第46話

 朝の光が魔王城の庭に差し込む。


 リリアは薄茶色の髪を揺らしながら、今日も元気に飛び跳ねていた。


「シオン! 見てて!」

 小さな光の玉を作り、ふわりと空中に浮かべる。


 シオンは少し距離を取り、警戒しながらも目を離せない。

「……すごいな……」


 心の奥で、胸がぎゅっと締め付けられるような感覚。


 リリアはその表情に気づかず、ふわりと笑った。

「ふふ、手伝ってくれる?」


「……ああ」

 ぎこちなく手を伸ばすシオン。


 その手がリリアの小さな手に触れた瞬間、まるで時間が止まったように感じた。

「……ちょっと、近いよ?」


 リリアの声は、天然のまま。


 でもその笑顔に、シオンの心臓は暴れた。

「……す、すまない」


 思わず視線を逸らすシオンに、リリアはくすくすと笑う。


「ふふ、いいんだよ。手が触れただけで、そんなに恥ずかしがらなくても!」

 その笑い声は、谷の風に乗ってシオンの胸を直撃する。


「……こんな……」

 警戒心を解かずにいたはずなのに、心がどんどん溶けていくのを感じた。


 骨たちは遠くからカタカタと見守る。

「お嬢様……ずいぶん仲良くなりましたね」

「うん、シオン、面白いんだよ!」

 リリアの無邪気さに、シオンの緊張は和らぐどころか、さらに胸の奥がざわつく。


「……面白い……か」

 少し照れくさそうに答えるシオン。


 リリアはその反応を見て、さらにニコニコと笑った。

「ふふ、じゃあ次は一緒に魔法を使って遊ぼうよ!」

「……え、えっと」


 思わず動揺するシオンに、リリアは軽く手を取って引っ張る。

「ほら、怖くないよ! 失敗しても大丈夫!」


 シオンは一瞬迷ったが、リリアの純粋な笑顔に導かれるように、手を握り返す。


 二人の距離は、ほんの少しだけ近づいた。

 庭の空気は優しく、光は二人を包み込む。


 無邪気な少女と、警戒心を抱えた少年――

 互いに心を触れ合わせる、ほんの一瞬の尊い時間。


 骨たちは少し離れたところで、カタカタと笑いながら見守る。

「お嬢様……今日はまた、一段と光っていますね」


「うん、シオンと一緒だからかな!」

 その言葉に、シオンは心の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。


「……なんだ、この気持ちは……」

 初めて触れる、甘く、尊い、胸を締め付けられる感情――


 それが、二人の日常の始まりだった。

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