防衛開始/配信開始/4
「っえー……しくお願い……しゃす」
〉 誰?
〉 誰?
〉 誰?
〉 声ちっさ
〉 誰?
〉 音 量 注 意
〉 やっぱり男だったあああああああああ
「ご視聴……あり……ざっす」
「ハル、声が小さいらしいぞ。マイク感度とやらを上げるがよい」
〉 !?
〉 !?
〉 !?
〉 美少女の声がしたぞ
〉 上げるべきは声量だろ
〉 ほんとに女だったあああああ!?!?!?
〉 美少女出さんかいこらァ
〉 今日も〈化物〉配信すんの?
〉 最近のAIは引きこもり陰キャ男子も出力できるのか、技術力パないな
やいのやいの。
コメントの流れが速すぎて追いきれない。そもそもコメント欄が1画面分以上動くのが初めての体験だ。喉がこくりと鳴る。ゆっくりと深呼吸して、いうべき言葉を準備する。
〉 呼吸音ASMR?
〉 たすかる
〉 助かるなよ
〉 全裸待機
〉 しっ静かに 配信者くんが何か言ってる
「っあの……配信者の……ハルです。ご視聴……ありがとう……います」
〉 ご丁寧かよ
〉 こちらこそありがとうございます
〉 どういたしまして
〉 〈化物〉はよ
〉 昨夜のあれ、黒石回収した?
〉 ゴスロリ美少女を見に来たんですがこちらで合ってますか?
「このチャンネルでは……あの……〈化物〉から……守ったりとか……」
「ええい、ハル。それでは伝わらぬ。わらわを映せ」
「…………」
もどかしそうなベアトリーチェへカメラを向ける。
スカートをつまんで礼をするベアトリーチェが画面に映った後、一瞬だけコメントが停止して、先ほどの三十倍くらいの速さで流れた。
〉 ガチの美少女だこれ
〉 ゴスロリ美少女実在したのか……
〉 いや背景歪んでない? フェイク乙
〉 涙拭けよ
〉 アクセサリーが……独特ですね!
〉 はあ、はあ……何色?
卑猥な冗談を書き込んだIDを即座にBANする。
「えー……卑猥な内容……セクハラ、嫌がらせなどは……BANします」
〉 応
〉 はい
〉 はい
〉 当然だよなぁ!?
〉 残念でもないし当然
〉 安心してください、はいてますよ
〉 ぼくら紳士ですからお義父さん
誰がお義父さんか。
ベアトリーチェはそのやりとりを興味深そうに見守った後、澄ました表情で告げた。なんというか、キメ顔だ。
「わらわはベアトリーチェ。このアパートを守護する者である。わらわの活躍を目に焼き付けるがよい」
配信前に取り決めたことは二つ。
罠である、とか、能力に関することは言わない。
主人、とか、上下関係を示唆することは言わない。
今のところ、しっかり理解して守ってくれているようだ。
「その……不定期に、防衛の様子を配信、します。良かったら……チャンネル登録とか。お願いします」
そうまでして配信する理由は、まずベアトリーチェが喜ぶから。今も流れるコメントに目を輝かせており、そわそわと楽しそうにしている。おもちゃを前にした猫のようだ。
そして、もうひとつ。
「諸事情で……ここを離れられない、ので。〈化物〉のこと……色々教えてもらえたら、って思って、ます」
一日、情報収集してわかったことがある。
〈化物〉について何もわからない、ということだ。
噂やフェイク画像はいくらでも出てくるが、正確な情報はほとんどない。主に対応しているのは専守省の防衛隊だが、当然、詳細を公開しているはずがなかった。
〈化物〉配信で有名になれば、有益な情報も集まるかもしれないと思ったのだ。
〉 危険に対して軽すぎて草
〉 はよ逃げ
〉 実際〈化物〉ってなんなん?
〉 美少女の後ろに隠れてないでお前も戦え男だろ
〉 銃でもないと無理でしょ
〉 昨日の牙みたいなのなんなんですかベアトリーチェさん!
〉 防衛隊の損耗とか見てると結構ヤバいしな
〉 〉損耗 エビデンスは???
〉 なんか黒石っての拾っとくと良いって〈化物〉配信の人が言ってたぞ
錯綜するコメント欄に目を白黒させる。あとでまとめて読もう。気になるコメントがあったので机の横に置いてあったそれを見せる。
「黒石って、これ……ですかね」
仮眠を取った後、駐車場と庭を片付けた際に拾ったものだ。車や自転車といった部品の中に落ちていた、きれいな黒い宝石のような石。
〉 きれいだな
〉 コーヒーゼリーみたい
〉 食レポ期待
〉 そう、それめっちゃ拾ってた
〉 なんの役に立つん?
〉 フリマで売れ
うーん、役に立たない。いやいや。
とりあえず重要そうなのでちゃんと保管しておくことにする。空いたクッキーの缶に仕舞った、その時だった。
監視カメラの画面に、黒い影。
「ベアトリーチェ!」
「うむ。カメラを切り替えよ、ハル!」
掃き出し窓を開き、ベアトリーチェが颯爽と庭へ飛び出す。ドレスが翻り、金属音が鋭く鳴った。慌てて配信画面を監視カメラへ切り替える。
ぎざぎざの乱杭歯を露わに、少女は笑う。
「我が
――全部言っていったな……。
画面では、『お巡りさんこっちです』のコメントが洪水のように流れていった。
あの時助けていただいた罠です。~引きこもり陰キャが〈化物〉氾濫区域に取り残されたのでトラップ娘と一緒にアパート防衛配信したらバズり散らかしました。ダンジョンと化したホームセンターにも行けたら行きます~ 橙山 カカオ @chocola1828
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。あの時助けていただいた罠です。~引きこもり陰キャが〈化物〉氾濫区域に取り残されたのでトラップ娘と一緒にアパート防衛配信したらバズり散らかしました。ダンジョンと化したホームセンターにも行けたら行きます~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます