第47話

 庭の午前。


 リリアは小さな光の玉を、今度はシオンに向かって軽やかに飛ばす。

「ほら、キャッチしてみて!」


「え、あ、うん……!」

 シオンは手を伸ばすが、玉はちょっとずれて、リリアの腕に当たりそうになる。


「わっ!」

「ふふ、惜しい!」


 リリアは無邪気に笑い、さらに玉を跳ねさせた。


 その動きが、まるで「捕まえられるかな?」とからかっているかのようで、シオンの胸は高鳴る。


 シオンは思わず赤面し、手元がぎこちなくなる。

 その様子を見ていた魔王は、遠くから威圧的な影を落とす。


「――リリア、何をしている」

 リリアは振り向き、にこりと笑う。


「お父様、シオンと遊んでるの!」

 魔王はその答えに眉をひそめ、低い声で呟いた。


「……この……こいつ……絶対に近づけぬ……」

 魔王の目には、シオンを睨むと同時に、娘を守る強い決意が宿っていた。


 リリアはさらに天然に、シオンの背後にぴょこんと飛びついた。

「ねえ、見て見て!」


「わっ、うわっ!」(近い近い近い近い)

 シオンの心臓はぎゅっと締め付けられ、視線を逸らせずにはいられなかった。


 骨たちは遠くでカタカタと笑いながら見守る。

「お嬢様……今日も元気ですね」

「うん、シオンと一緒だから!」

 リリアの無邪気な笑顔に、シオンの胸はますますドキドキする。


 そして魔王は、静かに近づき、シオンを睨みつつ低く言った。

「――俺の娘に近づくとは、いい度胸だ」


 シオンは思わず硬直する。

(……や、やばい……この人、完全に怒ってる……しかもめちゃくちゃ怖い……!)


 リリアはそんな魔王の様子を見て、くすくす笑った。

「お父様、そんなに怒らなくてもいいよ! シオン、怖がらないで!」


 魔王はため息交じりにやれやれ顔を浮かべ、でも心の奥ではシオンに対する警戒心が全開だった。


 庭の空気は穏やかだが、三者三様の心が混ざり合い、緊張感と尊さでいっぱいだった。

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