星空。


「この世界で……俺は、どんな人生を歩むんだろう……」


期待と、少しの不安。


でも——


(きっと、大丈夫)


リューイがいる。


女神様が授けてくれた力がある。


そして——


俺自身が、変わった。


「明日から……新しい冒険が始まる」


「キュルルル!」


リューイが、力強く鳴く。


まるで、「一緒に頑張ろう!」と言っているかのように。


「ああ。一緒に、頑張ろうな」


火の音。


虫の鳴き声。


風の音。


それだけが、静かな夜に響いている。


俺は——


生まれて初めて、未来に希望を持っていた。


***


翌朝、早起きして出発の準備をする。


テントを片付け、全ての荷物をアイテムボックスに収納する。


「よし、準備完了」


「キュルルル!」


リューイを肩に乗せて、森を歩き始める。


今度は、森の出口を目指す。


昨日までは森の奥へ進んでいたが、今日は逆方向へ。


木々の密度が、徐々に薄くなっていく。


日の光が、より多く地面に届くようになる。


そして——


1時間ほど歩いたところで——


森の出口が見えた。


「お、見えたぞ!」


「キュルルル!」


森を抜けると、そこには——


広大な草原が広がっていた。


見渡す限り、緑の草原。


遠くに、山々が見える。


そして——


さらに遠くに、煙が立ち上っているのが見える。


「あれは……街か!?」


「キュゥゥ!」


期待に胸が高鳴る。


「よし、あの煙の方向へ行こう!」


草原を駆け抜ける。


風が、心地よく吹き抜ける。


太陽が、まぶしく輝いている。


(ついに……人と会える……)


不安もあるが、期待の方が大きい。


この世界のことを、もっと知りたい。


冒険者ギルドに登録して、正式に冒険者になりたい。


そして——


(この世界で、生きていくんだ)


新しい人生を、始めるんだ。


俺とリューイは、街を目指して走り続けた——。

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