第3話

森の中へ向かう時も、3人が僕を囲むようにして移動する。


ナニコレ。


「あ、あのさミリア」


「……っ、なに?」


僕がミリアと呼んだ黒髪の少女が、ビクッとしながら僕を見る。


名前を呼ぶのは数回だけのはずなのに、ミリアはとても嬉しそうな、でも悲しそうな……そんな目をしていた。


「昨日僕が居ないとこで、練習とかしたの?」


「イメトレ」


「い、いめとれ???」


思わぬ返事に、驚きながら聞き返した。


「昨日のパーティの動きから、どう動くかを夜通しで考えてた」


「そんなに!?」


イメトレって、夜通しでできるものなの?


「ノアの命……いや、パーティの安全が懸かってる……」


ミリアの瞳は、冗談を言っているようには見えないし、むしろ昨日の今日でそこまで「僕の命」に固執する彼女の熱量に、僕は少しだけ気圧された。


「あ、あとさ、セリス」


「なっ、なんでしょう?」


続いて、隣の銀髪の少女、セリスを見る。

セリスも、僕が名前を呼んだ瞬間、ビクッと肩を震わせた。

そんな気持ち悪い言い方してたかな?


「なんかみんなの雰囲気が昨日と大分違いすぎる気がするんだけど……」


「気の所為ですよ」


昨日パーティを組むために、声をかけた時のような優しい笑みを浮かべたセリスに、僕は何も言えなくなる。


気の所為なのかな?

でも、やっぱりというか、皆の目に光がないようにも思える。


こうしているうちに、僕らはゴブリンの集落周辺に着いた。


おかしい。ゴブリンの集落は森の奥の方のはずなのに、その間魔物に遭遇する頻度が極端に少なかった。

僕が魔物に気づいたとしても、僕の前にいる金髪の少女、リーズや、ミリアがすぐに片付けてしまう。


ーーーーーーーーーーーー


本来なら、数時間はかかるはずのゴブリン討伐なんだけど、結果はわずか30分だった。


「……っ、危ない!」


茂みから飛び出したゴブリンの不意打ち。僕が声を上げるより早く、リーズがまるで見えていたかのように背後へ回し蹴りを叩き込む。


倒れたゴブリンの追撃に、ミリアが、視線も向けずに指先から指弾を放つ。


さらに逃げようとした個体を、セリスが光の鎖で縛り上げ、無力化した。


この間声による合図は一切ない。


「右」「カバー」「次は私」


そんな冒険者の基本であるはずの声掛けすら、彼女たちには不要だった。


「…………」


僕は、抜いたばかりの剣を鞘に戻すことも忘れ、その光景を呆然と眺めていた。


昨日、初めて会ったはずの三人が。


昨日、初めて背中を預けたはずの仲間たちが。


まるで、何千、何万回とその連携を繰り返してきたかのように、完璧に噛み合っている。


「……終わったよ」


リーズが服についた土を払いながら僕のもとへ歩いてくる。


その顔には、勝利の喜びも、戦いの高揚感もない。


ただ、「大切な荷物を無事に運び終えた」後のような、不気味なほどの安堵感だけがあった。

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