第二十三話 やよい、御膳所で“命を救う料理”を作る
🏯『大阪城台所所・やよい記』
第二十三話 やよい、御膳所で“命を救う料理”を作る——医食同源の芽生え
——これは、わたくし曲直瀬やよいが、
“料理”が“医術”と同じ重さを持つと知った日の記である。
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◆ 産の手伝いの翌朝
やよいは御膳所に戻ると、
宗右衛門が火床の前で腕を組んでいた。
「やよい。
今日は“料理”の日や」
やよいは驚いた。
「医術の手伝いは……?」
宗右衛門は火を見つめながら言った。
「医術も大事や。
せやけどな——
“食”は毎日いる。
命をつなぐ根っこや」
やよいの胸が熱くなった。
(料理も……
医術と同じくらい大事なんや……)
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◆ 病人のための“回復食”を作る
宗右衛門は、
やよいに一つの籠を渡した。
中には
・白米
・大根
・干し椎茸
・少しの鶏肉
・生姜
が入っていた。
「やよい。
これで“回復食”を作れ」
「回復食……?」
「産のあと、
病のあと、
戦のあと……
人は“食”で立ち直る」
宗右衛門は続けた。
「医者が治すんやない。
食が治すんや」
やよいは息を呑んだ。
(料理が……
命を治す……?)
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◆ やよい、素材の“声”を聞く
やよいは大根を手に取った。
(この大根……
水分が多い……
体を冷やす……
でも煮れば……
優しい甘さになる)
干し椎茸を嗅ぐ。
(深い匂い……
体を温める……
気を補う……)
鶏肉を触る。
(脂が少ない……
弱った体にちょうどええ)
宗右衛門が言った。
「やよい。
おまえ……
素材の“声”が聞こえてるな」
やよいは驚いた。
「声……?」
「せや。
素材はな、
“どう扱ってほしいか”
教えてくれるんや」
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◆ やよい、初めて“医食同源”の料理を作る
やよいは火床の前に座り、
大根と椎茸を丁寧に煮た。
火は弱く、
ゆっくり、
ゆっくり。
(急いだらあかん……
体が弱ってる人のための料理や……)
鶏肉は最後に入れ、
生姜をほんの少し。
味見をすると——
(……優しい……
体に染みる……
これなら……
病の人でも飲める)
宗右衛門が頷いた。
「やよい。
これは“医の料理”や」
やよいの胸が震えた。
(料理が……
医術になる……)
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◆ 病の部屋へ
やよいは椀を持って病の部屋へ向かった。
昨日産を終えた女が、
弱々しく横になっていた。
やよいは椀を差し出した。
「……どうぞ」
女は一口飲んだ。
そして——
涙をこぼした。
「……あったかい……
体に……
染みる……」
やよいの胸が熱くなった。
(料理で……
命を支えられる……)
玄朔が言った。
「やよい。
これが“医食同源”や」
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◆ 老いたやよいの一行
——あの日、
わたくしは初めて“医の料理”を作った。
料理は腹を満たすだけやない。
体を治し、
心を支え、
命をつなぐ。
医術と料理は、
どちらも“命を扱う道”。
わたくしはその日、
二つの道が一本に繋がるのを感じたのである。
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