第48話

 朝の光が魔王城の大広間をやさしく照らす。


 骨たちはいつものようにカタカタと動き、食卓の準備や掃除を手際よくこなしていた。


「お嬢様、朝食の準備が整いました」


「ありがとう!」

 リリアは明るい声で返事をしながら、庭で光の玉を飛ばして遊ぶシオンに目を向ける。


「シオン、ほら、こっちの方が光がきれいだよ!」


「……わ、わかった」

 庭の芝生を踏みしめながら、シオンは無邪気に笑うリリアを見つめ、胸がぎゅっと締め付けられた。


 その様子を少し離れたところから、魔王が静かに見つめる。

 黒髪の三つ編みが揺れ、赤黒い瞳が光る。


「……この子に近づくな」

 しかしその奥では、娘の笑顔を守りたい溺愛がふつふつと湧き上がる。


 庭から広間に戻ると、食事の香りが漂い、骨たちがリリアの席に料理を並べる。


「お嬢様、今日のメニューは魔力回復に最適なスープです」

「わあ、ありがとう!」


 リリアは嬉しそうにスープを手に取り、シオンにも差し出す。

「シオンも飲む?」


「え、あ、ああ……」

 シオンが受け取ると、リリアはにっこり笑いながら箸を取り、スープを口に運ぶ。


「ふふ、今日も元気だね!」

 その瞬間、魔王の眉がぴくりと動く。


 魔王の警戒心が、城全体の空気に静かに張り付く。


 朝食を終えた後、リリアはシオンを引っ張って庭へ。

「さあ、今日も魔法の練習だよ!」


「……うん」

 庭での練習中、シオンはふと勇気を振り絞り、リリアの手を軽く握る。


「……リリア、さっきの……その……」

 リリアは首をかしげる。


「なに?」

「……手、繋いでもいいか……?」


 リリアの笑顔が一瞬、光の玉のように輝いた。

「うん! いいよ!」


 その一言で、シオンの胸はぎゅっと熱くなる。


 魔王は庭の端で、影から二人を見守る。

 眉をしかめつつ、心の中で呟く。

(――ふん、この……油断ならぬ…)


 骨たちはカタカタと笑いながら、その尊い瞬間を見守る。


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