【短編】あなたの願い叶えます~町はずれの魔法具店~
@task7
不安な王女
街のはずれに、一軒の魔法道具を扱う店がある。
客が入っているのを見た者はいないし、ほとんどの住人は、
「そんな店、あったっけ?」
と首をかしげる。
本当に困った者だけが、
気がつくと誘われるようにドアを開けている。
そんな店だ。
ある日、その扉を開けたのは――王女だった。
「……もし、店主殿」
フードを深く被ってはいるが、隠しきれない気品がある。
店主はカウンター越しに、にこやかに頭を下げた。
「いらっしゃいませ。お困りごとですね?」
「はい。私は……近く、勇者と共に魔王討伐へ向かいます。
ですが……もし、敗れてしまったらと思うと、不安で」
店主は少し考え、棚の奥から一つの防具を取り出した。
「でしたら、こちらを。
あらゆる“攻撃”を防ぐ防具です」
「魔王の攻撃も?」
「もちろん。」
「毒とかも?」
「はぁいい」
王女は目を輝かせた。
「代償は?」
「ありません。正しく使っていただければ」
王女は礼を述べ、防具を受け取った。
結果は、誰もが知る通りだ。
王女は魔王の攻撃をすべて退け、
勇者は無事に魔王を討ち、
二人は国へ凱旋し、盛大な結婚式を挙げた。
国は平和になった。
……しばらくの間は。
数年後。
王女は子を授からなかった。
医師も聖職者も首をひねる。
「原因が、見当たりません」
国に後継者は生まれず、
やがて権力争いが起こり、
国は内側から崩れていった。
滅びる直前、王女はふと思い出す。
(あの防具は……)
毎晩、勇者の“攻撃”を、
完璧に防いでいたことを。
その頃、
「防具は、正しく機能していましたね」
町はずれの魔法具店では。
店主は帳簿に一行、静かに書き足した。
――不安は解消された。
店の外では、今日も誰かが道に迷っている。
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