第2話 Is it Alive? ~生きているか~

 意識が、徐々に戻ってきた。

 一気にではない。

 白い光が先に滲み、遅れて音が輪郭を持ち始める。


 眩しさに、瞼の裏が焼けた。

 目を開けようとしても、うまくいかない。

 頭の奥が重く、首から下に、力が入らない状態が続いている。


 口の中は、まだ乾いていた。

 砂の味は薄れているが、喉の痛みは消えない。

 息を吸うたび、胸の奥で小さく引っかかる。


 何かが肩に触れた。


 強くはないが、ためらいもない力で掴まれる。

 身体が少し動き、砂が擦れる音がした。

 雑だが、投げ出されるような扱いではない。


 体重を確かめるように、引き上げられる。

 抱えられることはなく、持ち上げて、すぐに戻される。

 確認だけが済むと、手は離れた。


 少し遅れて、金属の音がした。

 蓋が外れる音。

 中で液体が揺れる、低い音。


 匂いが届く。

 冷えた金属と、水の匂い。


 何かが、唇に触れた。

 容器の縁が軽く当たり、傾けられる。

 流し込まれることはない。

 ほんの少し、待つように留められている。


 低い声が、近くで響いた。


「……飲めるか」


 意味を理解する前に、喉が反応した。

 わずかに顎が動き、舌が水を受け取る。

 量は少ない。

 それでも、喉を通る感覚ははっきりしていた。


 一度だけ、咳が出た。

 すぐに収まり、息は続く。


 容器が離れる。

 音がして、蓋が閉められた。


 容器に視線を送ると、顔に影が落ちる。

 瞼を指で押し上げられ、光が差し込んだ。

 眩しさに反射が走るが、視線は定まらない。


 しばらく、何も起きない。

 呼吸だけが、一定の間隔で続く。


「生きてるな」


 声は短く、淡々としていた。

 確認以上の意味は含まれていない。


 再び、身体に手がかかる。

 今度は地面から引き離され、何かに預けられる。

 硬い感触。

 金属か、車体の一部のようだった。


 揺れが伝わる。

 近くで扉が開き、閉まる音がした。


 咳が、もう一度だけ漏れた。

 その音に、動作が一瞬止まる。


 それ以上は、何も起きない。


 周りの音が近くなり、遠ざかり、また戻る。

 振動が身体に伝わり、視界が滲む。


 意識は再び失われた。



(つづく)

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